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イソギンチャクのえさの工夫
 └─ 2023/08/04
 葛西臨海水族園では、多種多様な生き物を飼育展示しています。生き物によって、食べるものや食べ方に違いがあり、私たち飼育係はすべての生き物に十分なえさを与えるために、さまざまな道具を活用しています。今回は、世界の海エリアの「南アフリカ沿岸」水槽を例に、飼育係の工夫と給餌道具を紹介します。

 「南アフリカ沿岸」水槽では、ストロベリーアネモネやフォールスプラムアネモネといった鮮やかなイソギンチャクのなかまを展示しています。これらイソギンチャクは、えさの種類や食べ方が異なり、飼育係はそれぞれに合わせたえさの与え方をしなければなりません。

 水槽壁面に群生している小さな桃色のストロベリーアネモネは、触手を開いて水中に漂うプランクトンを捕まえて食べます。

ストロベリーアネモネ
イリガートル

 葛西臨海水族園では、ブラインシュリンプという小さな動物プランクトンをえさとして与えています。ストロベリーアネモネの触手が常に開いている状態を来園者の方に見ていただくために、「イルリガートル」という液体を少しずつ、安定的に注水する医療器具をつかっています。水槽内にできるだけ長時間、えさが漂うよう環境をつくるために、飼育係は、規定量のブラインシュリンプを1,000ccの海水に希釈し、1日5回に分けて与えています。

 水槽の大きな岩一面についている大型のフォールスプラムアネモネやノブリーアネモネには、小さなプランクトンだけでなく、オキアミやサクラエビといった少し大きめのえさも毎週金曜日に与えています。


フォールスプラムアネモネ

 すべての個体にひとつずつえさを与えたいのですが、触手にえさがふれてからゆっくりと閉じて食べるため、そのあいだに同じ水槽にいる魚たちに横取りをされてしまうことがよくあります。そんな飼育係の悩みを解決する給餌道具として考えたのがこちらです。


飼育係が作成したイソギンチャク専用の給餌道具

 塩ビ管の先端にペットボトルを加工したカバーを付けることで、塩ビ管の先端にあるえさが魚たちに横取りされずに、確実にえさを与えることができるようになりました。


給餌のようす

 このように「南アフリカ沿岸」水槽では、お花畑のようなイソギンチャクの群生を展示するために、飼育係はさまざまな給餌の工夫をしています。水族園で給餌のようすをご覧になる際は、飼育係がどんな工夫をしているか考えてみるのもおもしろいかもしれません。

※フォールスプラムアネモネの給餌のようすはこちらの動画でもご紹介しています。

〔葛西臨海水族園飼育展示係 御子神幸〕

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