ニュース
ウミガラス繁殖のために
 └─葛西 2023/09/01
 野生のウミガラスは、繁殖期になると海に面した崖や岩場に集団を作り、巣は作らずに地面に直接産卵して卵を温めます。

 葛西臨海水族園では例年、繁殖期になると展示場の中央にある岩棚に集まって繁殖していました。しかし、近年は通路の床面で繁殖するペアが現れ始め、産卵しても落ち着けずに卵が割れたり、周辺の掃除ができなくなったりするといった問題が起きていました。

 そこで今年は、「落ち着いて繁殖ができる環境にすること」や「掃除しやすくすること」を目指し、床面2か所にすのことマットで巣台を作り設置しました。でこぼこの擬岩に沿わせて設置するため、すのこを調整しながら組み合わせ、細かい隙間にはマットの端材を詰めて卵が割れないように対策しました。


卵が落ちる隙間ができないよう、展示場で調整しながら組み合わせた巣台となるすのこ

 また、孵化までの約33日にわたる抱卵期間のことも考え、マットは羽が傷まないものを選びました。設置後、すぐに数羽が2か所の巣台にそれぞれ乗りはじめ、そのうちペアで休んでいる姿も観察されるようになりました。しばらくは警戒して巣台に近づかないことも想定していたため、うれしい誤算です。

 新しい巣台の居心地は悪くなかったようで、6月になるとついに両方の巣台で産卵が見られ、7月にそのうちの一方で無事にひなが巣立ちしました。

巣台①
中央の個体のお腹の下には孵化したひながいます
巣台②
親鳥が卵をあたためている

 今回新たに設置した巣台で、ペアが落ち着かない、卵が転がるといったトラブルもなく繁殖が成功したこと、課題がひとつ解決したことをうれしく思います。今後も、ウミガラスのよりよい繁殖環境を整えていけるよう尽力していきます。

 ひなが巣立ったため巣台はすでに片付けてしまいましたが、現在はそのひな(幼鳥)のようすに見どころがたくさんあります!


一番奥:巣立ちした幼鳥、手前:親(夏羽)
幼鳥は成鳥に比べて体が小さく、くちばしも短い。成鳥の冬羽に似て顔に白い部分が多い。

 ウミガラスは、孵化後約25日で巣立ち、そのあとは海上でオスの親が40日ほど育てます。現在展示場では、幼鳥が親といっしょにプールで泳いだり、親が運んだ魚を受け取って食べたりする姿が観察できます。また、親とはぐれないように大きな高い声で頻繁に鳴く幼鳥の声が、スピーカーを通して観覧側からも聞くことができます。

 ご来園の際にはぜひ、今しか観察できない幼鳥の姿や行動にご注目ください!


右側(手前と奥):プールで泳ぐ2羽の幼鳥

〔葛西臨海水族園飼育展示係 内山幸〕

◎関連ニュース
ウミガラスとエトピリカのひな誕生(2005年08月12日)
絶滅危惧種ウミガラスに赤ちゃん誕生!(2007年08月24日)
口ひげの生えたエトピリカ──ウミガラスとエトピリカ、餌の運び方の違い(2007年09月07日)
ウミガラスの白黒模様(2008年04月25日)
ウミガラスのシングルマザー(2010年08月13日)
アクアマリンふくしまから来たウミガラス、ひな誕生(2011年07月14日)
ウミガラスの子、仮親に育てられています(2011年09月16日)
ウミガラスとエトピリカの繁殖シーズン(2013年06月28日)
ウミガラスの子育て事情(2015年09月04日)
似ているようで違うウミガラスとエトピリカのえさの捕り方(2016年03月18日)
子煩悩?なウミガラスのオス(2018年11月09日)

(2023年09月01日)



ページトップへ