保全の取り組み

中国の保全活動

中国のジャイアントパンダ国家保護研究センター

中国では2023年に、ジャイアントパンダの保護活動をさらに強化することを目的に、主要な研究機関を統合し、「大熊猫国家保護研究中心(ジャイアントパンダ国家保護研究センター)」を発足させました。これは、中国国内の森林や野生動物保護を司る中央官庁である国家林業・草原局の直属組織として設立された、保護と研究の最高統括機関です。
ここに統括される二大組織として、1.中国ジャイアントパンダ保護研究センター(CCRCGP)と、2.成都ジャイアントパンダ繁殖研究基地が位置付けられています。中国では、ジャイアントパンダの保護研究をはじめさまざまな保全活動が国家レベルで組織化されており、さらに世界各国と連携をはかりながらジャイアントパンダの保全に取り組んでいます。

1.
中国ジャイアントパンダ保護研究センター:
主な役割として、野生個体群の保護を目的に、ジャイアントパンダをただ増やすだけでなく、自力で生きる力をつけさせて山に放す野生復帰訓練に重点を置いています。また、世界各国との共同研究も主導しています。臥龍神樹坪、臥龍核桃坪基地、都江堰基地、雅安基地の拠点を持ち、2025年11月には、新たに綿陽基地がオープンしました。
2.
成都ジャイアントパンダ繁殖研究基地:
主な役割として、飼育下での繁殖技術の向上と、一般への科学普及・教育を担っています。成都市内に位置していることもあり、研究だけでなく、広大な一般公開エリアを持ち、教育や普及啓発(観光)の役割も大きいです。

上野動物園へのジャイアントパンダの導入

2011年「ジャイアントパンダ繁殖研究プロジェクト」協力協定書の調印
2011年「ジャイアントパンダ繁殖研究プロジェクト」協力協定書の調印
2011年に来園したリーリー
2011年に来園したリーリー
2011年に来園したシンシン
2011年に来園したシンシン

1972年、上野動物園は日本で初めてジャイアントパンダの飼育を開始しました。このときは「日中国交正常化」を記念して、中国からジャイアントパンダ2頭が日本に贈られました。さらにその10周年、20周年などの節目にも日本と中国の間でジャイアントパンダの贈呈や交換がおこなわれました。上野動物園ではそれぞれのジャイアントパンダで繁殖に取り組み、1885年の日本初の赤ちゃんを皮切りに、1988年までに3頭の子が誕生しました。
時を経て2010年、東京都と中国野生動物保護協会は、ジャイアントパンダの保護を促進し、中国における野生動物保護事業のさらなる発展に寄与し、また自然環境の保全や野生動物の保護への理解をはかることを目的に、「ジャイアントパンダ繁殖研究プロジェクト」を共同で進める協力協定書の調印をおこないました。それにもとづき、2011年に2頭のジャイアントパンダが中国ジャイアントパンダ保護研究センターから上野動物園に貸与されました。上野動物園は中国と共同でこのプロジェクトに取り組み、3頭の子の成育に成功。2026年1月までに、協定書で定められたとおりジャイアントパンダ全頭を中国に返還しました。

上野動物園での保全の取組み
①繁殖

2017年6月12日生まれのシャンシャン
2017年6月12日生まれのシャンシャン
2021年6月23日生まれのシャオシャオとレイレイ
2021年6月23日生まれのシャオシャオとレイレイ

上野動物園は、1972年に「カンカン」「ランラン」の飼育を開始しました。1979年、「ランラン」は自然交配により妊娠しましたが、残念ながら妊娠中に死亡しました。その後「フェイフェイ」と「ホァンホァン」との2頭で取り組んだ結果、1985年、人工授精により日本で初めての繁殖に成功しました。第一号の赤ちゃんは惜しくも生後3日で死亡してしまいましたが、その後、1986年、1988年にも同じく人工授精にて繁殖に成功。その2頭は無事に成育しました。
 1986年に生まれた「トントン」は、1992年に来園した「リンリン」とともに繁殖に取り組みましたが、人工授精も含めて成功させることができませんでした。「トントン」の死亡後、「リンリン」は2001年からメキシコのチャプルテペック動物園とのあいだで共同繁殖を開始したものの、こちらも成功には至りませんでした。
2011年、「ジャイアントパンダ繁殖研究プロジェクト」の一環として「リーリー」と「シンシン」が来園しました。この2頭については、2024年9月の2頭の返還までの13年間に、自然交配による3回の出産と、3頭の子の成育に成功しました。成育した子ども3頭は、それぞれ中国に返還されました。

上野動物園での保全の取組み
②研究

モニター室での行動観察
モニター室での行動観察
血圧の測定
血圧の測定
麻酔下での検査
麻酔下での検査

上野動物園では、ジャイアントパンダの飼育を通じて、飼養繁殖研究、疾病予防および治療、行動学的調査など、さまざまな調査・研究を行いました。これらの結果はすべて中国ジャイアントパンダ保護研究センターと共有し、今後の飼育・繁殖、そして野生のジャイアントパンダの保全に役立てられます。

上野動物園での保全の取組み
③普及啓発

展示場の解説パネル
展示場の解説パネル
一般向け講演会
一般向け講演会
子ども向けイベント
子ども向けイベント

野生動物の保全には、多くの人々に、その動物の野生での現状や、保護の取り組みについて理解を広めることもたいへん重要です。上野動物園では、ジャイアントパンダの展示をはじめ、さまざまなイベントの開催、普及啓発パンフレットの配布、SNS発信などを通じて、ジャイアントパンダについての普及啓発に取り組みました。
また、2011年にジャイアントパンダ保護サポート基金を立ち上げ、ドネーション商品の販売もおこなうことで、多くの方々が直接的にパンダの保全に協力できる機会を創出しました。この基金は、上野動物園でのジャイアントパンダの飼育環境の改善や普及啓発、さらに中国での保全活動の資金として活用されました。

今後に向けて

中国への出張
中国への出張
飼育環境の充実(環境エンリッチメント)
飼育環境の充実(環境エンリッチメント)
国際会議でのプレゼンテーション
国際会議でのプレゼンテーション

上野動物園は、1972年以降培った飼育繁殖技術を発展させるべく、2011年より協力連携を強固にしてきた中国ジャイアントパンダ保護研究センターとは引き続き連携をはかり、これからもジャイアントパンダにおける保全活動を継続させていきます。両施設のノウハウを活かしながら、ジャイアントパンダの飼養繁殖研究および疾病予防、行動学的調査や科学的な普及啓発、教育活動などにおいて、協力していきます。