葛西臨海水族園「海鳥の生態」エリアでウミガラスのひなが2015年8月7日に生まれました。今なら子育てのようすが見られます。
ウミガラスの繁殖期は通常5~8月です。巣を作らず、岩の断崖で集団を作って繁殖します。ひなは親鳥がくわえてきた小魚を食べて成長します。葛西臨海水族園では、えさの時間に飼育係が投げ入れたキビナゴを、親鳥が水中でキャッチし、ひなに運ぶ姿を見ることができます。
ぜひ注目していただきたいのが、えさをくわえたくちばしです。ウミガラスといっしょにいるエトピリカのくちばしは太くて大きいので、くちばしの方向に対してキビナゴを直角方向になるようにして、一度に数匹をくわえることができます。しかし、ウミガラスのくちばしは細長く、くちばしと同じ方向に1匹しかくわえることができません。そのため、ウミガラスたちは何度も往復してえさを運ばなければならないのです。
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えさをねだるウミガラスのひな | ひなに給餌するウミガラス親鳥 |
これだけを聞くと、ウミガラスたち大変だな──と多くの方が思うはずです。しかし、ここで重要なのが最初にお話しした「集団」で繁殖するという習性です。ウミガラスは、その年に卵がかえらなかったペアなどが、別のペアの子育てを手伝うことがあります。水族園では今年ウミガラスが1羽しか生まれなかったため、他の個体がもひなにえさを運び、親鳥の子育てを手伝っています。ちなみにエトピリカは巣穴を作り、親鳥だけでひなを育てます。繁殖生態と体のつくりや行動には、場合によってはこのように関連が見られます。
今回紹介した子育て行動は、この時期だけしか見られないので、葛西臨海水族園でぜひ観察してください。
ウミガラスのひなは孵化後約3週間で巣立ちます。巣立ち後、野生下ではオス親が1~2か月間ひなと行動をともにします。一方、飼育下では空間が限られてしまうので、メス親も子育てを続けています。ひなの巣立ち後、それまで子育てを手伝っていた他の個体が継続して子育てを手伝うのか、今後も注目して観察を続けます。
〔葛西臨海水族園飼育展示係 野島大貴〕
(2015年09月04日)