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ウミガラスの子、仮親に育てられています
 └─2011/09/16

 葛西臨海水族園「海鳥の生態」コーナーには、1羽のウミガラスの幼鳥がいます。この幼鳥は絶え間なく大声で親と鳴き交わしているので、すぐ見つかるでしょう。なぜ、そのように大声で鳴き続けているのでしょうか。

 ウミガラスは海岸の岩の上に集まって繁殖します。さまざまな捕食動物に襲われる危険性が高いため、ウミガラスのひなは孵化後わずか2~3週間で巣立って海に入ります。その後オス親に世話をされながら海上生活をしますが、波間で親とはぐれないよう、大声で鳴くのだと思われます。

 この幼鳥は、わけあって仮親に育てられています。両親は2011年3月11日に被災した「アクアマリンふくしま」から移動してきました。

・関連ニュース「アクアマリンふくしまから来たウミガラス、ひな誕生」

 6月4日の朝、飼育係員が出入りする戸口近くの通路脇で抱卵しているのが見つかりましたが、ここは作業で行き来するだけでなく、清掃時には水浸しになります。そこで、卵を取り上げて孵卵器に移しました。
 一方、親鳥に抱卵を体験させるのも今後の繁殖成功のためには重要なことなので、抱卵場所を部屋の隅へ少しずつずらしていき、清掃中以外は擬卵を抱けるようにしました。

 ウミガラスのように寒い地域で繁殖する鳥類の卵は、親鳥が抱卵を交代するときに冷気にあたります。また、交代した親鳥は濡れて冷えた羽で抱き始めます。そこで、孵卵器内の一定温度(37.4℃)で温め続けるのではなく、朝夕2回孵卵器から出し、霧吹きで卵を濡らして室内(約20℃)に5~10分間放置するようにしました。

 7月4日、卵の中から鳴き声がよく聞こえるようになり、親子のコミュニケーションができるようになったので、抱卵中だった水族園のつがいに卵を預け、仮親になってもらいました。そして、7月8日に無事孵化し、8月6日に巣立った後もそのまま仮親に育てられています。巣立ちまで約1か月かかりましたが、飼育下では巣立ちが野生より遅いこともあります。この幼鳥は本当の両親と一緒に10月、福島へ帰る予定です。

写真:仮親のオス(左)と幼鳥(右)

〔葛西臨海水族園飼育展示係 福田道雄〕

(2011年09月16日)



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