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カイツブリの抱卵と巣作りがずっと続いています
 └─2010/01/28

 カイツブリの展示水槽には、親鳥2羽とひな3羽が同居しています。ひなは昨年(2009年)9月7~10日に孵化し、すでに4か月以上が経過しています。野外では2か月以内に巣立ちを迎えるので、なぜ親に追い出されず、いっしょにいられるのだろうか、と不思議に思うところです。

 一方、親鳥は、これらのひなが孵化した直後の昨年9月23日から10月4日にかけて産卵しました。そこで、10月13日までに本物の卵は巣から取り出し、5つの擬卵(本物に似せて作った人工卵)で置き換えました。

 今までの実験では、擬卵で親鳥を完全にだますことはできず、産卵から予想される孵化予定日を少し過ぎると擬卵も放棄されていました。親鳥は孵化日数を数えられるのか?と思っていたのですが、今回の状況を見るとそうでもないようです。

 昨年9月23日から現在(2010年1月27日)まで、4か月以上のあいだ、親鳥は擬卵をひとつも捨てることなく抱卵し、巣の手入れも続けています。ひなを追い出すこともありません。まるで時間が止まってしまったかのようです。これは、親鳥の「状況認識」が止まったままだと考えると納得のいくことです。

 鳥の行動の一部はホルモンによってコントロールされています。ホルモンは、環境(気温や日長など)の変化や、配偶相手とのやりとりなど、さまざまな刺激が引き金となります。今回のカイツブリについては、抱卵開始後、卵に何の変化もないことがポイントだと考えています。

 つまり、卵の発生が進めば、ふつうは胚の動きなどがわかるでしょうし、発生しなくても乾燥して卵が軽くなったり、腐敗臭がしたりといった変化があるものです。擬卵は何のメッセージも発しなかったので、親鳥は次の行動への引き金が入らず、「抱卵開始」のままの状態なのだと想像されます。

 ちなみに、これまでは擬卵と本物が混ざっていたので、発生が進んだ卵や腐った卵が次の行動への引き金になっていたと思われます。

 条件を変えなければ、しばらくは抱卵と巣作り(正確には巣の補修)を続けるでしょう。こうした行動を見る機会はなかなかありません。いつまで続くかわかりませんので、ぜひお見逃しなく。

写真上:カイツブリの親鳥と巣
写真下:カイツブリのひな

〔井の頭自然文化園水生物館飼育展示係 荒井寛〕

◎これまでのニュース(2009年)

カイツブリの巣作りと産卵      (04月17日)
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                   (06月23日)
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カイツブリの卵、今回は孵化にいたらず(07月31日)
カイツブリをいつまでだませるのか  (08月07日)
カイツブリの擬卵実験は予想外の展開へ(08月21日)
カイツブリが再び孵化しました    (09月11日)
カイツブリのひなが見られます    (09月25日)

◎東京ズーネットBBの動画

カイツブリ再登場    (2005年11月撮影)
カイツブリのひな、成長中(2009年06月撮影)

(2010年01月28日)



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