上野動物園では1972年10月から今までに12頭のパンダを飼育してきました。
お知らせしたとおり、2017年6月12日にリーリーとシンシンのあいだに子が誕生し、累計の飼育頭数は13頭になりました。上野動物園で生まれたパンダとしては5頭目です。
左から、2017年6月17日、 6月17日、6月26日、7月1日、7月2日
子は順調に成長し、すっかりパンダ柄となりました。出生後の不安定期間とされる10日間を超えた子としては、1988年6月23日に生まれたユウユウ以来、29年ぶりです。この約30年のあいだにジャイアントパンダの飼育技術は進歩し、わずか150グラムほどで生まれる新生児の生存率も大幅に改善されました。
【動画】2017年6月12日の誕生以降、順調に成長するジャイアントパンダの子(メス)。
さて、上野動物園ではリーリーとシンシンの来園を機にジャイアントパンダの飼育管理方法を見直しました。タケを主食とする給餌内容に変え、リンゴやニンジン、パンダだんごなどの副食を減らしました。また、運動させるように心がけ、環境エンリッチメントを進め、運動場の施設も工夫して木に登らせるようにしました。
管理方法を改良した結果、2頭はしだいに上野動物園の環境に慣れ、かつて見られた粘膜便もほとんどなくなりました。また、ハズバンダリートレーニング(動物の健康な飼育と人間の安全な作業を目的として、動物に自発的な行動を取らせるための訓練)を取り入れたことで、2頭の健康状態を把握しやすくなり、無麻酔で血液検査もおこなえるようになりました。行動や体の変化をリアルタイムに把握することも可能になり、発情兆候を見逃すことなく雌雄を同居させたり、出産の兆候をとらえることができるようになったのです。
出産時の子育て支援についても、新しい方法を取り入れました。ユウユウが生まれたときは、子育ては母親に任せ、飼育係は極力見守るようにしていました。そのため、ユウユウの初めての体重測定は生後154日目のことでした。
ジャイアントパンダは約半数が双子を出産すると言われています。双子の場合、母親が2頭を育てるのは容易ではありません。多くの場合、育つのはどちらか1頭です。そこへ飼育係が最小限の手伝いをおこなうことで子の生存率が高まります。
今回シンシンの出産は1頭でしたが、飼育係が子育てに適切に関与し、シンシンを支えています。具体的には、乳房マッサージ、搾乳、乳首への子の誘導、水分補給、子の圧迫死の防止、栄養補給などです。また、飼育係が一時的に母やから子をあずかり、保育器内で子の身体検査をおこなっています。こうした管理によって、泌乳を促進し、育児への集中力を高め、育児放棄や圧死、感染症など、さまざまな危険を回避することができます。
子はまもなく生後1か月を迎えます。今後も順調に成長するよう、上野動物園では引き続き24時間態勢でシンシンの子育てを支えます。子がさらに成長していくには乗り越えなければならない課題がたくさんあります。上野動物園の限りない挑戦が続きます。
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〔恩賜上野動物園園長 福田豊〕
(2017年07月07日)