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Profile 17/知られざるフクロウ フクロウ
 フクロウのなかまは、熱帯地方から北極まで、約150種が知られています。ハトより小さい種類もあれば、翼をひろげると150センチ以上にもなる大型種まで、大きさもさまざまです。
 日本産フクロウは10種類。種としてのフクロウは中型で、カラスくらいの大きさです。日本中の平地から山林、森などでくらしています。
・昼は目が見えない?
 「フクロウは夜行性だから昼は目が見えない」と誤解している人がよくいます。じつは昼間も見えていて、夜はさらによく見えるのです。ネズミやネコも夜行性の動物ですが、昼でもちゃんと目が見えていますよね。
 逆に、「トリ目」ということばのせいで、鳥は一般に夜目がきかないように思われますが、カモなど渡り鳥の多くは、夜間に飛行しています。
・首を回して見るフクロウ
 フクロウは270度も首が回るといわれますが、なぜそんなに首が回るようになっているのでしょうか。じつは、眼球の動きと視野が関係しているのです。一般に、鳥類は眼球をあまり動かすことができません。とくにフクロウのなかまは眼球が固定されています。さらに、ヒトの視野が170度あるのに対し、フクロウの視野は110度ぐらいしかないため、首を回してものを見るのです。
・フクロウは獰猛(どうもう)なの?
 フクロウのなかまが肉食なので、フクロウは獰猛だと思っている人も多く、ワシ、タカ、フクロウは人を襲うとさえ思っている人が大勢います。はたしてそうでしょうか。じつは、ペンギンやペリカンのと同様、魚を主食にしているワシ、タカ、フクロウ類もたくさん知られています。ハチやイヌに襲われて死亡する人はいても、ワシやタカ、フクロウに襲われて死亡している報告はありません。
消えたゴロッチョたち
 フクロウはかつて日本全国に生息し、山里はもちろん、都内でも緑のあるところではすがたが見られる、けっして珍しい鳥ではありませんでした。
 1990年以前、夜の巡回をまだ職員がしていた多摩動物公園でのこと。巡回中、低い木の高さ3~4メートルのところにフクロウが止まっているのをよく見かけました。ドングリのような目で、こちらの動きをじっと見ているフクロウのすがたは今でもよく憶えています。林の中からはネズミが枯れ葉をかさかさとかき分ける音が聞こえ、近くでキツネが飛び跳ねるという、今では信じられないような環境でした。
 今では減ってしまいましたが、かつて鎮守の杜とよばれる場所には大木が残されていました。フクロウはそのような大木の洞を巣として、毎年2~3羽のひなを育てます。フクロウの食事量は1日にノネズミ1~2匹と意外に少食です。それでも1羽のフクロウは1年で400匹以上、つがいで1,000匹、ひなを育てているときにはさらに多くのノネズミを捕まえていることになります。もしフクロウがいなければ、その1,000匹はネズミ算式に増え、農作物に大きな被害を与えていたでしょう。フクロウはノネズミの被害から農作物を守る、守り神なわけです。村人たちは、夜になると鎮守の杜から聞こえてくる鳴き声を聞き、フクロウのことを「ゴロスケ」「ゴロッチョ」と親しみをこめて呼んで、けっして危害を加えることはありませんでした(フクロウは繁殖期にゴロスケホーホーと鳴きます)。
 ところが、その後、わずかなあいだに鎮守の杜が住宅地に変わり、田畑はいつの間にかなくなり、豊作を祈願することもなくなりました。それとともにフクロウたちも姿を消していきました。メダカやカエルがいた田畑を失い、フクロウが住む鎮守の杜をなくした私たちは、ほんとうに豊かといえるのでしょうか。
 最後に、フクロウの特徴を知っていただくため、訓練の一環として飛行運動をしていたときの話をします。止まり木に止まっているフクロウの「ゴロッチョ」を20~30メートル離れたところから呼び戻す訓練をしていたときのことです。ゴロッチョを止まり木に止まらせ、背中を向けて離れていったとき、いきなり後頭部を蹴られました。ゴロッチョが待ちきれずに飛んできてしまったのです。このときほど「フクロウは飛ぶとき羽音がしない」という事実を実感したことはありませんでした。
どうぶつ図鑑 Animal Encyclopedia
17 フクロウ科の鳥たち
 | オオコノハズク | シロフクロウ | 

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