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限りない挑戦[1]──ジャイアントパンダの繁殖(1)
 └─2017/05/26

 今年2017年2月27日、ジャイアントパンダのメス「シンシン」が尾を上げてオスを受け入れる体勢を取るなど、発情のピークに見られる行動が観察されました。そこでオスの「リーリー」と同居させたところ、午前中1回、午後2回、合計3回同居させて3回の交尾が確認されました。4年ぶりに交尾が確認され、シンシンには妊娠の可能性があります。上野動物園ではシンシンの妊娠を想定し、出産に向けた準備を始めています。


2017年2月27日、同居させたときのリーリーとシンシン

 上野動物園のジャイアントパンダの飼育繁殖の取組みは、1972年に日中国交正常化を記念して初来日した「カンカン」(オス)と「ランラン」(メス)のペア(第1ペア)に始まり、今年で45年になります。カンカンとランランは、1977年、1978年、1979年と3年連続で交尾をしましたが、妊娠の兆候が見られず、残念ながら出産はありませんでした。1979年9月にメスのランランが死亡した際、解剖により胎児が確認されています。


1972年10月28日、カンカンとランラン来園

 1982年に来園した「フェイフェイ」(オス)と1980年に来園した「ホァンホァン」(メス)のペア(第2ペア)は同居させても交尾にいたりませんでしたが、人工授精がおこなわれました。その結果、1985年に「チュチュ」(オス)が誕生しましたが、残念ながら3日で死亡しました。翌1986年には人工授精によって「トントン」(メス)が誕生。無事育ちました。そして1988年、人工授精で3頭目となるユウユウ(オス)が誕生し、元気に成長しました。

体重測定中のトントン
母ホァンホァンとユウユウ

 1992年にユウユウが北京動物園に移動した後、北京動物園から「リンリン」(オス)が来園しました。リンリンの繁殖相手として、2003年にメキシコのチャプルテペック動物園から「シュアンシュアン」(メス)が来園し、第3ペアとなりました。しかし、このペアも同居させても交尾が見られず、人工授精を実施。しかし、妊娠の兆候が見られたものの、シュアンシュアンは出産することなく、偽妊娠と判明しました。せっかくのブリーディングローン(繁殖を目的とした動物の貸借契約)でしたが、シュアンシュアンは2005年にメキシコに帰りました。2008年4月、リンリンが死亡。上野動物園のジャイアントパンダの飼育は約4年の間、途絶えました。

リンリン
メキシコから来園したシュアンシュアンと菅谷元園長

 2011年2月、中国から新たなペア(第4ペア)、「リーリー」(オス)と「シンシン」(メス)が来園しました。2012年の同居で交尾が確認され、7月には出産しましたが、残念ながら6日後に死亡しました。翌年の2013年にも交尾が確認されましたが、偽妊娠でした。その後、2014年、2015年、2016年の3年は残念ながら交尾にいたりませんでした。

 そして、2017年は4年ぶりに交尾が確認されています。

リーリー
シンシン

 45年におよぶ上野動物園のジャイアントパンダの飼育繁殖の取組みの中で、人工授精ではなく自然交配(交尾)による子の誕生と育成はいまだ成し遂げられていません。上野動物園の限りない挑戦です。

〔恩賜上野動物園園長 福田豊〕

(2017年05月26日)



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