井の頭自然文化園水生物館でカイツブリのひなが順調に育っています。これまでのニュースはこちら↓
・ニュース
「
カイツブリのひなが親鳥の背中から顔を出しました」
「
カイツブリのひなの成長」
「
大きくなったカイツブリのひな」
・動画ニュース「
カイツブリのひな、成長中」
カイツブリのひなの成長は、毎日のように見ていても感じられるほどです。先週まではさかんに親鳥の背中にもぐり込もうとしていたひなたちですが、今はもぐり込もうとする気配はありません。それもそのはず。もう大きくてもぐり込めないし、背中に乗れないのです。ひなの体は親鳥と同じくらいになってきました。
成長は体だけでなく、行動にもあらわれています。よく水中を眺めているひなですが、潜水練習には後押しが必要なのでしょう。親鳥につつかれて半強制的な潜水訓練を重ね、最近では自力で小魚(モツゴ)を捕まえることもできるようになってきました。
でも、ひなは魚よりも、孵化直後から食べてきたミールワームやコオロギを好んで食べます。親鳥がくわえて持っていったときの反応が明らかに違うのでわかります。
ミールワームを水面にまくと、ひなは親鳥がくわえて持ってきてくれるミールワームを食べつつ、自分でも近くに浮いているミールワームをつぎつぎに食べます。そして大好物のミールワームをほかのひなに与えることがあります。ひなが同腹(同じ母親からいっしょに生まれた個体)のひなに給餌しているのです。どうも、あるていどお腹がいっぱいになった大きなひなが、自分より小さなひなに与えているように見えます。兄弟への手助けですからわかりやすいのですが、こういう行動は鳥の生態としてふつうに見られるわけではないようです。くわしく観察してみようと思います。
順調なひなの成長のかたわら、親鳥には「不審な」行動が見られていました。まだ、ひなを背中に乗せ、幸せそうな家族の風景が見られた6月の下旬から、さかんに巣の手直しをして、巣の上で首を下げた求愛姿勢や交尾姿勢が観察されていたのです。そして、2009年7月5日には予想通り産卵が始まりました。ひながいるのに産卵を始めるのは、野外でも観察されることで異常なことではありません。
今育っているひなが巣立つのは7月下旬から8月上旬だと思われます。卵は約3週間で孵化しますから、あらたなひなが誕生するころには、今のひなは親鳥に追い立てられ、同じ水槽にはいられなくなってしまう計算です。
親鳥が抱卵を始めるまで、ひなたちは巣の上で休んでいました。でも今はひなたちは巣に入れてもらえません。巣の近くの陸地に肩寄せあって並んでいるのです。
日々、あらたな発見と展開があり、あきることなく毎日観察を楽しんでいます。みなさんもぜひ、間近で繰り広げられるカイツブリ劇場をごらんになりませんか。
写真上から:
・水中を覗くひな
・ひなからひなへの給餌。生物の世界では
あまり見られない行動
・親鳥があらたに抱卵を開始。巣に入れて
もらえなくなったひなが陸地で休んでいる
〔井の頭自然文化園水生物館飼育展示係 荒井寛〕
(2009年07月10日)