 |
======================================================================
Z o o E x p r e s s ■ ズー・エクスプレス ■ No.258 - 2006年03月03日
======================================================================
・都立動物園の最新情報をお届けするメールマガジン「ズー・エクスプレス」。
・「ボート! そっちから回りこんで!」の巻。
■目次■--------------------------------------------------------------
・上野動物園
├─モモイロペリカン捕獲大作戦
└─両生爬虫類館で特別展示スタート
・多摩動物公園
└─コアラ繁殖に向けたあらたな試み
・書籍紹介──遠藤秀紀『解剖男』
--------------------------------------------------------------------
・東京動物園友の会に入会しませんか? 年会費は、 2,000円。機関誌「どう
ぶつと動物園」を年4冊お届けします。入会・継続の手続きは、クレジット
カード&オンラインでもOK! → http//www.tokyo-zoo.net/member/
■上野動物園■========================================================
----------------------------
▼モモイロペリカン捕獲大作戦
----------------------------
上野動物園の不忍池にくらすモモイロペリカン。近親交配をさけるために
も、このたび東京都羽村市動物園にオス2羽を送り、同園からメス2羽を受
けとることになりました。
しかし、2006年2月24日、モモイロペリカンを捕獲するときに予期せぬ事
態に……。
不忍池のほとりには、モモイロペリカンのための餌場があって、フェンス
で囲われています。フェンスの一部はドアになっているので、ここを開けて、
食事に戻ってくるペリカンたちをおびきよせ、ドアを閉めてから、2羽を捕
獲──の予定だったのですが、9羽は戻ってきたものの、3羽がまだ。しか
も、3羽のうち、2羽が搬出個体!
そこで、不忍池にボートを3台出し、岸辺のフェンスの隅に追いつめる作
戦を決行。職員10人以上が結集しました。この日は気温が低く、折りしも冷
たい雨。職員1人が潜水スーツで水の中に入り、ボートに指示を出しつつ、
ペリカンを誘導します。……が、ペリカンも(時に)すばやい。
写真は東京ズーネット http://www.tokyo-zoo.net/ のニュースページを
ごらんください。
ついに岸辺に追いつめ、捕獲に成功! 体に埋めこんだマイクロチップ番
号を、外部リーダーで読み取って識別します。つづけて、もう2羽も捕獲。
搬出用個体2羽をケージに収容し、羽村市動物園行きの車に積みこみました。
2羽を送り出してから、もう一仕事。じつは、ペリカンの個体識別用に、
これまで「足環」が使われていました。これは、金属などの素材を鳥の足の
まわりにグルッと巻くものなのですが、ゆるんで落ちてしまうことがありま
した。そこで、ペリカンたちには、あらためて「脚帯」を装着することにし
たのです。
この脚帯は、いわゆる「結束バンド」のような構造になっているプラスチ
ック製の帯(幅15ミリ程度)です。この帯を、「熱すると収縮する材質のチ
ューブ」に通し、お湯で暖めてフィットさせると、色つきの脚帯のできあが
り。つかまえたペリカンの足にまわし、締めすぎないようにして環をとめま
す。個体識別のためには、1色では足りないので、2色の組み合わせで工夫
します。帯を二つ装着するときも、上下で直径が異なると、環が入れ替わっ
てしまうこともあるので、直径はほぼ同じになるように調整します(ニュー
スページの写真をごらんください)。
開園日の午後の作業でしたので、雨とはいえ、作業を興味深そうに見つめ
ていらした来園者の方も。寒い中、作業を終え、一同ホッとしたのでした。
・東京ズーネット「どうぶつ図鑑」のモモイロペリカンはこちら↓(動画も
あります)
http://www.tokyo-zoo.net/encyclopedia/species_detail?code=163
--------------------------------
▼両生爬虫類館で特別展示スタート
--------------------------------
上野動物園の両生爬虫類館で、本日(2006年3月3日)より特別展示が始
まりました。題して「ちゃんとおつきあい、できますか?──人と生き物の
関わりを考える」。
海外産の爬虫類がペットとして飼われたあと、飼い主によって放棄される
例が近年たくさん報告されています。こうした外来生物などとの「つきあい
方」を考えよう、という展示です。
展示場には、ボールニシキヘビやグリーンイグアナ、ミズオオトカゲとい
った海外産の爬虫類をはじめ、国内産のアオダイショウ、カナヘビなどを展
示するとともに、適切な飼い方も説明してあります。
また、ミドリガメ(ミシシッピアカミミガメの子どもの「流通名」)が、
どれほど大きくなってしまうのか、実物でお見せしています。ミドリガメを
置いた一角にはカウンターを設置し、今後、スタッフが解説などをする予定
です。
展示場の奥には、ワニガメとカミツキガメの水槽があります。カミツキガ
メは非常にあごの力が強く、あつかいに注意の必要なカメ。日本でも最近、
飼われていたと思われる個体が野外で発見され、問題となっています。
爬虫類以外にも、外来生物として問題になっているブルーギルやアメリカ
ザリガニなどの水槽も展示中。
外来生物が生態系をどのように乱し、ときに人に危害をあたえ、農業や漁
業に影響をあたえているか、パネルでもじっくり解説。また、飼うだけでな
く、野外で観察することの大切さ、おもしろさも、アズマヒキガエル、アオ
ダイショウ、ニホンカナヘビの展示コーナーで説明しています。
なお、お子さん向けのぬり絵コーナーも設置。ヘビやカメやトカゲに色を
塗ってみませんか。入口付近にはQ&Aコーナーもあります。
・東京ズーネット「どうぶつ図鑑」より
グリーンイグアナ
http://www.tokyo-zoo.net/encyclopedia/species_detail?code=185
ミズオオトカゲ
http://www.tokyo-zoo.net/encyclopedia/species_detail?code=219
ミシシッピアカミミガメ
http://www.tokyo-zoo.net/encyclopedia/species_detail?code=217
アオダイショウ
http://www.tokyo-zoo.net/encyclopedia/species_detail?code=168
ニホンカナヘビ
http://www.tokyo-zoo.net/encyclopedia/species_detail?code=205
■多摩動物公園■======================================================
--------------------------------
▼コアラ繁殖に向けたあらたな試み
--------------------------------
2006年2月28日、多摩動物公園のコアラ「ミリー」(メス)が、埼玉県こ
ども動物自然公園に旅立ちました。3月中旬頃までの予定です。
埼玉県こども動物自然公園には、2006年2月6日、すでに神戸市立王子動
物から、コアラ「モモジ」(オス)が到着しています(4月22日までの予定)。
じつは、コアラの繁殖経験が豊富な王子動物園のオスを埼玉に短期間移動
させ、埼玉にいるメス、そして、多摩から行ったミリーとのあいだで、繁殖
を成功させよう、という試みなのです。
繁殖のため短期的に希少動物を移動させるのは、日本でも類を見ない計画。
多摩、王子、埼玉の3者間でむすんだ「共同繁殖計画」に、注目が集まって
います!
ミリーは2000年8月23日、名古屋市東山動物園生まれ。5歳6か月です。
モモジは、1997年2月7日、横浜市立金沢動物園生まれ。9歳。ミリーの写
真は、東京ズーネット http://www.tokyo-zoo.net/ のニュースページをご
らんください。
・東京ズーネット「どうぶつ図鑑」のコアラはこちら↓
http://www.tokyo-zoo.net/encyclopedia/species_detail?code=36
・埼玉県こども動物自然公園 http://www.aya.or.jp/%7Esczoo/
・神戸市立王子動物 http://ojizoo.jp/
■ B O O K S ■=======================================================
『解剖男』
遠藤秀紀著、講談社現代新書1828、2006年2月20日刊
本体720円、ISBN4-06-149828-2
山手線の中でバイカルアザラシの眼球を「解剖」する著者。なぜバイカル
アザラシの眼は、他のアザラシよりはるかに大きいのか。
年始1月4日、上野動物園で死亡したシロサイの遺体に急行する著者。重
機や運送の知識が不可欠な現場。そして、遺体を研究し、保存し、公開して、
とことんつきあう。サイの耳管に憩室はあったか、なかったか。
ハチ公の病理解剖。上野動物園のキリン「タカオ」の標本。動物園の一時
代を語るレオポンの標本。それだけでなく、「地味な」遺体も分け隔てなく
保存するのが大学や博物館の存在意義だと主張する著者。
つづいて骨の話。コウモリの指、横しか見ないイノシシの眼、オオアリク
イなどがもつ背骨の余計な関節、鎖骨の意義、指の数の歴史など、骨を通じ
て見えてくる系統と適応。
骨のあとは「軽んじられている」という、皮膚、内臓、筋肉、血管、神経
など柔らかい部分の話です。アジアゾウの腎臓を見て、ホッキョクグマや鯨
類の腎臓との類似性を見いだし、ゾウもかつては「海に起居していた」ので
はないかと推察する著者。ガンジスカワイルカの MRI画像から推察される、
ウシたちとの系統的類縁性。多摩動物公園のライオン「ジロー」解剖により
明らかにされる、消化管の機能美。
最終章では、解剖学が直面する大学の意識の問題、社会総体としての遺体
への姿勢が語られ、「遺体科学」という言葉であらたな方向性が示されます。
遺体科学に全力を投じる学者のスリリングな挑戦に出会える本。
・京都大学霊長類研究所内・遠藤秀紀先生のページ
http://www.pri.kyoto-u.ac.jp/shinka/keitai/members/endo/index.htm
・講談社現代新書サイトの紹介ページ
http://shop.kodansha.jp/bc2_bc/search_view.jsp?b=1498282
======================================================================
▽本文中に示したリンクによって表示されるページには、他のページへの移動
リンクが含まれていない場合があります。とくに東京ズーネットの「どうぶ
つ図鑑」のばあい、完全なかたちで表示するためには、図鑑のトップページ
http://www.tokyo-zoo.net/search/ から検索してください。
▽ズー・エクスプレスでは、みなさんからのお便りを募集しています。匿名や
ペンネーム希望の方はその旨をお伝えください。 webmaster@tokyo-zoo.net
まで。ご意見・ご要望・お問い合わせもこのアドレスまでどうぞ。
▽メール配信先変更、配信停止は下記URLにてお願いいたします。配信先の
変更をご希望の方は、いったん解除をおこない、あらためて新アドレスを登
録してください。 http://www.tokyo-zoo.net/express/
▽編集後記
・雑誌BRUTUSの2006年3月15日号は動物園特集号。特集タイトルは「動物園
に来てみない?」。あれ? 「動物園に行ってみない?」じゃないんです
ね……表紙と冒頭記事を見ると、そうか、動物が発したセリフ? それと
も、動物園内からBRUTUSが発したコトバ?
BRUTUS ONLINE http://www.brutusonline.com/brutus/index.jsp
・『解剖男』に触れているブログがすでにたくさんありますが、かなりの割
合で、遠藤先生ご本人によるコメントがついてます。リアルタイム・ブロ
グサーチを使用? ブログをおもちの方は、紹介すると著者ご本人が「降
臨」されるかも。
・とある新設文学賞の大賞受賞作品(400字で約250枚の小説)が、「全部」
携帯電話で入力されたものなのだとか。じゃ、記事一つぐらい携帯で打っ
てみようか、ポチポチ……ムリだったーっ。 (大平)
======================================================================
メールマガジン ZooExpress No.258 - 2006年03月03日
財団法人 東京動物園協会
110-0007 台東区上野公園9-83 上野動物園内
電話 03-3828-8235 FAX 03-3828-8237
e-mail: webmaster@tokyo-zoo.net
URL : http://www.tokyo-zoo.net/ 東京ズーネット
携帯サイト: http://www.tokyo-zoo.net/ (PC版と同じです)
(c)2006 Tokyo Zoological Park Society
|
 |