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Z o o E x p r e s s ■ ズー・エクスプレス ■ No.136 - Oct 31, 2003
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・都立動物園の最新情報をお届けするメールマガジン「ズー・エクスプレス」。
・チャコールグレイというか、消炭色というか、最初は暗い色です、ひな。
■上野動物園■========================================================
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▼祝! モモイロペリカン繁殖!
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不忍池にいるカワウ。「あー、カラスだー」という声もけっこう聞こえき
ます……。いま、池の真ん中の島では、この黒い鳥たちにまじって、白っぽ
い鳥がじっと「座って」います。
じつはモモイロペリカンがひなを抱いているんです! 上野動物園でモモ
イロペリカンが繁殖したのは、71年ぶり。『上野動物園百年史』には、つぎ
のように書かれています。
昭和7年(1932年)には、モモイロペリカンが繁殖している。この
ペリカンは大正14年に購入されてから、毎年のように卵は生んでい
たのであるが、この年の7月27日と7月31日に生んだ卵が、30日ほ
どしてかえり、そのうちの1羽が生育した。これは、その以前にも、
以後にも、上野動物園では、たった1回のペリカンの繁殖成功例と
いえる。
このときの孵化日は1932年8月28日でした。
さて、現在のモモイロペリカンですが、9月16日には卵を確認。卵のチェ
ックはせず、そーっと孵化を待っていました。オスとメスで交替しながら、
抱卵していたとのこと。
ひなを確認したのは、10月18日でした。体は濃い灰色です。不忍池のほと
りから島まで、ちょっと距離がありますが、しばらく観察してみてください
(1932年の写真と2003年の写真は、東京ズーネットのニュースページをごら
んください http://www.tokyo-zoo.net/ )。
親鳥の体の下に埋もれるようにして、なにやら黒っぽく見えるのがひな。
今日も双眼鏡で見ていると、ときどき外に出ようとするひなを、親がくちば
しで押し戻しているような動きが見えました。眼のいい人なら、肉眼で観察
できるかも(無理?)。
毎日午後3時台には、アメリカビーバー展示場のちかくの島で、モモイロ
ペリカンに餌(アジ)をやっています。ただし、子を抱いた親がすぐ巣を離
れることはありません。でも、ちゃんと夫婦で交替しながら、餌を食べに来
ていますから、ご心配なく。
餌の時間になる前から、8頭のペリカン(現在、不忍池の中を自由に移動
しているのは、ひなを抱いている個体も含めて9頭です)は、飼育係がやっ
てくる島に集まって餌待ち顔です。カワウもいっしょにスタンバっていて、
餌取り競争はシレツをきわめます。
意外に先がするどいくちばしと、大きく広がる下くちばしの袋(魚を捕る
ときに使うだけでなく、広げることで体温調節にも使われます)にも、ご注
目ください。
モモイロペリカンを不忍池の島(いま餌やりをしている島)にはじめて出
したのは、2002年3月18日。それまで東園の旧正門そばで展示していたオス
(1999年6月22日来園)とメス(1994年1月11日来園)を移動したのです。
4月2日には柵から出して、自由に泳がせるようにしました。
さらに2002年10月15日には8羽を放し、オス5羽、メス5羽となったので
すが、2003年8月11日にメス1羽が死亡。その後、9月10日に多摩動物公園
から若いオスが2羽来園(2003年4月10日生まれ)。現在、ひなもふくめて
計12羽となりました。
多摩から来た2羽は、タンチョウやシジュウカラガンのそばにいます。柵
で囲われているのですが、人間に育てられたため、人なつっこいんです。近
づくと、向こうから寄ってくるかもしれません(気をつけてくださいね)。
若い個体の体は、茶色っぽい色をしていますが、だんだん薄くなっていき
ます。この2羽も、いずれ池の中に放す予定です。
「どうぶつ図鑑」のモモイロペリカン↓(鳴き声とビデオもあります!)
http://www.tokyo-zoo.net/search/species_detail?code=163
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▼古賀忠道生誕100年記念展開催
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1882年に開園した上野動物園に園長制度がしかれたのは1937年3月1日。
正式な「動物園長」に初めて就任したのが古賀忠道でした。平和への願いを
こめて、上野動物園だけでなく、日本各地の動物園の発展に尽くしたその功
績はひろく知られています。
生誕 100年をむかえた今年、古賀忠道の功績をたたえ、故人を偲んで記念
展示を開催します。
会期は2003年11月11日(火)から12月7日(日)まで。会場は、西園動物
園ホール1階にある「ズーポケット」です。写真や解説パネルの展示、記録
フィルムの上映をおこないます(フィルムは1回5分、終日上映)。
上野動物園園長・菅谷博が展示によせたことばから一部引用します。
古賀忠道生誕 100年を迎えた今、世界に未だにある内乱や国際紛
争に巻き込まれた動物園の悲惨な状況をみるにつけ、「ZOO IS THE
PEACE」 という古賀の言葉は一層の重みをまします。この展示を通
して「平和への願い」が私達動物園人にとって掛け替えのない思い
であることを多くの方々に感じていただければ幸いです。
●古賀忠道略歴
1903年(明治36年)12月4日佐賀県に生まれる。1928年(昭和3年)東京
帝国大学農学部獣医学科(現東京大学)を卒業と同時に、東京市公園課に就
職し、上野恩賜公園動物園に勤務するようになる。
1936年のクロヒョウ脱出事件を契機に、動物園に園長職がないことが見直
され、翌1937年3月1日、園長制度がしかれ、正式な「動物園長」に就任。
戦後は、1946年に映画館「かもしか座」の開設、1948年には子供動物園の
開園、おサル電車の開通など、子どもたちへの明るい贈りものの開発に心を
つくす。
1929年、インドのネール首相よりアジアゾウの「インディラ」が贈られ、
1950年はインディラを中心とした移動動物園を実施する。
1962年、創立80周年記念祭を最後に退職。退職後は、財団法人東京動物園
協会理事長に就任するとともに、国際自然保護連合(IUCN)日本委員会の委
員長をつとめ、ついで 世界野生生物基金(WWF)日本委員会の設立に奔走し
た。
1986年4月25日、永眠。
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▼東京文化財ウィークの催し──上野動物園
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・旧寛永寺五重塔パネル展
五重塔に安置されていた木造四方四仏坐像。現在、東京国立博物館で保
存されていますが、その写真パネルを五重塔前で展示します。11月3日か
ら9日。
・ガイドツアー「天然記念物の鳥たち」
11月5日(水)、7日(金)、8日(土)各日11時から45分間。東園ガ
イドツアー集合看板前(パンダ舎前)にお集まりください。
■多摩動物公園■======================================================
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▼東京文化財ウィークの催し──多摩動物公園
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・解説カードの配布
天然記念物(文化財)のいる動物舎にのぼりを立て、解説カードをくば
ります。11月2日(日)から9日(日)まで。
・ガイドツアー「天然記念物の動物たち」
11月2日(日)、3日(月・祝)、8日(土)、9日(日)各日11時か
ら45分間。アジア園ノウサギ舎前に集合してください。イヌワシ→タンチ
ョウ→コウノトリ→ガン池→カモシカの順に移動します。
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▼動物の見どころ教えます──ちょっと得する飼育係のお話
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日曜日と祝日の午後1時30分から2時、飼育職員が担当動物の生態や仕事
の裏話などを、ビデオ、写真、標本をつかってお話ししたり、展示動物の前
で解説したりします。場所はウォッチングセンター動物ホールです。
11月2日(日)────ターキンの話
11月3日(月・祝)──グローワームの話
11月9日(日)────アフリカゾウの話
11月16日(日)────雪国で暮らすユキヒョウのひみつ
11月23日(日・祝)──ライオンの話
11月24日(月・振)──モグラの話
11月30日(日)────子育てゴキブリに触れてみよう
■大島公園動物園■====================================================
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▼カラスの襲来に困った……
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秋の気配が濃くなった大島。サル島のワオキツネザルは、暖房のまわりに
集まることが多くなってきました。
もう一つ、秋の訪れを実感する、困ったことがあるのです。それはカラス
の襲来です。
大島町では今年度から、いままで以上にゴミの分別収集を徹底するように
しています。そのおかげで、たしかにカラスの数は減っているのです。
ところが、カラスたちは食べ物に困っているのか、いままで見向きもしな
かったヒキガエルの死体まで食べています(大島では、雨の夜の道路にヒキ
ガエルが大量にあらわれるため、翌朝には轢かれた死体だらけになってしま
うのです!)。
秋になり、山の食べ物が減ってきたため、大島公園にも襲来するようにな
りました。ロケット花火や、原獣医提案の捕獲檻で対処しています。
捕獲檻の写真は東京ズーネット http://www.tokyo-zoo.net/ のニュース
をどうぞ。 〔大島公園動物園 高橋孝太郎〕
■ B O O K S ■=======================================================
『動物たちの自然健康法──野生の知恵に学ぶ』
シンディ・エンジェル著、羽田節子訳、紀伊國屋書店、税抜2200円
病気になった動物が、植物を食べて自分でなおす「自己治療」は、むかし
から知られている行動です。でも、「薬草」だけではありません。ハリネズ
ミのひなたぼっこ(抗菌作用)、シカの泥浴び(傷の手当て)、ゾウの岩か
じり(ミネラル摂取)、アケゲザルの粘土食い(寄生虫感染治療と予防)な
どなど。
さらには、けがをしたときに身を隠す行動、ゾウが同種だけでなく他種の
死骸を葉や枝でおおう行動(感染症予防)、ストレスを軽減する各種の行動
(グルーミング他)など、動物たちの「自己治療」のたくみさが、哺乳類、
鳥類を中心に、昆虫にいたるまで、エピソードの連続で紹介された本です。
とくに第15章「飼育下の動物」では、動物園の飼育動物の状況が紹介され
ています。霊長類の放飼場に薬用植物を植えたオランダのアーペンヒュール
動物園の事例や、日照、運動、精神的ストレスについても言及あり。
動物たちの「知恵」を紹介するだけなく、その知恵に学ぼうというのが本
書のテーマの一つです。著者は、自分の病気が病院でなおらなかったことか
ら、薬草医学や動物の自己治療に興味をもつようになったそうです。
・著者エンジェル氏のサイト http://www.animalselfmedication.com/ は、
2003年10月31日現在、アクセスできず。
・アーペンヒュール動物園 http://www.apenheul.nl/en/index_en.html
・「オランダの動物園・水族館」(ばいばいねっとより)
http://www.baibainet.com/infonl/dobutuen.html
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N E W S C L I P S
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●米カリフォルニア州南部でおこった山火事で動物も一時避難
カリフォルニア州南部で、現地の10月21日から25日にかけて山火事が発生し
拡大をつづけています。サンディエゴ動物園では、10月27日と28日と開園した
ものの、来園者は少なかったとのこと。また、サンディエゴ野生動物公園に火
事の接近した27日、ゴリラなどの霊長類を室外に出さないようにしたり、カリ
フォルニアコンドルやチーターなどを動物を近くの動物病院に避難させたり、
一帯を立入禁止にしたり、緊急措置をとりました。ただし、動物たちは翌日に
は戻したとのこと。
・山火事の範囲(ページ中ほどに地図があります)
http://www.azstarnet.com/wildfire/31028nCAfires-main.html
●ライオンのオスとメスが誕生──オーストラリアのタロンガ動物園
22年ぶりの繁殖。放飼場を動きまわっているそうです。写真↓
http://news.com.au/common/story_page/0,4057,7712830%255E421,00.html
●オランウータンのアロマセラピー──米デンバー動物園
デンバー動物 http://www.denverzoo.org/ では、乳香、ユーカリ、アンゼ
リカ、ローズマリー、ビャクダン、ジャスミンなどをオランウータンにかがせ
る「アロマセラピー」をおこなっているとのこと。けんかが減ったり、母親を
失った子どもが落ちついた表情を見せるようになったり、老齢個体が元気にな
ったりと、効果があったとか。
●米ブッシュ政権、アジアゾウなど絶滅の恐れがある動植物の輸入を解禁
商取引で動植物の原産国に金がまわるようになれば、現地での保護活動が促
進される、との立場。自然保護団体からは「密猟者を刺激する」との批判。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20031025-00000048-kyodo-soci(毎日)
●ジェーン・グドール博士来日記念講演
ジェーン・グドール・インスティチュート・ジャパンが開催する講演会。
http://www.papalagi.co.jp/npo/topnews/Jane/jane_koen.htm
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▽編集後記
・『動物たちの自然健康法』には、ミネラルの重要な供給源として、動物の
尿があげられています。チョウも例外ではく、その原理を利用して、「チ
ョウをよぶための液体」が販売されています。中身は……ホンモノの動物
の尿。 http://www.butterflylure.com/ で発売中。
・三連休、比較的おだやかな天気のようです。 (大平)
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メールマガジン ZooExpress No.136 - 2003年10月31日
財団法人 東京動物園協会
110-0007 台東区上野公園9-83 上野動物園内
電話 03-3828-8235 FAX 03-3828-8237
e-mail: webmaster@tokyo-zoo.net
URL : http://www.tokyo-zoo.net/ 東京ズーネット
(c)2003 Tokyo Zoological Park Society
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