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Z o o E x p r e s s ■ ズー・エクスプレス ■ No.364 - 2008年02月09日
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・都立動物園の最新情報をお届けするメールマガジン「ズー・エクスプレス」
・雪の日のヒツジたちが口にしたもの、それは……。
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ぶつと動物園」を年4冊お届けします。入会・継続の手続きは、クレジット
カード&オンラインでもOK! → http://www.tokyo-zoo.net/member/
■目次■----------------------------------------------------------------
・上野動物園
├─雪が好きなヒツジたち
└─クマの冬眠ブース、直接観察できるようになりました
・多摩動物公園
├─母親のお腹を登るカンガルーの赤ちゃんを目撃!
└─幼虫から成虫まで観察できる昆虫生態園の冬
・葛西臨海水族園
├─テングダイと私
└─ペンギン、空を飛ぶ!
……インドネシアに旅立ったフンボルトペンギンたち
・書籍紹介──加藤学監修・川添宣広著
『爬虫類・両生類飼育ガイド カメレオン』
■上野動物園■==========================================================
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▼雪が好きなヒツジたち
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2008年2月3日の日曜日、上野動物園子ども動物園のなかよし広場にもたく
さんの雪がつもりました。水が大きらいなヤギたちは、雨の日と同様、屋根の
下から出てこようとしません。
でも、ヒツジたちはちがいます。真っ白の毛に真っ白の雪をつもらせながら、
広場をウロウロ。あまり雪を気にしていないようでした。
寒さには強いヤギやヒツジですが、東京としてはかなりの雪となったこの日、
お客さんも少ないので少し早めに寝小屋に入れました。
そして次の日の休園日。天気は快晴です。朝、寝小屋をあけると、みんな広
場にある餌にまっしぐら! ですが、広場は昨日の雪が凍ってツルツルです。
なにも知らずに広場に出たヤギは、すべって転んでしまいました。それを見た
うしろに続くヤギたちは慎重に歩いていましたが、太り気味のヤギはツルッと
すべってしまいます。身軽な子ヤギたちは、餌めがけてピョンピョン跳ねて走
ってもへっちゃらです。ヤギたちは、餌を食べているあいだもツルツルとすべ
っていました。
餌を食べ終えたヒツジたちが向かった先は、つもった雪でした。めずらしそ
うに匂いをかいでパクリ。まわりにいたヤギやミニブタも雪をかじっています。
冷たいし、味はないはずなのに、おいしいのかな~?と担当者には疑問が残
りましたが、動物たちはこの季節でしか味わえない雪を楽しんでいるようでし
た。とくにヒツジたちは雪が好きなようで、数日たっても残っている雪の山を
ペロペロなめるすがたが見られました。
もしかすると明日(2月9日土曜日)にも雪が降るかもしれません。子ども
動物園の動物たちの反応を観察してみてください。
〔上野動物園子ども動物園係 高橋美紀〕
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▼クマの冬眠ブース、直接観察できるようになりました
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上野動物園では、ツキノワグマの冬眠展示に挑戦中! ニュースでお知らせ
したとおり↓、メスの「クー」が冬眠状態に入っています。
・ニュース「今年もツキノワグマが冬眠状態に!」
http://www.tokyo-zoo.net/topic/topics_detail?kind=news&link_num=8156
冬眠ブースの中が観察できる「のぞき穴」はこれまで閉じたままでしたが、
2008年2月5日(火)、来園者の方も冬眠のようすが見られるよう、のぞき穴
が利用できるようにしました(クーの状態によっては、のぞき穴を閉じている
こともあります)。
現在、冬眠ブース内の照明はいちばん低いレベルに設定しているため、中は
かなり暗くなっています。外からのぞくと、最初はまっくらで何も見えません。
今後、もう一段階、照明を明るくする予定ですが、クーのようすを見ながら試
しますので、明るくする時期は未定です。
中をのぞいて30秒~1分ぐらいじっと見ていると、だんだん目がなれてきて、
寝ているクーの輪郭が、ぼんやりながらわかるようになります。
2月5日に私が行ったときは、たまたまクーが起きていて、立ち上がって寝
わらを持ちあげたり、ごそごそ動いたりしてました。のぞき穴から見ると、月
の輪の白い模様がはっきり見え、クーの動きもよく観察できました。
モニター画面で見るのとちがって、直接観察すると、「動物がそこにいる」
という臨場感があります。お客さんのようすを見ていると、「真っ暗だよ~、
いないよ~」と言いながら、すぐ立ち去ってしまうので、観察のための案内板
をつける予定です。
〔上野動物園教育普及係 杉本啓子〕
■多摩動物公園■========================================================
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▼母親のお腹を登るカンガルーの赤ちゃんを目撃!
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多摩動物公園にはアカカンガルーを群れで飼育しています。2008年1月19日
の夕方、なかなか観察することができないカンガルーの出産に立ち会うことが
できました!
この日、いつもより少し遅い16時30分ごろ、カンガルーたちを収容するため
に動物舎の扉を開けました。しかし、なかなか中に入らない個体が3頭。いつ
ものことなので、こちらから迎えに行くと、体を丸めているメス「ミサキ」の
すがたがありました。
これまでの経験から、この体勢は体調を崩しているときとることが多いので
す。不安に思いながら近づくと、陰部や育児嚢周辺をなめています。「もしか
して出産?」。カンガルーの場合、妊娠期間はおよそ1か月といわれているも
のの、着床遅延がみられるため、いつ妊娠したかわからないのが現状です。
出産かどうかはともかく、「陰部と袋の間をなめて、子どもが袋まで登って
来るときに迷子にならないよう、道を作ってやるという話を聞いたことがある
なぁ~」「それにしては、ずいぶん広い範囲をなめてるなぁ~」などと、考え
ながら観察を続けました。
すると、ピンと伸ばしていた両足に痙攣が走りました。「陣痛かな?」と思
っていると、陰部から子どもが頭を出し、袋に向かって駆けあがり、「出た!
登った! もぐった!!」という感じで、10秒ほどで、袋にもぐりこんでしまい
ました。写真は東京ズーネット http://www.tokyo-zoo.net/ のニュースペー
ジをごらんください。
身体を丸め、陰部と育児嚢を近づけることは、子どもが移動しなければなら
ない距離を短くすることでもあります。これは、体をなめて移動のための道を
作るとともに、子どもを安全に移動させるための配慮ではないかと考えられま
す。赤ちゃんが無事成長し、袋から出てくるようになるのは、7月下旬になる
でしょう。
*「着床遅延」について──カンガルーは出産後、すぐ交尾をします。ミサキ
も出産の翌日に交尾が認められました。子どもは生まれるとすぐ育児嚢に入
り、半年間そこで過ごします。妊娠期間が1か月のカンガルーの場合、受精
卵ができて子宮内に着床してしまったら、生まれてくる子どもの落ちつき先
である育児嚢があいているかどうかが問題となります。そこで、着床を先延
ばしにするという現象が見られるようです。どの程度着床が先延ばしになる
のかは、興味深い点ですが、いずれにせよ、ミサキの次回の出産を目撃する
のは簡単ではないと思います。
〔多摩動物公園南園飼育展示係 浅見準一〕
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▼幼虫から成虫まで観察できる昆虫生態園の冬
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成虫が飛んでいる生態園内に食草の植木鉢を置いて産卵させ、その植木鉢を
チョウ飼育室に移して、羽化するまで育てる──これがチョウの飼育の基本パ
ターンです。
しかし、昆虫生態園内には、景観のための植物として、じかに植えつけてあ
る食草や食樹もあります。たとえば、クワ科のガジュマル、オオイタビ、ハマ
イヌビワ(クワ科)、キョウチクトウ科のキョウチクトウ、マメ科のモクセン
ナなどです。
冬になると、これらの植物上では、チョウの天敵となるハチ、アリ、寄生バ
チ、寄生バエ、クモなどが減るため、自然発生しているチョウが見られます。
モクセンナにはタイワンキチョウとキチョウ、チョウチクトウにはツマムラ
サキマダラ、ガジュマルやオオイタビやハマイヌビワにはツマムラサキマダラ
とイシガケチョウなど、それぞれ卵、幼虫、蛹が見られます。
じかに植栽してあるため、チョウの数をコントロールすることはできないの
ですが、こうしたチョウが新芽にしか産卵しないことを利用し、複数の株があ
る樹は剪定時期をずらし、丸裸になるのを防いでいます。
多摩動物公園にご来園のおりには、これらの木の葉をそっと見て下さい。幼
虫を見つける目安は、葉に残された食痕です。
〔多摩動物公園昆虫園飼育展示係 細井文雄〕
■葛西臨海水族園■======================================================
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▼テングダイと私
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葛西臨海水族園では、ふだん飼育係が作業をする水槽上のスペースを「キー
パー通路」と呼んでいます。生き物の観察、水槽の掃除や餌やりなど、ここで
さまざまな仕事をします。来園者の方はなかなか入れない場所なので、飼育係
にしか見ることのできない、おもしろい光景も目にします。
今回はそのひとつをご紹介しましょう。「伊豆七島の海2」の水槽で展示し
ているテングダイです。黄色と黒のしま模様が特徴的で、ふだんは水槽の真ん
中あたりをゆっくりと泳いでいます。
私がキーパー通路から水槽に近づきます。するとテングダイたちは勢いよく
水面まで私めがけて集まってきます。中には背びれを水面から出していたり、
勢いよく泳いでジャンプしたりするテングダイもいます。「この子たち、私の
ことが好きなのね!」なんて、いい気分になるものです。写真は東京ズーネッ
ト http://www.tokyo-zoo.net/ のニュースページをごらんください。
しかし残念ながら、だれが水槽に近づいても同じ行動をするのです。これは
魚の学習能力のひとつ。飼育係は、餌をあげる前に、水槽の上から生き物のよ
うすを観察します。テングダイたちは餌をもらう前、キーパー通路側に人影が
できるということを学んでいます。というわけで、人が近づくと「おおーっ、
餌の時間か?」と言うかのごとく、餌を食べやすい水面近くへわれ先に上がっ
てくるのです。
彼らは餌をもらえる場所もおぼえています。「東京の海」エリアは2階観覧
通路から水槽とキーパー通路を見ることができます。ためしにアクリル側から
水槽をのぞきこんでもテングダイは集まってきません。また、新しく来たばか
りの魚もこのような行動はしません。新しい魚はまず裏側の水槽に収容し、餌
に慣れさせてから展示水槽に移しています。
この水槽を担当して2年近くになりますが、このようなテングダイの行動は
毎日見ていても飽きることがなく、面白いなぁと感心してしまいます。ちなみ
に土曜、日曜、祝日のガイドツアーに参加すると、キーパー通路側から水槽を
観察することができます。お茶目なテングダイたちに、思わず微笑んでしまい
ますよ♪
〔葛西臨海水族園飼育展示係 細野潤子〕
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▼ペンギン、空を飛ぶ!──インドネシアに旅立ったフンボルトペンギンたち
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「ペンギンって飛べない鳥でしょ? 空を飛ぶなんてありえない!」──ペ
ンギンは水中生活に適応するため、大空を自由に飛びまわることをあきらめた
鳥ですが、中には「鳥と生まれたからには一度は空を飛んでみたい」という夢
を持っているものもいるのではないでしょうか? 今回はそんな夢をかなえた
フンボルトペンギンのお話です。
2008年2月1日、葛西臨海水族園から成田空港に向けて、12羽のフンボルト
ペンギン(オス6羽、メス6羽)が、インドネシアの動物園「タマンサファリ」
にむかって旅立ちました。
今回の移動は、タマンサファリから多摩動物公園に来園したオランウータン
「キキ」との交換により実施されました。2008年7月20日の「キキ」公開のニ
ュースはこちら↓です。
2007年7月20日のメルマガニュースで紹介した
http://www.tokyo-zoo.net/topic/topics_detail?kind=news&link_num=7294
インドネシアでは初めてのペンギンの来園であり、国民の期待も高く、タマ
ンサファリのホームページ http://www.tamansafari.com/ でも、トップペー
ジで紹介されています。
事前に葛西臨海水族園でペンギンの飼育研修を受けたタマンサファリの飼育
担当者イマム氏は、雪のちらつく寒さにふるえながらも熱心に研修に取り組ん
でいたので、ペンギンたちもインドネシアできっと活躍してくれるでしょう。
インドネシアまでは飛行機で18時間の空の旅。残念ながらペンギンたちが乗
った飛行機のカーゴルームには窓がないので、ペンギンたちは大空の雄大な景
色を見ることはできません。しかし、「空を飛ぶ」という感覚だけは十分味わ
うことができたのではないかと思います。
〔葛西臨海水族園飼育展示係 山口香子〕
■ B O O K S ■=========================================================
『爬虫類・両生類飼育ガイド カメレオン』
加藤学監修、川添宣広著、誠文堂新光社、2008年02月10日刊
本体2,500円、ISBN978-4-416-70803-3
カメレオンの飼育の実際を豊富な写真とともに解説する入門書。多種多様な
カメレオンをカラー写真で紹介した巻頭の20数頁は圧巻。著者は編集業をなり
わいとする方ですが、カメレオンに魅せられ、深い興味と愛情をもって接して
いることがよくわかります。
奇妙な目や尾、変化する体色、伸びる舌など、基本的な解説に始まって、カ
メレオンの生活について触れ、その流通についても紹介してから、具体的な飼
育法の説明が始まります。飼育ケージと内部のレイアウト、水を飲ませること
の重要性、工夫した餌を与えるときの楽しさ、温度や湿度や光の調節の説明の
後、性成熟をみきわめ、繁殖させ、子を育てるまでの技術が紹介されています。
本書後半は、カメレオンの種ごとにその特徴と、飼育と繁殖の注意点がまとめ
られています。
監修者はあとがきでこう書いています──カメレオンはあくまで野生動物で
ある。たとえ入手先がペットショップであっても、彼らは愛玩すべき動物では
ない。野生動物を飼育するということはどういうことなのか、もう一度深く考
慮して貴重な「命」を飼育してもらいたい。
ある種特殊な動物の飼育に関する解説を通じて、飼育について考えることも
できるはず。
・誠文堂新光社 http://www.seibundo-shinkosha.net/ の書籍紹介ページ
http://www.seibundo-net.co.jp/CGI/search/syousai.cgi?mode=id&id=02831
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N E W S C L I P S
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●劇団 France_panによる演劇「ジャン=アンリ・ファーブルの一生」
東京公演2008年2月15~17日、 大阪公演2008年4月4~7日。伝記ではなく、
象徴的な機能としてファーブルの「観察」を捉え、それを軸に抽象的に仕上げた
作品であり、史実にもとづかないファーブル像も出てくるかもしれないとのこと。
くわしくは→ http://frpn.com/top.htm
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ゃなかった。イベント記事満載のNo.363にひきつづき、本号No.364は動物ニ
ュースがメイン。両号合わせ、ゆっくりとごらんください。
・東京地方、ホントにまた雪なんですか? 雪の日のヒツジたち(本号)、雪
の日のチンパンジーたち(前号)、雪ネタもまたオツなもの。さて、土曜日
の空模様は? (大平)
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