井の頭自然文化園水生物館では、擬卵(ぎらん:本物に似せて作った人工卵)でカイツブリの繁殖をコントロールする実験を行ないました。その結果をお知らせします。
これまでお知らせしたとおり、カイツブリは2009年7月5日から12日にかけて5つの卵を産み、孵化予定日は7月26日から8月2日でした。しかし、擬卵と本物の卵の交換、擬卵の追加、本物の卵の破損などを経て、7月30日の時点で巣内に擬卵だけが4つ残り、雌雄が交代で温めていました。
孵化予定日をかなり過ぎた8月10日、擬卵は4つとも巣の近くの水底に落ちていました。孵化予定日からのズレによって、孵化しない卵であると親鳥が判断し、巣から落としたのでしょう。
擬卵が事故で巣から落ちてしまったのではなく、親鳥がわざと落としたことを確認するため、巣の状態を確認してから、擬卵を4つ巣に戻しました。すると、オスがふたたび巣に上がって擬卵を抱き始めたものの、3時間後、擬卵は4つとも水底に落ちていました。
「もう擬卵でだますことはできない」と観念しましたが、親鳥が卵をどのように確認するのか、どうやって巣から落とすかを観察しようと思い、4つの擬卵をふたたび巣の中へ戻したところ、オスはやはり抱卵を始めました。問題はその先です。今度はなぜかそのまま擬卵を抱き続けたのでした。
しばらくオスだけで抱卵する状態が続き、いつまで抱き続けるのかと思っていたら、8月15日には巣内に5つの卵がありました。産卵が始まったのです。これも想定外のことです。8月21日現在、巣内には4つの擬卵と4つの本物の卵があり、雌雄で抱卵しています。
予想できないカイツブリの行動ですが、いったい今回はいくつの卵を産むのでしょうか。
写真:巣内に整然と並んだ卵。巣の大きさやカイツブリが抱いて温められる平面的な広さから、8つぐらいが限度のように見えます。
〔井の頭自然文化園水生物館飼育展示係 荒井寛〕
◎これまでのニュース(2009年)
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カイツブリのひなのようすと産卵調整(07月17日)
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カイツブリのひなの展示ひとまず終了(07月24日)
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カイツブリの卵、今回は孵化にいたらず(07月31日)
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カイツブリをいつまでだませるのか(08月07日)
(2009年08月21日)