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Z o o E x p r e s s ■ ズー・エクスプレス ■ No.217 - 2005年05月20日
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■上野動物園■========================================================
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▼プレーリードッグ捕獲大作戦
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2005年5月19日の午後、飼育課職員十数名で、展示場内にいるオグロプレ
ーリードッグを「全頭」捕獲しました。展示場の改修のためです。
かつての放飼場は、プレーリードッグがそのまま垂直に掘りさげていくと、
何の遮断物もなく、どんどん地球に入っていけるバリアフリー(?)状態。
そこで、放飼場地面の下に金属製の網を張ったのですが、それも老朽化して
しまったため、今回は親水性のコンクリートを深い部分に打ち、その上にさ
らに網を張ることにしたのです。
放飼場の地面にはいくつも穴が空いています。プレーリードッグがその穴
から地中のトンネルを進むと、放飼場裏にある小部屋につながっています。
この小部屋で全頭捕まえられれば簡単なのですが、そんなことを許してくれ
ないのが、この小動物たち。
一部の個体はすでに捕獲ずみでしたが、しぶとく残る個体を捕まえるため、
今回の巨大プロジェクトを敢行。作戦遂行に先立って、地上に空いたトンネ
ル出口に麻袋を詰め、行き止まりにしておきました。プレーリードッグたち
は、トンネルの途中で籠城しているようすです。
捕まえるべき個体の数は親が24、子が20。係員は手袋をして、スコップで
土をどんどん掘っていきます。しかし、この日は急に気温があがって暑い!
係員がせっせと土を掘る中で、トンネルの奥から鳴き声も聞こえるのですが、
裏の小部屋側には出てくる気配もありません。
それでも、掘る! 額に汗し、ひたすら土にスコップを立て、黒四ダムも
かくやと思われる作業状況で掘り続けて20分──係員から「捕まえた!」の
声が! お客さんからも拍手が! 捕獲したプレーリードッグは、体の中に
埋め込まれているマイクロチップで個体識別します。子どものころの雌雄判
定がまちがっていないかどうか、肉眼で性別も再確認しました。
その後、プレーリードッグたちはつぎつぎと捕獲され、飼育舎の小部屋に
収容されていきました。作業は約1時間で終了。ボコボコに掘り下げられた
放飼場には、中島みゆき嬢がそこで某局の番組主題歌を歌ってもいいほど、
東園の叡智と腕力が深く刻みこまれたのでした。この後工事が入り、約1か
月後に展示再開の予定です。その間、西園小獣館1階で、子どもたちと親を
展示しています(5月19日当日から展示中)。
・東京ズーネット「どうぶつ図鑑」のプレーリードッグはココ↓
http://www.tokyo-zoo.net/encyclopedia/species_detail?code=85
(去年[2004年]の赤ちゃんの動画もあります)
■多摩動物公園■======================================================
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▼バッタを見つけたサーバルたちは……
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昆虫館からトノサマバッタがもらえることになったので、サーバルに与え
てみました。サーバルは動くものによく反応し、いろいろなものに興味を示
すので、きっとおもしろい行動を見せてくれるのではないかと考えたのです。
当日、放飼場に出ていたのはデューンとコウ(どちらもオス)でした。ま
ず、デューンに与えたところ、あっという間に食べてしまいました。バッタ
を相手にして少し遊ぶかなと思っていたのですが、与えたとたん、あ、食べ
ちゃった!という感じです。写真は東京ズーネットのニュースページをごら
んください http://www.tokyo-zoo.net/ 。
コウは反応がちがいました。前足でバッタを軽く触りながら、ようすをう
かがってはいるものの、結局口にはしませんでした。しかし、寝部屋に入っ
たコウにふたたびバッタを与えてみると、今度は食べてしまいました。
シオン、ユウカ、キョウコ(いずれもメス)にも寝部屋で与えてみたとこ
ろ、シオンはバッタを殺すだけで食べませんでしたが、ユウカとキョウコの
部屋にはバッタの足や頭部が残っていたので、食べたようです。
ボブ(オス)にも与えたのですが、まだ子どもだからか、少し遊びながら
食べるという感じでした。同じサーバルでも、食べ方や食べる部位にもそれ
ぞれ個性があるのは意外でした。今後も放飼場にバッタを放して、エンリッ
チメントにつなげていきたいと考えています。
ちなみに、チーターとライオンにもトノサマバッタをやってみました。チ
ーターは最初、すごくびっくりして、逃げ出して(?)しまいましたが、そ
れでも気になるようで、バッタに視線をやりながらも、近づいて食べるよう
な行動は見られませんでした。一方、ライオンにバッタは小さすぎるようで、
完全無視でした。反応のちがいを見ると、同じネコ科でもやはりちがう動物
だな~、と実感させられました。 〔多摩動物公園飼育課 大橋さやか〕
・東京ズーネット「どうぶつ図鑑」のサーバルはここ↓(動画もあります)
http://www.tokyo-zoo.net/encyclopedia/species_detail?code=41
■葛西臨海水族園■====================================================
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▼日本固有のチョウチョウウオ、ユウゼンの展示
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熱帯のサンゴ礁の海では、色とりどりのサンゴのあいだを、それ以上に多
様な色彩や模様の魚たちが泳いでいます。そのなかでも、チョウチョウウオ
のなかまは、愛らしい顔つきといい、模様や色の鮮やかさといい、まさに陸
上を舞うチョウと同様、とびきり目立つグループです。
しかし、 200をこえる種がいるこのグループのなかで、「ユウゼン」は異
彩をはなつ存在。全身が黒っぽく、白く縁取られたうろこ模様におおわれ、
尾ビレも含め、体の後端は鮮やかな黄色です。その色模様は、名前の由来と
なった日本古来の伝統的な染め物「友禅染」にたとえられるほどで、じつに
しぶく、味わいがあるもの。あでやかな他のチョウチョウウオに負けない存
在感があります。写真は東京ズーネット http://www.tokyo-zoo.net/ のニ
ュースページをごらんください。
また、すがただけでなく、かぎられた海でしか見られないというのも興味
深い点です。ある特定の地域に分布が限られた種を「固有種」と呼びますが、
ユウゼンは日本の固有種です。しかも、八丈島から小笠原諸島にかけての海
域と、沖縄の西部沖の島、南大東島でしか見られません(まれに沖縄や高知
でも見られるという報告があります)。
一方、同じチョウチョウウオのなかまでも、トゲチョウチョウウオのよう
に、南日本も含め、太平洋からインド洋の暖かい海にかけて広く分布してい
る魚もあります。葛西臨海水族園でもトゲチョウチョウウオは「世界の海」
と「東京の海」の両エリア、合計三つの水槽で展示しており、分布の広さが
わかります。
このように、ある魚は狭い海域に分布が限られ、ある魚はいくつもの大洋
に広く分布しています。不思議だと思いませんか? つながっているように
みえる海にも、生物の移動をはばむ壁があり、その分布を制限しています。
その壁は、陸地であったり、水温のちがう海域や海流であったり、また島の
ない広い海であったり、さまざまです。
また分布は、その種の生態や生活史とも切りはなせません。さらに、地球
の歴史のなかで、海や陸は気候とともに大きくすがたを変えてきましたが、
その種がその歴史上、いつ、どこで生まれ、どのように分布を変えてきたか、
ということにも深く関係しています。分布の不思議を解くことは、その種の
歴史をさぐることでもあるのです。しかし、それは簡単なことではなく、ユ
ウゼンがなぜこのような変わった分布をしているのか、じつはあまりわかっ
ていません。
葛西臨海水族園の「世界の海」では各海域の固有種を展示しているので、
分布に注目しながら見てみるのも楽しいでしょう。それにしても、ユウゼン
の日本的な美しさは、まるで日本のために作られたかのような錯覚を覚える
ほど。ユウゼンは、「東京の海」のエリア、「小笠原の礁」で見ることがで
きます。 〔葛西臨海水族園調査係 天野未知〕
■井の頭自然文化園■==================================================
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▼文化園いきものクラブ「淡水魚の世界」
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井の頭自然文化園を動物解説員といっしょに歩き、動物や園内の自然を観
察する「文化園いきものクラブ」。2005年度は年間10回実施します。6月は
11日(土)、「淡水魚の世界」をテーマに開催。
対象は小学生です(保護者同伴可)。先着20名まで。参加無料。開催時間
は午前9時30分から12時です。実施日の3週間前(5月21日)から、電話で
受けつけます。先着順です。お早めに!
電話は井の頭自然文化園 0422-46-1100 まで。
*2005年度のテーマは、こちら↓のニュースをごらんください。
http://www.tokyo-zoo.net/topic/topics_detail?kind=event&inst=ino&link_num=2494
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▼特設展「カエルのなき声が聞こえますか?」
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都会ではどんどん数が少なくなっているカエルたち。このままでは、カエ
ルの鳴き声を耳にするのは、ホタルの光を見るくらいむずかしいことになっ
てしまうかもしれません。
特設展では、東京の近辺で見られるカエルやオタマジャクシを展示し、カ
エルの置かれている現状をご紹介しています。
2005年4月29日から開催中。7月3日(日)まで。午前9時30分から午後
4時45分(入園は午後4時まで)。場所は水生物館です。
展示生物──モリアオガエル、シュレーゲルアオガエル、トウキョウダル
マガエル、アマガエル、ヤマアカガエル、アズマヒキガエルなど。
■大島公園動物園■====================================================
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▼リキちゃん、勘違いしててゴメン
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ゴールデンウィーク直前の2005年4月27日、毎年恒例のアルダブラゾウガ
メの引越しをおこないました。当日はよいお天気に恵まれて暖かくなり、元
町保育園の皆さんが見守る中、ゾウガメたちは冬のあいだ過ごしていた温室
から広い運動場にいっせいに駆け出していきました。
引越しに先立つ4月23日には悲しいできごとがありました。1995年に来園
したリキが死亡したのです。ここ数年のリキは、食欲もなく体調もすぐれな
かったので、死因を調べるために獣医がさっそく病理解剖をおこないました。
しかし、昨年11月に測定した体重は、なんと 129.4キロ。解剖するのも一
筋縄ではいきません。4人がかりで解剖室に運び、背甲と腹甲の間をのこぎ
りで切断して開腹したのでした。甲羅の厚みは最大で5センチ。腹甲だけで
重さが11キロもありました。
しかし、それよりも臓器を見てびっくり! 今までオスだと思っていたリ
キが卵巣を持っていて、メスだったことがわかりました。カメは一般に尾で
雌雄を見分けますが、ゾウガメはふだん尾をお腹の下に巻き込んでいるため、
私たちはリキの大きな体つきからオスだと勘違いしていたのです。
さらに、せっかくの機会なので前足・後足に墨汁をつけて「手型・足型」
を取ってみると、前後で指の数がちがうという発見もありました。今後、こ
の「手型・足型」をもとに実物大スタンプを作り、みなさんに利用していた
だく予定です。ふだんは見えないゾウガメの足の裏を、このスタンプで観察
してください。
亡くなってからもいろいろなことを教えてくれたリキちゃん。今までどう
もありがとう。 〔大島公園動物園 田畑邦衛〕
■東京動物園協会の催し物■============================================
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▼磯の生物観察会、受付開始!
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磯や海辺の動物を観察してみませんか? 2005年6月11日(土)は葛西臨
海水族園の園内と周辺のなぎさ、6月25日(土)は横須賀市走水で観察会を
おこないます(両日で一続きの催し物です。どちらか1日だけの参加はでき
ません)。
指導員として、水族園周辺のなぎさや走水での生物相調査を実施している
水族園からスタッフが付き添います。
日時 2005年6月11日(土)と25日(土)
両日とも午前9時40分から午後3時(雨天中止)
場所 葛西臨海水族園、横須賀市走水
対象 小学生以上40名(小学生以下は保護者同伴)
参加費 300円(資料代と保険料)
内容 ・6月11日──葛西臨海水族園に集合。館内で生物を観察。西な
ぎさに移動して、海辺の動物を観察。
・6月25日──京浜急行馬堀海岸駅前に集合。バスで走水町の磯
へ移動。磯の生物の観察や実験など。馬堀海岸駅
に戻って解散。
申込 はがきかファックス、Eメールで、参加希望者全員の氏名・年齢
と、代表者の住所・電話番号(あればファックス番号も)を明記
して、2005年5月31日(火)までにお申し込みください。応募多
数の際は抽選をおこないます。
郵便: 〒110-0007 台東区上野公園9-83
東京動物園協会 磯の生物観察会係
ファックス:03-3828-8237
Eメール :event@tokyo-zoo
■おたより紹介■======================================================
ダンゴムシって日本語以外のことばでは何ていうの?──というメールを
いただいて、ご紹介したのが本誌のNo.211。読者のOさんから、追加情報を
いただきました。ありがとうございます!
ブラジルのポルトガル語では、ダンゴムシは Tatudinho(タト
ゥージーニョ)という愛称で呼ばれています。Tatuはアルマジロ。
「小さなアルマジロちゃん」という感じであります。
ちなみに私が小学生のころですが、復帰前の沖縄では、「キャ
タピラ君」と呼んでいました。たくさんの脚をザワザワと動かし
ながら歩いていく、その見事な連携ぶりによる命名です。
キャタピラ君……。学研のオモチャに、“ダンゴムシ”型の「キャタピラ
ス」というのがあったはず。
ダンゴムシは等脚類というグループの動物ですが、その世界最大種が葛西
臨海水族園にいます。その名も、ジャイアントアイソポッド。訳すと「巨大
等脚類」(そのままか……)。いずれメールマガジンでもご紹介します。
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N E W S C L I P S
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●ガラパゴス西端の島で噴火、ウミイグアナなどが危機(読売)
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20050518i516.htm
●新種のサル発見、20年ぶり(CNN)
http://www.cnn.co.jp/science/CNN200505200012.html
●トゲのDNA検査でヤマアラシの雌雄判定(ロイター)
http://www.excite.co.jp/News/odd/00081116450437.html
●ヤンバルクイナ、孵化直後のヒナ撮影(朝日)
http://www.asahi.com/science/news/TKY200505190201.html
●2本足で立つレッサーパンダ──千葉市動物公園
メディアにとりあげられ有名になってしまった風太の直立動画(TBS)。
http://news.tbs.co.jp/asx/news1194855_3.asx (Windows Media Player)
●「飼育係養成講座」受講者募集!
2005年6月4日(土)午後1時から5時40分、東武動物公園による飼育係養
成講座。「動物の餌」をテーマに3コース。1コースの定員は4名です。要申
込。締切は6月2日です。くわしくは東武動物公園 http://www.tobuzoo.com/
をごらんください。
●「上野の山ミュージアムクラブ」開催
国立科学博物館、国立西洋美術館、東京国立博物館、上野動物園で開催する
体験活動(主催:国立科学博物館)。2005年7月17日、18日、8月26日、28日、
9月4日、25日(+オプションとして8月1~2日)の連続プログラム。対象
は中学生20名です。詳細は、国立科学博物館 http://www.kahaku.go.jp から、
5月20日の新着情報をごらんください。
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変更をご希望の方は、いったん解除をおこない、あらためて新アドレスを登
録してください。 http://www.tokyo-zoo.net/express/
▽編集後記
・よし、配信ボタン押下!──と夜中にワケわからんテンションで、ひとり
気合いを入れてみるのはダメですか……。 (大平)
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財団法人 東京動物園協会
110-0007 台東区上野公園9-83 上野動物園内
電話 03-3828-8235 FAX 03-3828-8237
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(c)2005 Tokyo Zoological Park Society
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