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子煩悩?なウミガラスのオス
 └─2018/11/09

 今年(2018年)8月中旬、葛西臨海水族園の「海鳥の生態」水槽にウミガラスの幼鳥が1羽仲間入りしました。この幼鳥は、ふくしま海洋科学館(アクアマリンふくしま)で産まれた卵を葛西臨海水族園まで輸送し、人工育雛で育てた個体です。

 野生のウミガラスは生後16~25日で巣を離れて海に出るので、生後25日までは飼育係が親代わりをして育てました。その後、プールのある部屋で成鳥といっしょに飼育し、幼鳥が自力で泳いでえさを食べるようになったため、展示場へ移しました。

 移動の翌日から、成鳥とのあいだで興味深いようすが見られるようになりました。それは、成鳥が幼鳥に寄り添って世話をする光景です。自らの子孫ではないこの幼鳥に対して成鳥は“懐に迎え入れる”しぐさを見せ、幼鳥の口もとにえさを差し出すなど、懸命に世話をする姿が見られたのです。


【動画】幼鳥を世話するウミガラス

 世話をしていた個体のほとんどがオスでした。実際に幼鳥がえさを受け取って食べるところは確認できませんでしたが、オスの成鳥の子煩悩な姿には驚きました。反面、なぜオスの成鳥ばかりが世話をしたのか疑問でした。

 理由はいくつか考えられますが、野性のオス親はひなが巣を離れた後、2か月くらいえさを与え、狩りを教える習性があります。また、オス親はひながオスだった場合、メスのひなの場合よりもえさを多く運ぶなど、メス親に比べて子育てに熱心な面があります。世話をしている個体にオスが多かったのはこの習性が関係している可能性がありそうです。突然幼鳥が現れたことで、ウミガラスのオスの本能が自然に働いたのかもしれません。

 野生で観察が難しい行動が、飼育下では観察できることがあります。今回のウミガラスの例も、雌雄の識別ができていて、間近で観察できる動物園・水族園だからこそ記録できた行動といえるでしょう。今後も、まだまだ謎に包まれている動物たちを観察し、お伝えしていこうと思います。

〔葛西臨海水族園飼育展示係 川上壮太郎〕

(2018年11月9日)


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