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 Z o o E x p r e s s ■ ズー・エクスプレス ■ No.440 - 2009年07月03日

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・都立動物園の最新情報をお届けするメールマガジン「ズー・エクスプレス」

・まあ、騙されたと思って軽くクリック→ http://www.tokyo-zoo.net/movie/
 スパムではありません。断じて否! 動画まもなく計500点!

・東京動物園友の会に入会しませんか? 年会費は、 2,000円。機関誌「どうぶ
 つと動物園」を年4冊お届けします。入会・継続の手続きは、クレジットカー
 ド&オンラインでもOK! → http://www.tokyo-zoo.net/member/

■目次■----------------------------------------------------------------

 ・東京ズーネットBB
   └─6月の動画はマダガスカルの動物+カイツブリ!

 ・上野動物園
   ├─木曽馬「幸泉号」帰還、お腹には赤ちゃん
   ├─ニホンモモンガの繁殖
   ├─セバタンビヘラコウモリ、子育て中!
   └─両生爬虫類館でホオアカオナガゴシキドリ繁殖

 ・多摩動物公園
   ├─感謝をこめて──あるキリンの「死」
   ├─ヤエヤマサソリの子育て
   └─7月の観察デーは、シフゾウを観察

 ・葛西臨海水族園
   └─ワレカラってなに?

 ・井の頭自然文化園
   └─大きくなったカイツブリのひな

 ・書籍紹介──菱川晶子著『狼の民俗学──人獣交渉史の研究』

■東京ズーネットBB■====================================================

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 ▼6月の動画はマダガスカルの動物+カイツブリ!
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  「東京ズーネットBB」は、動画でおつたえする動物園ニュース。「東京ズー
 ネット」 http://www.tokyo-zoo.net/ のトップページから、「TokyoZooNetBB」
 をクリックしてください。

 ◎うごく!どうぶつ図鑑

 【ワオキツネザル】──────────────────────────

  上野動物園「アイアイのすむ森」の一角。水上の吊り橋を渡っています。
   http://www.tokyo-zoo.net/movie/mov_book/0906_01/index.html

 【クロシロエリマキキツネザル】────────────────────

  「アイアイのすむ森」で展示中。キツネザル類では最大級の種類です。
   http://www.tokyo-zoo.net/movie/mov_book/0906_02/index.html

 【ブラウンキツネザル】────────────────────────

  やはり「アイアイのすむ森」のキツネザル。食べる行動にも注目。
   http://www.tokyo-zoo.net/movie/mov_book/0906_03/index.html

 【パーソンカメレオンとホウシャガメ】─────────────────

  カメレオンの舌がえさを捕らえる瞬間を激写! 地面にはホウシャガメ。
   http://www.tokyo-zoo.net/movie/mov_book/0906_04/index.html

 【マダガスカルトキの人工育雛】────────────────────

  上野動物園の水禽舎で4羽が孵化。人工育雛中。給餌は注射器状の器具で。
   http://www.tokyo-zoo.net/movie/mov_book/0906_05/index.html

 ◎動物園よりおしらせ

 【カイツブリのひな、成長中】─────────────────────

  井の頭自然文化園でカイツブリ誕生! 親の背に乗ってます。
   http://www.tokyo-zoo.net/movie/information/0906_01/index.html

 ※「東京ズーネット」のモバイルサイトでも、動画を公開しています(約30
  秒)。動画再生対応機種でごらんください。アクセス先は、パソコン版と
  同じく、 http://www.tokyo-zoo.net/  です!

■上野動物園■==========================================================

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 ▼木曽馬「幸泉号」帰還、お腹には赤ちゃん
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  2009年4月22日から約2か月間、上野動物園子ども動物園の木曽馬「幸泉号」
 (さちいずみごう)が、生まれ故郷である長野県の「木曽馬の里」に里帰りし
 ていました。繁殖を目指した移動です。

 ・ニュース「木曽馬の「幸泉号」、長野に約1か月移動」(2009年04月20日)
   http://www.tokyo-zoo.net/topic/topics_detail?kind=news&link_num=11330

  ひさびさの里帰りだったため、「他のウマとうまくやっているかな?」「元
 気でやっているかな?」と心配していましたが、近況報告として送られてきた
 写真には、元気よくなかまたちと放牧地を走り回っているすがたが写っていま
 した。どうやらいらぬ心配だったようです。

  そして繁殖にも成功! 6月中旬、妊娠鑑定をおこなった結果、妊娠が判明
 しました。その際、胎児の心音まで聞こえたそうです。晴れてお母さんになっ
 た幸泉号は6月24日、上野動物園に帰ってきました。写真はこちら↓をどうぞ。
  http://www.tokyo-zoo.net/topic/topics_detail?kind=news&link_num=11937

  ひさしぶりの動物園の風景や匂いに戸惑い、「馬運車」(ばうんしゃ=ウマ
 を輸送する車)から降りるのをためらっていた幸泉でしたが、しばらくすると
 動き始め、車から降りて歩き出し、以前と同じ寝室に入りました。

  初めのうちは心細いのか、人が通るたびにこちらを見ては大きくいななき、
 落ち着かないようすです。夕方、大の仲好しだった野間馬の「えりか」が隣の
 部屋に戻ってくると、幸泉号も安心してえさを食べ始めました。健康診断で異
 状がないことも確認され、6月30日以降、在来馬の運動場で幸泉号、えりか、
 そしてトカラ馬の「琥太郎」の3頭をいっしょに展示しています。

  2か月ぶりに再会したウマたちですが、おぼえているものですね。あいかわ
 らず野間馬のえりかは幸泉号にべったりで、いつも幸泉号について歩きます。
 トカラ馬の琥太郎は幸泉号によく怒られています。幸泉号が里帰りしているあ
 いだは琥太郎の天下だったのですが、やはり幸泉号にはかなわないようで、わ
 が物顔だった琥太郎も小さくなっています。なんだか、なつかしい風景に一安
 心しました。

  余談ですが、動物園に戻ってきて体重を測ったところ、なんと13キログラム
 もやせていました。広い放牧場でなかまたちと走り回ったのがよかったのでし
 ょうか……。少し太り気味の幸泉号にはいいダイエットになったようです。

  順調にいけば来春には木曽馬幸泉号の仔馬が誕生すると思います。母となっ
 た幸泉号、そして、えりかと琥太郎──在来馬3頭のほほえましいすがたを子
 ども動物園でごらんください。
                  〔上野動物園子ども動物園係 橋川真弓〕

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 ▼ニホンモモンガの繁殖
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  上野動物園の小獣館では、ニホンモモンガはずっとオス1頭しか飼育してい
 ませんでした。しかし昨年(2008年)、富山市ファミリーパークで生まれたメ
 ス2頭が来園し、オスと同居させたところ、メス2頭が1頭ずつ赤ちゃんを産
 みました。

  飼育下のモモンガは屋外なら繁殖が見られるのですが、室内ではなかなか繁
 殖しません。日本にすむ野生動物の多くは、発情するためには日長の変化と冬
 の低温が必要だといわれており、室内飼育での繁殖は思ったほど成績がよくあ
 りません。

  小獣館では日長を四季にあわせて調整していますが、お客さんがいるスペー
 スと動物がいるスペースを含め、館全体で一つの冷暖房システムしかないため、
 夏と冬の温度差は5℃ぐらいにしかできず、冬でも15℃ぐらいまでしか下げら
 れません。

  昨年の同居後、餌だけでも季節的な変化をあたえて野生に近づけようと考え、
 冬場の1日分のえさとして、麻の実、ヒマワリの種、ハト用のえさを合計3グ
 ラムほど用意し、これに小指の先ほどのリンゴ、そして葉のついていない冬場
 のヤナギの枝を与えました。ヤナギの枝は、翌日には樹皮をすべて食いつくす
 ほどでした。フンも、野外でよく見るノウサギやムササビのフンのように、乾
 燥して色がうすく、繊維をたっぷり含んだものになっていました。

  2009年2月2日、オスの前でメスが尾を上げて受け入れ態勢をとる行動が見
 られ、交尾も確認できました。ただし、その3日後、オスが同じメスに近づく
 と激しく追われていました。2月23日には、もう1頭のメスにも追い払われて
 いるところを目撃しました。

  メス2頭は2月19日と4月2日以降、それぞれの巣箱から出なくなりました。
 出産があったと推測されます。巣箱から「チュリチュリチュリ」という小鳥の
 鳴き声のような音も聞こえました。上野動物園では、1969年に屋外施設でモモ
 ンガ繁殖の記録がありましたが、それ以来の誕生です。

  5月上旬、赤ちゃんが巣箱から出てきましたが、すでに親と区別がつかない
 ほどの大きさに育っていました。ふつうは1頭が2~6頭を産むようですが、
 出てきた赤ちゃんは母親1頭につき1頭ずつでした。6月15日に子を捕獲して
 性別を確認したところオスとメスで、体重は118グラムと140グラムでした。写
 真はこちら↓のニュースページをごらんください。
  http://www.tokyo-zoo.net/topic/topics_detail?kind=news&link_num=11936

  今回の出産はたまたま成功に結びついた可能性もありますので、今後継続し
 て繁殖するかが大きなポイントです。

                  〔上野動物園西園飼育展示係 細田孝久〕

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 ▼セバタンビヘラコウモリ、子育て中!
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  上野動物園の西園エリアの一角に位置する小獣館、その地下ではさまざまな
 夜行性の哺乳類を飼育しています。先月と先々月、フクロモモンガとフサオネ
 ズミカンガルーの繁殖をお伝えしましたが、その隣の小部屋でセバタンビヘラ
 コウモリが子育て中です。

 ・セバタンビヘラコウモリ来園のニュース(2003年03月31日)
   http://www.tokyo-zoo.net/topic/topics_detail?kind=news&link_num=300

 ・セバタンビヘラコウモリがジュースを飲むようす(動画、2003年03月)
   http://www.tokyo-zoo.net/movie/mov_book/0303_02/index.html

  飼育室内は暗くて見えづらいのですが、ここでも子どもが生まれ、現在子育
 て中です。セバタンビヘラコウモリ成獣の耳は、コウモリの一般的なイメージ
 のとおり先がとがっていますが、子どものときは丸みを帯びた形をしています。

  生まれてからまだ間もない小さい子どもは、母親のお腹にしっかりとしがみ
 つきます。そして、母親は子どもをお腹につけたまま飛び回ります。いくら子
 どもが軽いとはいえ、かなりの飛翔能力です。写真はこちら↓
  http://www.tokyo-zoo.net/topic/topics_detail?kind=news&link_num=11935

  しかし先日、餌容器の下の地面に子どもが落ちているのを発見しました。母
 親がえさを食べるのに夢中になっているうちに、子どもはえさか何かにひっか
 かり、落ちてしまったようです。ガラスごしに観察していると、子どもはしき
 りに耳を動かしてあたりのようすを探っています。ガラスで隔てられているの
 で声は聞こえませんが、どうやら母親を呼んでいるようです。心配でしたが、
 しばらくすると母親が降りてきて、子どもをお腹にしがみつかせて飛んでいき
 ました。やれやれ、ひと安心です。

  もう少し子どもが大きくなると、母親は子どもを天井や枝に置いて出かけま
 す。こうなると親離れももうすぐです。

  暗いので観察しづらいかもしれませんが、子どもがときどきひとりで天井か
 らぶら下がっていることもあります。よ~く目をこらしてごらんください。

                  〔上野動物園西園飼育展示係 井上智右〕

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 ▼両生爬虫類館でホオアカオナガゴシキドリ繁殖
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  上野動物園の両生爬虫類館(ビバリウム)でも鳥を飼育しているのをごぞん
 じでしょうか?広い温室の有効活用(?)のため、しばらく前までは5種類、
 現在は6種類の鳥類を飼育しています。

 ・ニュース:両生爬虫類館の温室内には(2004年12月03日)
   http://www.tokyo-zoo.net/topic/topics_detail?kind=news&link_num=2031

  1種類増やしたのには理由があります。両生爬虫類館内は一年中あたたかく、
 ゴキブリの宝庫。捕っても捕ってもまだ捕れるという状況で、夏の開園時間延
 長の際には、このゴキブリのおかげでお客さんから不評をかっていました。ゴ
 キブリ退治をまかされた私が一生懸命退治しても、やっと少し減ったかな?と
 いう程度です。

  思案にくれていると、「ホオアカオナガゴシキドリがいいよ」とアドバイス
 がありました。そこで、東園のバードハウスにいた2羽を6種類目の鳥として
 温室内に放したところ、さっそく2羽でせっせと捕るわ捕るわ……。あっとい
 う間に館内でゴキブリを見かけなくなりました。

  そんなある日のこと。いつものようにえさを置いてしばらくすると、ホオア
 カオナガゴシキドリがやってきました。「1羽、2羽、3羽……。あれ? も
 う一度、1羽、2羽、3羽? ゴシキドリって2羽じゃなかったっけ?」。近
 くの同僚にも確認してもらいましたが、たしかに3羽いる。そうです。いつの
 間にか1羽が繁殖したのでした。

  繁殖確認後、当初は3羽でえさを食べに来て、ひなに給餌するようすもとき
 には見られましたが、最近は別々に餌場にやって来ます。とはいえ、ふだんは
 3羽いっしょに行動しています。両生爬虫類館の温室のゴシキドリ一家にぜひ
 会いに来てください。お待ちしています。

            〔上野動物園は虫類館飼育展示係 降籏眞夫・山口歩〕

■多摩動物公園■========================================================

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 ▼感謝をこめて──あるキリンの「死」
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  梅雨入りを予感させる、やんわりとした小雨の降る2009年6月6日の朝、キ
 リンのメス「ナエ」が静かに息を引き取りました。約24年5か月の生涯でした。
 ナエの写真はこちら↓のニュースページをごらんください。
  http://www.tokyo-zoo.net/topic/topics_detail?kind=news&link_num=11933

  「キリンの寿命はどのくらいですか?」という質問をよく受けますが、「飼
 育下では20~25年です」とお答えしています。まさにナエは寿命をまっとうし
 たのです。

  私が初めてナエと出会ったのは、8年前。ナエは16歳でした。少し老いが見
 え始めたころでしたが、それでも健康そうで体の立派な大人のキリンでした。
 それでも当時の群れにはナエより年上の個体が3頭いて、体格もナエより大き
 かったため、ナエはあまり目立たない存在でした。それでも、ナエの右肩にあ
 る大きなキズのおかげで、すぐに見分けられたのをよく覚えています。

  ナエはとても穏やかな性格だったので、常に群れの安定に貢献してくれまし
 た。また、新しい個体が来園して群れに入るまで、ナエを仮母として同居させ
 ることで、群れとの橋渡し役として活躍してもらいました。

  キリンは群れで生活する動物ですから、1頭だけになると不安定になること
 があります。そういうときに同居させる個体を群れの中から選ぶのですが、ど
 の個体でもいいわけではなく、落ち着きのある個体を選ばなくてはなりません。
 ナエは適役でした。

  話は少し戻りますが、先輩キリン3頭が死亡し、ナエが20歳になる前の2004
 年の5月ごろから歩き方がぎこちなくなり、徐々に跛行を繰り返すようになり
 ました。昨年(2008年)8月ごろからずっと跛行の状態が続き、今年の5月に
 入ると歩くのをいやがり、群れから離れた場所で動かずに過ごす時間が増えま
 した。最後の1週間ほどは歩くことも座ることもままならぬ状態で、えさもほ
 とんど食べない状況が続き、最後は力尽きるようにして倒れ、苦しむことなく、
 そのまま息を引き取りました。

  多摩動物公園のアフリカ園サバンナでは、今まで 180頭以上のキリンを飼育
 してきました。その中で最長寿の個体は、29歳10か月で生きたナエの母親「ナ
 ガエ」です。母親に恥じぬほど長生きしたナエと過ごすことができた8年間に
 感謝しつつ、安らかに眠ってくれることを願っています。

〔多摩動物公園北園飼育展示係 清水勲〕

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 ▼ヤエヤマサソリの子育て
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  多摩動物公園昆虫園にある南西諸島の生き物コーナーでは、ヤエヤマサソリ
 を飼育・展示しています。ヤエヤマサソリは体長約3~4センチと小さく、そ
 の名のとおり、八重山諸島や宮古諸島に生息するサソリです。

  2009年6月30日の朝、展示ケース内のサソリに目をやると、小さなサソリの
 背中の上にさらに小さなサソリが乗っかっていました。夜のうちに子どもを産
 んでいたようです。生まれたばかりのサソリの子どもたちは真っ白で、14~15
 匹ほどが確認できました。写真はこちら↓のページをごらんください。
  http://www.tokyo-zoo.net/topic/topics_detail?kind=news&link_num=11932

  ヤエヤマサソリは単為生殖(未受精卵から個体が発生すること。オスが一切
 知られていなかったり、少数しかいなかったりする種類もあります)をおこな
 い、生まれた幼体は1回目の脱皮を終えるまでは母サソリの背の上で守られな
 がら育ち、その後は背から降りて、親と同じようにハサミと毒針で小さな昆虫
 などを捕らえます。

  誕生後、子サソリが親の背から独り立ちするまで1週間ほどです。背から降
 りると、親にえさと間違われて食べられてしまうことがあります。この大きな
 危険から子サソリを守るため、独り立ちのタイミングを逃さぬよう救出した後
 は、飼育係が子育てを引き継ぐことになりそうです。

               〔多摩動物公園昆虫園飼育展示係 牧村さよ子〕

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 ▼7月の観察デーは、シフゾウを観察
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  毎月第3土曜日に開催している多摩動物公園の「観察デー」。動物解説員と
 ともに、動物をじっくり観察します。

  今年(2009年)4月から、観察時間や集合場所が毎回変わっています。いろ
 いろな時間の動物を観察し、観察を深めていく楽しみを味わいましょう。観察
 シートも動物舎の前で配布しますので、動物舎の前に直接お越しください。

  今月の観察デーは2009年7月18日(土)午後3時からおこないます。今回は、
 シフゾウを観察。昼は座って反芻しているだけのことが多いシフゾウですが、
 夕方は比較的よく動きます。とくに7月は繁殖期ですので、いつもとは異なる
 しぐさも見ることができます。「しぐさシート」を使って、シフゾウのいろい
 ろな行動を観察してみましょう。

  参加ご希望の方は、午後3時にシフゾウの前にお越しください。動物解説員
 のサポート時間は、シフゾウが寝部屋に入る午後4時くらいまでです。

 ※観察デーと観察シートについて詳しく知りたい方は、こちら↓をどうぞ。
   http://www.tokyo-zoo.net/topic/topics_detail?kind=event&link_num=11310

■葛西臨海水族園■======================================================

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 ▼ワレカラってなに?
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  「ワレカラ」と聞いても、知らない方には何のことか想像もつかないと思い
 ます。ワレカラは、海の中で海藻や海草などの上でくらしている小さな「虫」。
 分類上は甲殻類端脚目に属します。甲殻類であるエビやカニの親戚です。

  現在、葛西臨海水族園で展示しているのは「オオワレカラ」。ワレカラはた
 くさんの種類が知られていますが、大きくなっても体長1~2センチがふつう
 なのに、この種類は最大で6センチにもなります。そのため「オオ」ワレカラ
 と名づけられました。体は細長く、陸でくらす昆虫のナナフシにちょっと似て
 います。写真はこちら↓のページをどうぞ。
  http://www.tokyo-zoo.net/topic/topics_detail?kind=news&link_num=11931

  展示している場所は、葛西臨海水族園「東京の海」エリアの2階中央付近に
 ある「アマモ場の小さな生き物たち」小水槽です。水槽の前に立って、この隠
 れ上手な生き物を探してみましょう。体の後半にある「歩脚」とよばれる脚で
 しっかりアマモの葉にしがみつき、体の前方の「顎脚」でぴったり葉にくっつ
 いているので、動かずじっとしていると、どこにいるのかほとんどわかりませ
 ん。

  でも、食事のときはすぐに居場所がわかってしまいます。オキアミなど細か
 くつぶしてミンチにしたえさをほんの少し与えると、においを感じるのか、水
 槽中のオオワレカラがいっせいに動き始めます。歩脚は葉をつかんだまま、体
 の全体を前後に大きく振り、大きな顎脚を両腕のように開いて食物をつかもう
 とします。移動するときは、行く先を顎脚でつかみ、体をシャクトリムシのよ
 うに動かします。

  オオワレカラのメスの腹部には「育児嚢」があります。育児嚢の中で孵化し
 た子どもたちは、しばらくは母親にしがみついてくらします。

  昔の日本人にとって、ワレカラのなかまは身近な生き物だったらしく、和歌
 にもよく詠まれています。これは、アマモなどの海草が食塩をつくるための藻
 塩草として日本中で日常的に使われていたため、海草といっしょにワレカラも
 火に焼かれ、その体の殻がはじけるのを目にしていたためでしょう。

  こうして「殻が割れる」ことから「割れ殻」(ワレカラ)と呼ばれ、それと
 同時に、「我から」(=自分から)という言葉との掛け詞(かけことば)にな
 るため、和歌などによく使われたようです。

  恋ひわびぬ 海人の刈る藻に 宿るてふ われから身をも 砕きつるかな
                               (伊勢物語)

 ・過去のニュース「“われから”ワレカラを見てみよう!」
   http://www.tokyo-zoo.net/topic/topics_detail?kind=news&link_num=9916

                 〔葛西臨海水族園飼育展示係 江川紳一郎〕

■井の頭自然文化園■====================================================

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 ▼大きくなったカイツブリのひな
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  井の頭自然文化園水生物館では、2009年5月22日から30日にかけてカイツブ
 リが6卵を産み、6月13日から20日にかけて5羽のひなが孵りました。最初に
 孵ったひなは残念ながら翌日死亡し、最後に残った1卵は孵化しませんでした
 が、4羽のひなが元気に育っています。

 ・ニュース「カイツブリのひなが親鳥の背中から顔を出しました」(2009年06月23日)
   http://www.tokyo-zoo.net/topic/topics_detail?kind=news&link_num=11790

 ・ニュース「カイツブリのひなの成長」(2009年06月26日)
  http://www.tokyo-zoo.net/topic/topics_detail?kind=news&link_num=11850

 ・動画「カイツブリのひな、成長中」(2009年06月18日撮影)
   http://www.tokyo-zoo.net/movie/information/0906_01/index.html

  カイツブリの子育ての大きな特徴のひとつは、ひなが親鳥の背中に入って過
 ごすことですが、最近、ひなは水面で泳いでいるか、巣の上にいることが多く、
 親の背中に入っている時間はかなり少なくなりました。そのかわり、いつでも
 ひなのすがたを見ることができます。

  じつは、ひなたちは今でも親鳥の背中によく入ろうとしています。しかし、
 親鳥はひなたちが背中に乗ってくるのを、以前のように積極的に受け入れよう
 としません。ひなが大きくなってきたので、親鳥の背中に入りきらなくなって
 きているのも事実です。

  ひなは潜水のしかたが徐々にうまくなってきました。水中をよく見ていて、
 弱った小魚(モツゴ)を潜って捕まえることもあります。孵化してからまだ12
 ~17日しか経っていませんが(2009年7月2日現在)、いろいろなしぐさがお
 となっぽくなってきました。鳥の成長はものすごく早いものだと感心する毎日
 です。背中から顔を出すひなが見られるのは、もうあとわずかな期間だと思い
 ます。

              〔井の頭自然文化園水生物館飼育展示係 荒井寛〕

 ・親の背中に乗ったひなの写真はこちら↓(でも下半身がはみ出ています……)
   http://www.tokyo-zoo.net/topic/topics_detail?kind=news&link_num=11930

■ B O O K S ■=========================================================

 『狼の民俗学──人獣交渉史の研究』

               菱川晶子、東京大学出版会、2009年03月25日刊
                   本体7,200円、ISBN978-4-13-056305-5

  日本における狼と人との関わりを明らかにするために、口承文芸に限らず、
 さまざまな民俗や生活、信仰などにも視野を広げ、文献やフィールドワークを
 通じて動物観を多層的に描き出した力作。

  第1章は、意外なことに「虎」に関する古い説話から始まります。仏典など
 からの移入にともない、民俗上の動物相も多様化し、そこに狼が出現。また、
 中国や朝鮮半島から渡来した狼の民俗が、上層階級では虎、一般民衆では狼の
 民俗へと変容することが示されています。

  ここから、民間説話の類型として「狼報恩譚」「送り狼」「狼の眉毛」が取
 り上げられ、そのバリエーションが紹介されるとともに、人の「狼への眼差し」
 が浮き彫りにされていきます。狼から恩恵を受けたときは「狼の好む塩を与え
 る必要がある」という伝承は、他の動物には見られない特徴であり、それが発
 生した由来を、著者は狼の生態に求めています。

  次章では、狼に対する認識を名称(「狼」「山犬」など)から考察し、最終
 章では岩手県と群馬県の民俗儀礼を取り上げ、人と狼の関わりを明らかにして
 いきます。とくに後者については、小豆飯や赤飯を狼の出産時にそなえる産見
 舞が、従来言われてきた「狼の害を防ぐ」目的だけでなく、子を守る狼の行動
 から「産育神としての狼」という認識が基底にあったのだと結んでいます。狼
 がただ懼れるだけの対象ではないことが示されたとき、図と地が反転するよう
 な印象を読者は抱くのではないでしょうか。

  日本人の目の前からすがたを消し、また、忘れ去られようとしている狼。そ
 の狼と人がどのようなかかわりをもち、狼にどのようなイメージを抱き、そこ
 からどのような文化が生まれてきたか、その豊かな世界を丹念に掘り起こした
 書物です。

 ・東京大学出版会 http://www.utp.or.jp/ の書籍紹介ページ
   http://www.utp.or.jp/bd/978-4-13-056305-5.html

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  N E W S  C L I P S
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●天王寺動物園で野間馬の展示が始まりました(毎日)
http://mainichi.jp/area/osaka/news/20090702ddlk27040394000c.html

●「NatureArt動物・植物画展」開催、2009年7月8日~14日

動植物細密画の展示会。今年も丸善丸の内本店で開催されます。おなじみ陶芸家
の麦畑耕生も出品。くわしくは丸善のサイト↓
http://www.maruzen.co.jp/Blog/Blog/maruzen02/P/7054.aspx
と麦畑さんのブログ↓
http://k-batta.blog.so-net.ne.jp/2009-06-22-1
をごらんください。

●上野動物園で働く「京成パンダ」? 不思議なコママンガです。
http://www.keiseicard.jp/ecoShugyo2/index.html

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▽本文中にしめしたリンクによって表示されるページには、ほかのページへの移
 動リンクが含まれていない場合があります。とくに東京ズーネットの「どうぶ
 つ図鑑」のばあい、完全なかたちで表示するためには、図鑑のトップページ
  http://www.tokyo-zoo.net/search/ から検索してください。

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▽編集後記

 ・以前ご紹介した写真絵本『ほんとのおおきさ動物園』の英語版が、アメリカ
  の The Parents'' Choice Awards 2009のノンフィクション部門で金賞を受賞!
   http://www.parents-choice.org/product.cfm?product_id=26229&StepNum=1
  をを! http://kassinikki.jugem.jp/?eid=437 ををを! おめでとうござい
  ます。

 ・キツネザルが! カメレオンが! マダガスカルトキが! などと叫びなが
  らURL引用→ http://www.tokyo-zoo.net/movie/ 。中身は充実。まずは動画
  ページへゴー。                        (大平)

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メールマガジン ZooExpress No.440 - 2009年07月03日
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