「クマたちの丘」の景観づくり──その1「ニホンツキノワグマ展示場」

2026年10月30日

上野動物園のニホンツキノワグマ展示場では、日本の里山をイメージした景観づくりをおこなっています。展示場の中には、ススキやオミナエシなどの秋の七草をはじめ、サルナシやベリー類など果実を実らせる植物も植えています。ツキノワグマがすむ環境を展示場に再現することで、季節によって変化する植物とクマの姿を通し、来園者のみなさまにも日本の里山風景を感じていただくことを目指しています。

ニホンツキノワグマ展示場の植栽
ニホンツキノワグマ展示場の植栽

一方で、動物の行動によって植物や景観が大きく変化することがあります。ツキノワグマは、夏から秋にかけて昆虫をよく採食します。上野動物園の展示場でも、この時期になると植栽地にコガネムシ科の昆虫が卵を産みに来ます。そこで育った幼虫はツキノワグマにとって貴重なタンパク源となるため、嗅覚を使って探し出し、地面を掘り起こします。

昆虫を探し出して食べることは自然な採食行動ですが、展示場の植栽にとっては大きな影響があり、せっかく整えた植栽地が掘り起こされることで、景観を維持することが難しくなります。

掘り返された痕①
掘り返された痕①
掘り返された痕②
掘り返された痕②

そこで、よく掘り起こされる植栽地の表面に川砂を敷くことにしました。これは、コガネムシが産卵場所として選びにくくなる可能性を考えたくふうです。実際には砂を敷いた場所にもコガネムシが訪れているようで、完全に防ぐことはできていませんが、それでも以前と比べると、地面を掘り起こされる頻度は大きく減ったように感じます。

また、昆虫を掘って探して食べるという行動をほかの場所で引き出せないかと考え、展示場の一角にチップを厚く敷き、そこにミルワーム(えさ用の幼虫)を隠すようにしました。ツキノワグマは、嗅覚や前足を使って、長時間かけてミルワームを探ります。

表面に川砂を敷いた植栽地(2026年3月)
表面に川砂を敷いた植栽地(2026年3月)

こうしたくふうにより現在は、ツキノワグマが本来もっている行動を引き出しながら、日本の里山らしい景観を維持することができています。今後、秋から冬へと季節が進むと、展示場の植物も穂を出したり、色が変わったり、少しずつ枯れていったりと、姿を変えていきます。季節によって変化する植物と、そのなかのツキノワグマのようすをぜひご覧ください。

現在の植栽①(2026年10月)
現在の植栽①(2026年10月)
現在の植栽②(2026年10月)
現在の植栽②(2026年10月)

〔上野動物園 東園飼育展示係〕

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