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限りない挑戦[10]動物のくらしを豊かにする
 └─2021/05/20
 上野動物園では、約300種3,100点の動物を飼育しています。上野動物園における2010年度(平成22年度)から2019年度(令和元年度)まで、10年間の平均年間総入園者数は391万人です。年間開園日数は約320日、平均して1日あたり1万2千人にお越しいただきました。

 上野動物園の東園と西園を合わせた総敷地面積は 14.4万平米でけっして広くありません。そのため、世界最高級の混雑した動物園となっています。上野動物園では敷地を有効利用するために、展示施設を組み合わせる複合的展示や複数の動物種を同一施設で飼育展示する混合展示など、さまざまな工夫をおこなっています。

 近年、世界中の多くの動物園でそこにくらす動物の生活の質を向上させるための取り組みが進められています。そのキーワードとして、動物が自分の生きる状況にどのように対処しているかを意味する「動物福祉」(アニマルウェルフェア)という言葉が使われます。

 平たく言えば、動物のくらしを、分けられた領域ごとに科学的に評価検証することによって、よりよい状況に改善していくことです。動物福祉の領域とは、「栄養」「環境」「身体の健康」「行動」「精神」の5つです。飼育動物の状況がそれぞれの領域で正の状態にあるのか、あるいは負の状態にあるのかを分析・評価し、正の状態に向かうように改善していく取り組みです。

 動物園でくらす動物は、野生のくらしとは異なり、腹を空かせることはほとんどありません。反面、限られた空間での生活は単調になり、運動不足や肥満、不活発になることがあります。そこで上野動物園では、放飼場に遊具を設置して運動不足の解消を図り、動物が飼育空間内を探索しながら好物を得られるようにするなど「環境エンリッチメント」に努めています。また、動物種によっては「ハズバンダリートレーニング」(動物の健康な飼育と人間の安全な作業を目的として、動物に自発的な行動を取らせるための訓練)をおこない、歯牙の観察や採血など、健康管理にも役立てています(連載「限りない挑戦[1]ジャイアントパンダの繁殖(2)」もご覧ください)。


【動画】シャンシャンのハズバンダリートレーニング(2019年6月)

 動物のくらしの状況を定期的に調査・評価し、評価にもとづいて改善策を検討し、実践する動物福祉に関する評価検証の仕組みづくりも進めていく必要があります。上野動物園の飼育動物のくらしが少しでも豊かなものとなるよう、これからも動物福祉の向上に努めてまいります。

 恩賜上野動物園長
  福田豊

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(2021年05月20日)



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