上野動物園・多摩動物公園・葛西臨海水族園・井の頭自然文化園──都立動物園・水族園の公式サイト
話題の動物たちにズームイン! 右のメニューからどうぞ。
野生のユキヒョウは、群れではなく、単独で行動するのがふつうです。しかし彼らは、さまざまな方法でコミュニケーションをはかっています。鳴き声もその一つ。ユキヒョウの飼育を通じて発見した、ユキヒョウたちの「おしゃべり好き」なところをご紹介しましょう。
飼育担当になった当時、ユキヒョウたちは私を警戒し、なかなか思うとおりに動いてくれませんでした。夕方、運動場から寝部屋に戻すのも一苦労です。そこで、ふだんから、時間があれば個体名で呼びかけるようにしました。そのおかげで、名前を呼ぶと寝部屋に戻ってきてくれるようになったのです。
中でも反応がよかったのが、メスの「ミユキ」です。子育ても何度か経験したミユキは、いろいろな「ことば」を聞かせてくれました。
まず、オスとメスの出会いの鳴き交わし。ふだん、ユキヒョウはあまり鳴きませんが、繁殖期になると、おなかから絞り出すような声で呼び合います。野生では、広いなわばりの中で、雌雄がめぐりあうための手段として使われているのでしょう。
めぐりあってから約100日後、かわいらしい子どもが生まれます。生後すぐの赤ちゃんは、「グェ~」と低い声を出します。しかし、この低い声は短期間で聞かれなくなり、つづいて、鳥がさえずるように「ピーヨ」と鳴くようになります。この声を聞いた母親は、すぐに赤ちゃんのそばにかけつけ、赤ちゃんはおとなしくなります。
子どもが運動場に出るようになると、母親への関心が少し薄れます。母親が寝部屋に帰っても、子どもは運動場で遊びに夢中。お母さんについていくのも忘れてしまうのです。そこで飼育係が母親に向かって「子どもを呼んできて」と言うと、母親は出入口から顔だけ出して、鼻から空気を出すようにして音を出します。この音を聞くと子どもは遊びを中断し、寝部屋に入ってきて、「グー」とのどを鳴らしながら、母親に甘えるのです。