ジャイアントパンダを知ろう!

ジャイアントパンダの分類

ジャイアントパンダを何のなかまに分類するかについては、これまでさまざまな議論がありました。歯、骨格、消化器官などを調べると、共通の特徴が食肉目のアライグマ科にもクマ科にもみられます。しかしどちらも決定的に一致するものではないため、ジャイアントパンダ科として独立させるべきだ、という意見もありました。現在は、DNAの検査結果などからクマ科に分類されています。

ジャイアントパンダのからだ

鼻先からおしりまで:約150cm
しっぽ:10~15cm
肩の高さ:約90㎝
体重:オス100~120㎏ メス90~100㎏

ジャイアントパンダの体色の理由には、さまざまな説があります。雪深い高山の森林では、白黒の体が墨絵のような景色に溶け込むため、敵から身を守るのに都合がよいという説。また、耳や手足などは寒いときに冷えやすいので、黒ければ熱吸収がよくなり寒さ対策に役立つという説。さらに目のまわりの黒は、敵への威嚇、あるいはパンダ同士のコミュニケーションに役立つという説もあります。

他の動物と比べると、パンダの目や鼻は顔の下のほうに集まっていて、額が広いことに気づきます。この顔立ちは、幼児や幼獣に共通した特徴です。また、多くの動物は、赤ちゃんのうちは頭でっかちですが、成長とともに胴や足が大きくなり、頭の比率が小さくなっていきます。しかしジャイアントパンダはおとなになっても頭の比率が大きいままです。この「幼く見える顔立ち」「赤ちゃんのような体形」の2つは、パンダを「かわいらしく」見せる大きなポイントといえるでしょう。
実はその2つはどちらも、タケを食べることが理由です。かたいタケをかみつぶす強大な顎の筋肉がこめかみから頭頂まで厚く付いているため、頭でっかちになり、顔のパーツが下に寄っているように見えるのです。

パンダとトラの顔の比較
パンダとトラの顔の比較

指の数は、ほかの多くの哺乳類と同じで前足も後ろ足もそれぞれ5本です。ただ、前足には、手首の骨が伸びてできたコブのようなでっぱりがあり、このでっぱりと本来の指とではさむようにして、タケの葉や茎をしっかりとにぎることができます。ちょうど私たちヒトが親指で物をつかむのと同じような手の使い方ができるので、このでっぱりを通称パンダの「第六の指」といいます。この「第六の指」は親指側の手首の骨が伸びたものですが、小指側の下にも同様のでっぱりがあり、それもものをつかむのに役立っているという説もあります。

パンダの「第六の指」

ジャイアントパンダの足の裏にも、ほかの種類のクマや、あるいはイヌ・ネコなどと同様に、肉球とよばれるクッションがあります。ただ、パンダの場合は肉球の周りに生えている毛が多く、中には肉球が見えなくなるほどふかふかの足裏になっているパンダもいます。
雪深い、たいへん寒い地域でくらしているパンダにとって、この毛は、寒さよけや雪上での滑り止めの役割を果たしているようです。なお、ホッキョクグマやノウサギなども同じような毛深い足裏となっています。

ジャイアントパンダ・ホッキョクグマ・ウサギの後肢裏

ジャイアントパンダの腸の長さは、多くの肉食動物と同様に体長の約4倍と短く(ウシ・ヒツジなどの草食動物は20~25倍)、植物の繊維を消化するための酵素や微生物も、草食動物ほどはもっていません。そのためタケを食べても約20~30%しか消化できず、ほとんどがそのままの形で糞として出てしまいます。タケの葉を食べた後に出てくるのは、たくさんの葉がぎゅっと押し固められたような深緑色の糞。そしてタケの茎を食べた後に出てくるのは、タケの茎を小さくカットしてつぶしたようなものがたくさん固まりになった黄色っぽい糞です。

パンダの糞(葉)
主にタケの葉を食べた後の糞
パンダの糞(茎)
主にタケの茎を食べた後の糞

ジャイアントパンダのくらし

野生のジャイアントパンダは現在、中国の南西部にある四川省(しせんしょう)、陝西省(せんせいしょう)、甘粛省(かんしゅくしょう)の標高約1300~3500mにもおよぶ山岳地帯の森林でくらしています。化石などの調査によると、ジャイアントパンダの祖先は約300万年前ころに現れたようですが、その当時は今よりももっと標高の低い地域に、広く分布していました。
その後、パンダの生息域が高山のみに限られたのは、天敵や、餌の競争を避けた結果だと考えられます。しかし、19世紀に入ってパンダがくらす地域が急激に減少したのは、人口の増加により生息地の開発がすすんだことが大きな原因です。

パンダが生息する四川省の山
パンダが生息する四川省の山

ジャイアントパンダはタケを主食としています。野生では、食べ物の9割以上がタケの葉や茎、タケノコです。しかし、タケ以外の植物の葉や果実、さらには小動物を食べる場合もあります。
上野動物園でも、タケの葉や茎を主体として与え、春にはタケノコも与えていますが、補助食、あるいはトレーニングのごほうびとして、米粉やトウモロコシ粉で作った団子や、ニンジン・リンゴ・カキなどの野菜や果物も少量与えています。

動物園で与えているタケ
動物園で与えているタケ
動物園で与えている副食(ニンジン・リンゴ・パンダ団子)
動物園で与えている副食(ニンジン・リンゴ・パンダ団子)

クマの仲間の多くは雑食性で、植物の芽や花や実、小動物などを食べています。しかしジャイアントパンダが生息する中国の山岳地帯は、寒さが厳しく、クマの餌となるようなものは多くはありません。その一方で、タケは豊富に生えていて、冬でも枯れることなく1年を通して青い葉をつけています。ジャイアントパンダは、餌をめぐる競争を避け、高山でタケを食べる生活を選んだ動物だといえるでしょう。
なお、「タケは栄養価が低い」とよく誤解されますが、タンパク質などは他の植物と同等以上に含まれています。とくにタケノコはより高タンパクで、ミネラルなども豊富な食べ物です。

ジャイアントパンダは、野生でも飼育下でもよく木に登ります。高い木の上から周囲の様子を確かめたりするほか、とくに幼いパンダは、木の上で休むことで天敵から身を守るようです。
足の爪がたいへん鋭く、それを木の幹や枝にかけてスルスルと登っていきます。そして細い枝の上でも、柔らかい体でとても上手にバランスをとります。

木の上で休息するジャイアントパンダ
木の上で休息するジャイアントパンダ

ジャイアントパンダは群れでくらす動物ではありません。発情期のわずか数日間以外は、オスもメスも単独で過ごします。子どもは母親が育てますが、1歳半ごろになると母親から離れて生活するようになります。 そのため動物園でも、通常は1頭ずつ別に飼育します。ジャイアントパンダにとってはそれが「あたりまえ」の生活なのです。

見通しのきかない森の中では、においによる情報交換が便利です。ジャイアントパンダは「においづけ」(マーキング)という行動によって、自分の存在をほかのパンダに知らせ、またほかのパンダがいることを知ります。それにより、自分のなわばりを主張したり、たがいに避け合ったり、さらにはオスがメスの発情を察知して近づいたりします。
においづけには、肛門付近から出る分泌物や尿を使います。お尻を落とすような姿勢で、地面、あるいは木や石のでっぱった部分などに分泌物をこすりつけます。オスの場合は、逆立ちのような姿勢をとって、より高い位置につけることもあります。

フェイフェイ(オス)の逆立ち「においづけ」
フェイフェイ(オス)の逆立ち「においづけ」

ジャイアントパンダはふつう1回に1頭の子を産みますが、双子が生まれる場合もあります。生まれたときの大きさは、体長約15~17㎝、体重約100~150g。おとなの1000分の1ほどの大きさで、他の一般の哺乳類と比べるととても小さく生まれる動物です。
生まれてすぐの頃は、ピンク色の皮膚に、短い白い毛がまばらに生えていて、白黒もようはまだありません。生後1週間くらいから徐々に黒い部分が現れはじめ、生後1か月ころには、ジャイアントパンダらしい白黒もようが完成します。

生後3日目のジャイアントパンダ
生後3日目のジャイアントパンダ

基本的に野生動物は子どもの死亡率が大変高く、なんとか成長した後も天敵や餌不足など様々な要因でどんどん死んでいくので、「寿命」がどれくらいかを知るのはたいへん難しいことです。
飼育下では、野生よりは長く生きますが、「平均寿命」を算出できるほどの例数はありません。