 |
========================================================================
Z o o E x p r e s s ■ ズー・エクスプレス ■ No.568 - 2011年12月23日
========================================================================
・都立動物園の最新情報をお届けするメールマガジン「ズー・エクスプレス」
・本年、最終号をお届けします。
・東京動物園友の会に入会しませんか? 年会費は、 2,000円。機関誌「どうぶ
つと動物園」を年4冊お届けします。入会・継続の手続きは、クレジットカー
ド&オンラインでもOK! → http://www.tokyo-zoo.net/member/
■目次■----------------------------------------------------------------
・上野動物園
├─サンディエゴ動物園からアイアイのオスが来園
├─草地も好き、ホッキョクグマ「ユキオ」
├─ゴリラのためのさまざまなくふう
├─12/24-2/26「切り折り紙で見る両生爬虫類」展開催
├─子ども動物園にカピバラのメスがデビュー!
├─ラマバク舎にカピバラのオスがお目見え
├─ふれあいコーナーに子ウサギ登場
└─コリデール2頭が仲間入り
・多摩動物公園
├─モウコノウマの世代交代
├─床暖房って暖かい! ワラビー舎の寒さ対策
└─多摩動物公園の催し物
・葛西臨海水族園
├─ランプフィッシュの婚姻色
└─お正月は水族園で! 1月3日、獅子舞がやってくる
・井の頭自然文化園
├─ナベヅルの展示場に落ち葉のプール
└─文化園いきものクラブ第8回「げっ歯類に大接近」参加者募集
・書籍紹介──デズモンド・モリス『フクロウ──その歴史・文化・生態』
■上野動物園■==========================================================
--------------------------------------------
▼サンディエゴ動物園からアイアイのオスが来園
--------------------------------------------
2011年12月19日、米サンディエゴ動物園からアイアイのオス「ヒッチコック」
が上野動物園にやってきました。2005年2月22日、米デューク・レムール・セ
ンター生まれ。飼育場所は西園の「アイアイのすむ森」ですが、繁殖や研究が
主目的なので、当面は非公開です。
上野動物園にマダガスカルのツィンバザザ動植物園からアイアイ2頭が来園
したのは2001年10月。その後繁殖に成功し、8頭を飼育するようになりました
が、血統の更新のため、サンディエゴ動物園との間でオスを交換することにな
りました。上野動物園からもオス1頭を搬出する予定ですが、日程は未定です。
くわしくはこちら↓のニュースページをごらんください。
http://www.tokyo-zoo.net/topic/topics_detail?kind=news&link_num=20576
-------------------------------------
▼草地も好き、ホッキョクグマ「ユキオ」
-------------------------------------
2011年10月28日に上野動物園の「ホッキョクグマとアザラシの海」がオープ
ンしましたが、クマが快適にすごすには不便な箇所が見つかり、プールのある
大きなホッキョクグマ放飼場を改修しています。そのため、2011年12月28日ま
で、オスの「ユキオ」は小さい方の放飼場でごらんいただいています。
・関連ニュース
http://www.tokyo-zoo.net/topic/topics_detail?kind=news&link_num=20555
中央に草が広く植えられたこの小放飼場は、夏の北極圏をイメージしてつく
られ、ガラス越しに目の前でクマのようすを見られるのが特徴です。
オープン後ずっと大きな放飼場にいたユキオを、小放飼場に出すのは初めて
のことでした。放飼場に出たユキオは、放飼場内を一通り確認した後、おもむ
ろに草の上に寝そべり、ゴロゴロと回転しながら背中や頭を地面になすりつけ
る動作を始めました。
ユキオにはこれまでなじみのなかった土や草ですが、感触が意外に心地よか
ったのでしょうか、仰向けのまま、力いっぱい背中をすりつけ続けていました。
こういった動作は野生のホッキョクグマも夏場によく見せるようです。真っ白
だったユキオの体は、どんどん土や草の色に変って汚れてしまいました。
その後、草をくわえて引き抜いたり、そのまま食べたり、楽しんでいるよう
に見えました。小放飼場は冬に備えて草刈りをしていなかったので、草がたく
さん生えていたのですが、あっというまに押しつぶされて平たくなってしまい
ました。でも、ここをかなり気に入ってくれたようで安心しています。草も意
外に好きなようで、糞にも草が混じるようになりました。
ただ、小放飼場には大きなプールがないため、工事期間中、クマの泳ぐ姿を
見ていただけないのが残念です。工事完了後、新年にはユキオをプールのある
放飼場に出す予定です。しばらくお待ちください。
・東京ズーネットBBの動画から
「『ホッキョクグマとアザラシの海』[1]ホッキョクグマ」
(2011年10月撮影) http://www.tokyo-zoo.net/movie/mov_book/1111_01/
〔上野動物園東園飼育展示係 乙津和歌〕
--------------------------------
▼ゴリラのためのさまざまなくふう
--------------------------------
上野動物園では、ゴリラたちが外に出ているのは7時間ほど。それ以外の時
間は、室内で過ごしています。ただ餌を与えて、じょうぶな建物があればいい
というわけではありません。
床や台座にはたくさんのワラを敷き、天井や格子に竹や枝葉を差し込み森の
中にいるようなくふうをしています。樹上に枝葉でベッドを作るゴリラたちの
快適な眠りを守るくふうです。
室内にはたくさんのロープやリサイクルの消防ホースを張り巡らせ、編みこ
んでハンモックを設置して、空間をうまく使えるようにしてあります。
睡眠だけでなく、健康のためにもう一つ大事なのは食事です。たくさんの野
菜や枝葉が彼らの主食です。麻袋やワラの中に野菜を隠したり、ポリタンクに
ペレットを入れておきます。いじわるに聞こえるかもしれませんが、与えられ
た餌を食べるだけでは満足感も少なく、短時間で食べ終わってしまいます。餌
を求めて動き回る野生のゴリラのようによく動き、隠した餌を見つける喜びを
与えることも大切なくふうです。
あまり好んで食べたがらない野菜には、ハチミツやミソで少し味付けしたり、
ピーマンに注射器でヨーグルトを入れてみたり、日によってアレンジを加えて
います。冬の時期には、トマトなどの大好きな野菜にオリーブオイルをつけて
おき、ゴリラが手に取ったときにスキンケアになるよう気を配っています。コ
ドモのコモモには、朝外に出る前にも手足にオイルやワセリンを塗っています。
よく眠りよく食べて、心身ともに健康なゴリラとしてくらせるよう、いろい
ろなくふうをしていきたいと思います。
〔上野動物園東園飼育展示係 木岡真一〕
------------------------------------------------
▼12/24-2/26「切り折り紙で見る両生爬虫類」展開催
------------------------------------------------
2011年12月24日(土)から翌年2月2月26日(日)まで、上野動物園の両生
爬虫類館(ビバリウム)で、「切り折り紙で見る両生爬虫類」展を開催します!
「切り折り紙」とは、紙を素材とし、下書きすることなく、切って追って作っ
た立体作品、あるいはその手法のこと。くわしくはこちら↓をどうぞ。
http://www.tokyo-zoo.net/topic/topics_detail?kind=event&link_num=20579
------------------------------------------
▼子ども動物園にカピバラのメスがデビュー!
------------------------------------------
上野動物園西園の子ども動物園に、カピバラの新しい展示施設をつくりまし
た。2011年12月22日から公開中。カピバラはネズミのなかま(齧歯類)として
は最大種。小さなハツカネズミからモルモット、さらに大きなカピバラまで、
似ているところや違っているところをじっくりと観察してください(展示時間
の変更や展示の中止をする場合があります)。くわしくはこちら↓
http://www.tokyo-zoo.net/topic/topics_detail?kind=news&link_num=20575
--------------------------------------
▼ラマバク舎にカピバラのオスがお目見え
--------------------------------------
すぐ上のニュースのとおり、上野動物園では2011年12月19日、東園のラマバ
ク舎で飼育していたカピバラのメス「マオ」を西園子ども動物園へ移しました。
カピバラを終日展示してほしいという声も多くありましたが、東園ラマバク
舎の「ぬし」であるアメリカバクと同居展示ができず、開園から午前10時45分
ころまでの交代展示でした。子ども動物園へ移動したことで、終日ごらんいた
だけるようになります。公開をお楽しみに!
マオが移動した後、ラマバク舎には新たに市川市動植物園オスが来園し、デ
ビューしました。名前は「ソル」です。生息地の言語のひとつであるスペイン
語で「太陽」という意味です。園内でも明るい存在になるようにと名づけまし
た。2010年11月28日生まれの1歳で、祖父母はすでに2頭とも亡くなりました
が、上野動物園で飼育していた「タン」と「ソク」です。母親の「ロゼ」(上
野動物園での名前は「ゆず」)が、このタンとソクの娘です。じいちゃんとば
あちゃんが生活していた場所に戻ってきたことになります。
まだまだ体は小さいのですが、気の強さはマオ以上?!です。まだ若いのに、
カピバラのオスにしかないモリージョという部位(頭頂部と鼻の間の毛の生え
てない部分)を壁や扉の角に擦りつけてマーキングするなど、オスらしい行動
を見せます。おとなになると、このモリージョが黒くなり分泌物が出てきます。
睾丸を枝に擦りつけるマーキングもおこないます。
これから、たくましく上野動物園のカピバラの歴史を引き継いでいってもら
いたいと思います。
〔上野動物園東園飼育展示係 藤岡紘〕
--------------------------------
▼ふれあいコーナーに子ウサギ登場
--------------------------------
上野動物園の子ども動物園では、毎日午後1時30分から2時30分まで、曲屋
(まがりや)内で「ふれあいコーナー」を実施してします。
ウサギ、モルモット、ハツカネズミ、ニワトリ、アヒルとふれあうことがで
きますが、卯年の今年(2011年)はカイウサギの数を増やしました。2011年11
月11日には、カイウサギの一品種である「ネザーランドドワーフ」が出産し、
3頭が元気に育ったので、母子をふれあいコーナーにお目見えさせました。
母親の「ジャスミン」は2010年9月生まれでまだ若く、出産も初めてでした。
通常、母ウサギは出産前に自分の毛を抜いて温かい巣を作ります。しかしジャ
スミンはきちんとした巣を作らず、出産した当日は、手近のワラを無造作に積
み上げた山の中に子どもを隠していました。ちゃんと子育てできるのかどうか、
ハラハラする私たちを不安をよそに、出産翌日には柔らかい干し草と自分の毛
で巣を作り直していました。
出産直後の母ウサギは警戒心が強く、子どもを食べてしまうことがあります。
私たちは母ウサギを刺激しないよう、静かに見守ることにしました。
カイウサギは天敵から子どもを守るため、日に1~2回しか授乳せず、子ど
もも隠れて動きません。ジャスミンの子もほとんど動かず、生死さえわかりま
せんでした。そこで生後2週間たったある日、干し草をそっと取り除いてみた
ところ、想像よりもずっとしっかりした大きな体の子どもたちが、ひとかたま
りになっていました。
その後、子ウサギは元気に動き回るようになり、母乳をせびる姿やリンゴや
生の牧草を食べる姿を見せています。親子は「うさぎとモルモットのおうち」
に移したので、窓からごらんになった方もいらっしゃるかも知れません。
子ウサギは生後30日に離乳し、生後40日の12月21日には体重が420~509グラ
ムになりました。生後6週間を過ぎれば、母親から離しても大丈夫なので、ふ
れあいコーナーにデビューさせました。日々成長する小さな命とのふれあいに、
ぜひ子ども動物園においでください。
〔上野動物園子ども動物園係 佐藤恵〕
--------------------------
▼コリデール2頭が仲間入り
--------------------------
上野動物園子ども動物園に、埼玉県こども動物自然公園からヒツジが2頭や
ってきました。この2頭はコリデールという種類で、ひとまわり小さな体つき
の若いメス。名前は「ベル」と「アリス」です。
子ども動物園にはコリデールがすでに2頭いますが、2002年生まれの年寄り
ヤギで、今年の夏は体調を崩し、一日中室内で扇風機の風を受けて過ごしまし
た。そこで、若い個体を探していたところ、埼玉県こども動物自然公園からや
ってくることになりました。
ベルとアリスが仲間入りするなかよし広場には、ヤギやヒツジ、ニワトリが
放し飼いになっていて、来園した方々が自由に触れ合うことができます。
この広場で動物たちに求められることは、人に慣れていておとなしいという
ことですが、2頭はとても臆病な性格で、人が怖いのか、触ろうと手を伸ばす
だけで、2頭寄り添って逃げてしまいます。広場に出た初日は、元気な子ども
たちに追いかけられ、広場のすみで困ったような顔をしていました。慣れるま
でしばらく時間がかかりそうです。広場で2頭を見かけたら、そっと優しく触
ってください。
〔上野動物園子ども動物園係 吉田真理子〕
■多摩動物公園■========================================================
------------------------
▼モウコノウマの世代交代
------------------------
2011年11月2日、多摩動物公園のモウコノウマ「サーシャ」が333日の妊娠
期間を経て元気な子どもを産みました。6産目にして初めてのオスの誕生です。
・関連ニュース
http://www.tokyo-zoo.net/topic/topics_detail?kind=news&link_num=20512
サーシャの第一子、メスのクリス(頭文字C)は、現在千葉市動物公園にい
ます。2~4番目の姉妹ダイアナ(D)、エーコ(E)、フルール(F)は多
摩動物公園でごらんになれます。5番目の子は2010年10月に生まれましたが、
当日死亡してしまいました。この子はグレース(G)と名づけました。
そして今回、アルファベット順の命名というルールに従い、「H」から始ま
る名前を考え、たくましく立派に育つように「ハーン」と名づけました。彼ら
の祖国モンゴルの言葉に当てはめると、ハーンは王様を意味します(ただし、
モンゴル語で使われるキリル文字やその転写アルファベットでは、Hではなく
Xの文字を使います)。
2010年のグレースの誕生の死亡の後、年齢などを考え、サーシャの繁殖はあ
きらめようと思っていました。しかし、モウコノウマは野生ではいちど絶滅し
てしまった種です。世界各国の動物園の努力によって約2000頭まで増えたとは
いえ、まだまだ保護が必要な種です。相性のよいサーシャとオスのレオとの間
にもういちどチャンスを!ということで、昨年の冬に再び繁殖を目指した結果、
12月に交尾を確認し、不安と期待の日々を重ねてハーンが誕生しました。
生後間もない子どものようすを確認しようと扉ごしに室内をのぞくと、サー
シャは今まで見たことのないような鋭い「にらみ」をきめ、そのまなざしには
怖さと同時にサーシャの母性を感じました。
サーシャが子育てに専念すると同時に、隣の部屋では父親のレオが体調を崩
していました。レオは、サーシャがいる放飼場に毎朝スキップするように嬉し
そうに出て行っていたので、サーシャとともに過ごせない時間がこたえたのか
もしれません。潜伏していた内臓疾患が急激に悪化してしまったのです。治療
の甲斐なく、2011年11月12日に28歳大往生を遂げました。
・関連ニュース
http://www.tokyo-zoo.net/topic/topics_detail?kind=news&link_num=20513
親子3頭での同居を考えていただけにレオの死は残念でしたが、柵越しに親
子の対面をすることはできました。レオとハーンの間に親子の認識はないでし
ょうが、私には彼らの間で「今後のモウコノウマの発展に貢献するため立派に
跡を継いでくれ」、そしてなにより「サーシャのことをたのむ」という会話が
あったように思えてなりません。
レオとサーシャの仲むつまじい光景はもう見られなくなってしまいましたが、
これからは成長していくハーンとそれを見守るサーシャ、そして今までと変わ
らずおてんばな三姉妹がみなさんの来園をお待ちしています。レオのためにお
花をくださった方々には、この場を借りてお礼申し上げます。
〔多摩動物公園南園飼育展示係 齋藤麻里子〕
------------------------------------------
▼床暖房って暖かい! ワラビー舎の寒さ対策
------------------------------------------
冬の寒さも本格的になり、多摩動物公園も最低気温が氷点下の日が増えてき
ました。ご家庭でも暖房器具を使用する日が増えてきていると思います。
パルマワラビー、ケナガワラルー、ウォンバットを飼育しているワラビー舎
の室内も、2011年12月初めころから暖房器具を稼働させ始めました。
ワラビー舎は古い動物舎ですが床暖房があります。床暖房の上に座る気持ち
よさは格別ですよね? 人と同じく、動物もまた気持ちよいはずです。ただし、
動物舎では室内全面に敷かれているわけではありません。動物が好みの温度を
選べるよう、室内の4分の1程度に敷いています。
ウォンバットの「チューバッカ」も床暖房が大好きで、餌を床暖房以外のと
ころに置くと、足は暖かい場所に置いたまま、首を伸ばして食べているのをよ
く見かけます。
ケナガワラルー舎には床暖房がないため、室内にぶら下げた赤外灯が活躍し
ます。寒い日にはその下で暖まる姿が見られます。とくにオスは、背伸びをし
て赤外灯に手をかかげ、少しでも近づこうと努力しています。
パルマワラビーの室内には床暖房と赤外灯に加えエアコンがありますが、今
年はまだエアコンを使用していません。動物に異状があったときや、子どもが
生まれたときに使おうと考えています。
日中は運動場に出ているので暖房器具はありませんが、動物はもっとよいも
のを知っています。それは太陽の力です。ワラビー舎の運動場はガラスの板で
囲われており、日光がガラスに反射してその付近はとくに暖かく、朝からガラ
ス前で身を寄せて、気持ちよさそうに日光浴をしている姿が見られます。私た
ちも、たまには暖房器具を使わずに日光浴を楽しむのもよいかもしれませんね。
〔多摩動物公園南園飼育展示係 松本泰雄〕
----------------------
▼多摩動物公園の催し物
----------------------
◎サイエンズーカフェ(2012年1月から3月にかけて5回開催)
http://www.tokyo-zoo.net/topic/topics_detail?kind=event&link_num=20558
◎ほっと一息 Tama zoo茶屋(2012年1月2日[月]開催)
http://www.tokyo-zoo.net/topic/topics_detail?kind=event&link_num=20578
■葛西臨海水族園■======================================================
--------------------------
▼ランプフィッシュの婚姻色
--------------------------
葛西臨海水族園世界の海エリア「北海」水槽で展示している「ランプフィッ
シュ」は、北大西洋の冷たい海にくらし、体長約60センチメートルまで成長す
る大型のダンゴウオ科の魚で、別名「ヨコヅナダンゴウオ」と呼ばれています。
ランプフィッシュの体は、ふだんは灰色がかった地味な色をしていますが、
繁殖期を迎えると何匹かは色鮮やかなオレンジ色に変わってきます。オレンジ
色をした個体は成熟が進んできたオスで、このような色合いを婚姻色(こんい
んしょく)と呼びます。
これまでにメスは、水槽のアクリルガラス近くのパイプなどに何回か卵を産
みつけましたが、オスは繁殖期になると、卵を産んでもらいたい場所のまわり
にいることが多く、そこに生えたコケを掃除したり、近づいてくるほかのオス
を追いやったりするなどのなわばり行動を示します。
ところで、ランプフィッシュの卵は、じつは日本でも食用として利用されて
おり、高級食材であるキャビア(チョウザメの卵の塩漬け)の代用品として店
頭に並んでいるのを目にすることがあります。ランプフィッシュの卵は白っぽ
い色をしているので、食材のキャビアに似せるため黒く着色して販売されてい
ます。値段の安いキャビアを見かけたら外箱や瓶底のラベルに「ランプフィッ
シュの卵」と書かれているか探してみてください。
〔葛西臨海水族園飼育展示係 笹沼伸一〕
-------------------------------------------------
▼お正月は水族園で! 1月3日、獅子舞がやってくる
-------------------------------------------------
2012年1月3日(火)、葛西臨海水族園に獅子舞がやってきます!
http://www.tokyo-zoo.net/topic/topics_detail?kind=event&link_num=20577
■井の頭自然文化園■====================================================
----------------------------------
▼ナベヅルの展示場に落ち葉のプール
----------------------------------
井の頭自然文化園分園(水生物園)では、長年ナベヅルをペアで飼育してい
ます。ナベヅルはワシントン条約で最も厳しい規制がかかる附属書Iに分類さ
れ、環境省のレッドデータブックでは絶滅危惧II類(絶滅の危機が増大してい
る種)に分類されている希少種です。
胴体の羽色が黒く、変色した鍋の色に似ていることから「ナベヅル」と名付
けられたと考えられています。日本には越冬のために飛来する渡り鳥で、越冬
地として鹿児島県の出水(いずみ)平野が有名です。また、2010年の鳥インフ
ルエンザ感染種として聞いたことがある方もいらっしゃるかも知れません。
野生では休息している時間以外は餌を探すことに時間を費やしていますが、
飼育しているペアは給餌したものをすぐに食べてしまい、その後は展示場の土
や植栽を掘り返したり、隣の展示場にいるクロヅルにちょっかいを出したり、
時間を持て余しているように見えました。
そこで何か刺激になるものをと考え、冬場限定で落ち葉のプールを作ること
にしました。まず、展示場内の3つの池のうち、砂や小石で埋まっていた、観
覧通路側の小さい池を掘り起こし、水を入れて池として使えるようにしました。
ナベヅルは大変臆病なツルで、担当者である私が中に入っただけで飛び上が
ったり走り回ったりします。新しい池にどんな反応を見せるか不安でしたが、
いつもどおり水を飲むなどの行動が見られたため、心配は杞憂に終わりました。
次に、今まで使っていた池の水を抜いて掃除し、乾いたところに落ち葉を投
入。これで簡易な落ち葉プールが完成しました。落ち葉は園内のものを集めた
のでお金もかかりません。
さっそく大好物のミールワームを入れたところ、くちばしを器用に使い、落
ち葉をかき分けては食べ、また探しては食べるという行動を長々と続けていま
した。地面にまいて与えていたときよりも時間がかかっているように見えます。
今後、落ち葉の種類や量を変え、反応の違いを観察する予定です。
【落ち葉のプールで採餌するナベヅルの動画】
(上:Windows Media形式 下:QuickTime形式)
http://www.tokyo-zoo.net/news/temp/2011_12/hooded_crane.wmv
http://www.tokyo-zoo.net/news/temp/2011_12/hooded_crane.mov
〔井の頭自然文化園水生物館飼育展示係 川手美咲〕
----------------------------------------------------------
▼文化園いきものクラブ第8回「げっ歯類に大接近」参加者募集
----------------------------------------------------------
「文化園いきものクラブ」は、毎月違うテーマのもと、動物解説員といっし
ょに飼育動物や園内の自然を観察する催し物。年に10回開催します。
2012年1月9日(月)のテーマは「げっ歯類に大接近」。モルモットや、1
月2日オープンの特設展「Wonder Hut Returns どうぶつのふしぎがいっぱい」
に登場するマウスなど、家畜になったげっ歯類を室内で観察し、カピバラやマ
ーラなど、飼育されている野生のげっ歯類も見に行きます。
日時 2012年1月9日(月)午前9時30分~正午
定員 30名程度(小学生と同伴希望の保護者)
※応募方法は、こちら↓のお知らせをごらんください。先着順です!
http://www.tokyo-zoo.net/topic/topics_detail?kind=event&link_num=20573
■ B O O K S ■=========================================================
『フクロウ──その歴史・文化・生態』
デズモンド・モリス著、伊達淳訳、白水社、2011年12月10日刊
本体2,600円、ISBN978-4-560-08181-5
少年のころ、致命傷を負ったフクロウに野原で出会い、自らの手でその苦し
みを終わらせたと書く著者は、序文でこう語っています──「この本を書こう
と思ったのは、あの時の傷ついたフクロウに対する償いの気持ちによるところ
が大きいように思う」。
人間に似て両目が前を向いているせいか、よく知っている動物のようでいて、
夜行性であるため実物を見ることは非常に少ない動物であるフクロウ。著者は
地下洞窟の壁画から有史以前のフクロウを語り、世界各国の像や陶磁器や神話
から古代のフクロウに迫り、知恵の象徴、魔術的な存在、死を予告する鳥など、
人類のフクロウ観を浮き彫りにしています。
聖書やシェイクスピア作品に見られる不吉の象徴としてのフクロウ。インド
では怠惰の象徴とされるものの、時代が下って今日、フクロウは親しみやすく
て賢い鳥という捉え方が一般的になったことが詳述されています。
その他、各種エンブレムに採用されたフクロウや文学作品の中のフクロウ、
そして絵画の中のフクロウが紹介され、その多義的なフクロウ像がつぎつぎと
明らかになります。ボス、デューラー、ミケランジェロ、ゴヤ、ピカソ、マグ
リット、その他の現代芸術家などの作品がカラーで掲載されています。
その後で生物学的な記述が登場し、夜行性、特徴的な目、狩り、ペリット、
他の鳥から受けるモビング(擬攻)、鳴き声などの生態とともに、フクロウの
最大種ワシミミズクと、最小種サボテンフクロウ(サボテンに営巣)が紹介さ
れています。
『マン・ウォッチング』など、動物学的な観点から人間について論じた著書
や、ペットなど人間とともにくらす動物の習性を描いた著書で知られるデズモ
ンド・モリス氏としては、文化的観点が中心とはいえ、フクロウという野生動
物をテーマとした異色の一冊。
・白水社 http://www.hakusuisha.co.jp/ の書籍紹介ページ
http://www.hakusuisha.co.jp/detail/index.php?pro_id=08181
----------------------
N E W S C L I P S
----------------------
●仙台市八木山動物園にジャイアントパンダ貸与(河北新聞)
http://www.kahoku.co.jp/news/2011/12/20111223t11007.htm
●3.5億円の寄付、ジャイアントパンダ保護研究──米ワシントン国立動物園
http://www.xinhua.jp/socioeconomy/politics_economics_society/287510/
(毎日中国経済)
●ナショナルジオグラフィックのフォトコンテスト自然部門1位は……昆虫
人、場所、自然の3部門の総合グランプリ。
http://ngm.nationalgeographic.com/ngm/photo-contest/2011/entries/gallery/nature-winners/
========================================================================
▽本文中にしめしたリンクによって表示されるページには、ほかのページへの移
動リンクが含まれていない場合があります。とくに東京ズーネットの「どうぶ
つ図鑑」のばあい、完全なかたちで表示するためには、図鑑のトップページ
http://www.tokyo-zoo.net/encyclopedia/ から検索してください。
▽ズー・エクスプレスでは、みなさんからのおたよりを募集しています。匿名や
ペンネーム希望の方はその旨をおつたえください。 webmaster@tokyo-zoo.net
まで。ご意見・ご要望・お問い合わせもこのアドレスまでどうぞ。
▽メール配信先変更、配信停止は下記URLにてお願いいたします。配信先の変
更をご希望の方は、いったん解除をおこない、あらためて新アドレスを登録し
てください。 http://www.tokyo-zoo.net/express/
▽編集後記
◎個体識別のために付けられる動物の名前には、親から一字をもらったり、ア
ルファベット順だったり、原産地の風物や言語に因んだり、とさまざまな工
夫が。マダガスカル語の住人ばかりだった上野のアイアイたちにアメリカの
映画監督が仲間入りで、これはちょっとユニーク(意味が違う?)。(萩埜)
○正気に返ったかどうか気づくまもなく本年最終号。お正月は1月2日から開
園します。年末年始の開園日や新年イベントはこちら↓をぜひ。
http://www.tokyo-zoo.net/topic/topics_detail?kind=news&link_num=20532
次号No.569の配信は年が明けて1月6日の予定ですが、東京ズーネットBBの
動画は本年中に公開します。今年一年間、ありがとうございました。では、
心静かに送信ボタンを押下(あ、まだ校正してなかった)。よいお年をお迎
えください。 (大平)
========================================================================
メールマガジン ZooExpress No.568 - 2011年12月23日
公益財団法人 東京動物園協会
110-0007 台東区上野公園9-83 上野動物園内
電話 03-3828-8235 FAX 03-3828-8237
e-mail: webmaster@tokyo-zoo.net
URL : http://www.tokyo-zoo.net/ 東京ズーネット
携帯サイト: http://www.tokyo-zoo.net/ (PC版と同じです)
(c)2011 Tokyo Zoological Park Society
|
 |