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ある日、イソギンチャクが──1
  フォールスプラムアネモネのケンカ
 └─2011/04/29

 葛西臨海水族園で最近イソギンチャクの興味深い行動をいくつか目にしましたので3回に分けてお伝えします。

 東日本大震災の影響で閉園をしていた3月31日のことでした。明日からの開園に向けて水槽の状況を見回っていたとき、色とりどりのイソギンチャクを展示している「南アフリカ沿岸」水槽で何かちょっとおかしいことに気付きました。いつもはまるでヒマワリのように触手を大きく開いているフォールスプラムアネモネのようすがおかしいのです(写真)。

 水槽の中でも水流がよく当たる一等地に陣取っている2個体のフォールスプラムアネモネのうち、向かって左側の個体が右側の個体のほうに体を伸ばしています。ふだんは大きく伸ばしている触手を縮め、その周囲にゴツゴツした小さな玉のようなものが並んでいます。じつはこのとき、イソギンチャクは一等地をめぐってケンカをしていたのです。

 このゴツゴツした玉のようなものは周辺球と呼ばれ、餌を取るときなどに使う触手の刺胞(毒針)とは違う、攻撃用の特殊な刺胞が装備されています。この毒を相手のイソギンチャクに押し当てて攻撃をしていたというわけです。

 3日後、またようすを見てみると、双方とも攻撃用の周辺球を出して、激しい攻防をしているように見えましたが、20日後には最初に攻撃をしかけていた左側の個体が勝ったようで、一等地を独占していました。

 ふだんはあまり動かない印象のイソギンチャクですが、そのアクティブな一面を垣間見せてくれました。

 イソギンチャクの刺胞については次のニュースをごらんください。
 ・毒をもつ生物(11)きれいな花にはご用心

写真1:色とりどりのイソギンチャクが見られる「南アフリカ沿岸」水槽
写真2:ケンカをしているフォールスプラムアネモネ
写真3:3日後のようす。2個体とも周辺球を出している
写真4:20日後のようす。左から来た個体が一等地を独占した

〔葛西臨海水族園飼育展示係 三森亮介〕

(2011年04月29日)



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