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限りない挑戦[7]「パンダのもり」をつくる
 └─2021/03/07
※ジャイアントパンダ「シャンシャン」の返還日が、2023年2月21日(火)に決まりました。詳しくはこちらのページをご覧ください。



 昨年(2020年)9月8日、新ジャイアントパンダ舎を含む「パンダのもり」が西園にオープンしました(お知らせ)。日本に初めて来たジャイアントパンダ、「カンカン」と「ランラン」の2頭が上野動物園に来園してから早いもので48年が過ぎました。2頭は最初、東園のトラ舎に間借りをしました。当時、ジャイアントパンダがどのような動物かほとんど知られておらず、飼育係は大変に苦労したと聞いています。

1972年10月28日、ランランとカンカンが来園
初代ジャイアントパンダ舎屋内

 1973年5月に表門の近くに最初のジャイアントパンダ舎がオープンし、1983年には運動場が拡張されました。1988年4月には運動場を挟んで反対側に2代目のジャイアントパンダ舎が整備されました。2010年秋、「リーリー」と「シンシン」を迎えるにあたり改修をおこないました。この施設は現在もシャンシャンが使用しています。

 2020年9月、ジャイアントパンダ舎を東園から西園に移転させ、今回、3代目のジャイアントパンダ舎がオープンしました。「パンダのふるさと」をテーマに、旧子ども動物園があった場所に面積約3倍の敷地を確保しました。中国国内の施設設計の基準や飼育管理基準を参考にし、また、中国ジャイアントパンダ保護研究センターの専門家の助言もいただきながら、できる限りジャイアントパンダに適した施設の構築をめざしました。中国四川省の古い街並みやジャイアントパンダの生息地の自然もできる限り再現するよう努めました。


2020年9月にオープンした3代目のジャイアントパンダ舎「パンダのもり」

 ジャイアントパンダの習性などを解説するパネルやレプリカの設置、レッサーパンダやキンケイなどジャイアントパンダと同じ生息環境にすむ中国産動物の展示施設も配置されています。先輩飼育係から受け継いださまざまな飼育ノウハウも取り入れ、飼育施設を作りこみました。屋外展示場はジャイアントパンダが間近に観察できるよう障壁をなくし、借景としての東園の木々や展示場の木々が一体化して見えるように設計し、雨や暑さが避けられるような洞穴状の石組みを設置するなどの工夫をおこないました。また、擬木や石組みなどについては、模型を作って大きさや配置を検討しました。

 ジャイアントパンダにとって心地よく、来園者にとって観覧しやすい施設とするべく努力しましたが、まだまだ完全とは言えません。使用して初めてわかることや、動物の想定外の行動などがあり今後も不断の改良が必要です。

新施設「パンダのもり」のリーリー(左)とシンシン

 リーリーとシンシンが来園して、今年の2月21日で満10年を迎えました。日中ジャイアントパンダ保護研究協定の期限を迎え、昨年末には都と中国との協議の結果、保護研究協定の5年間の延長が決定されました。また、シャンシャンの中国返還期限は昨年(2020年)12月末でしたが、新型コロナウイルス感染症の影響もあり、今年の5月末まで延期となりました(お知らせ)。さらに、3月6日にはリーリーとシンシンに交尾行動が確認され(お知らせ)、シャンシャンに続くパンダの赤ちゃんの誕生が期待されます。

 コロナ禍で緊張の日々が続きますが、3頭の健康状態は良好です。上野動物園としては、これからもしっかりと飼育管理に取り組んでまいります。

 恩賜上野動物園長
  福田豊

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