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ジンゴロウヤドカリとイソギンチャクのお互い得するくらしかた
 └─ 2022/07/15
 「世界の海」エリア「深海の生物1」の水槽では、トリノアシやクマサカガイ、ジンゴロウヤドカリといった深海に生息する無脊椎動物を中心に展示しています。

 今回は、オレンジ色の身体をした、特徴的な「宿貝(※)」を背負ったジンゴロウヤドカリをご紹介します。

 ※宿貝:ヤドカリのなかまが背負っている貝殻


ジンゴロウヤドカリ

 ジンゴロウヤドカリは、相模湾~日向灘の水深90~400mの砂泥底に生息している日本固有のヤドカリのなかまです。大きさは全長約8㎝で、宿貝には主に巻貝のエビスガイ類の貝殻を使っています。

 そして、上の写真のように、宿貝に使う貝殻にイソギンチャクをつけています。イソギンチャクは刺胞に毒をもつため、ジンゴロウヤドカリは天敵であるタコなどから襲われても身を守ることができ、イソギンチャクはジンゴロウヤドカリのえさのおこぼれにありつくことができるうえ、自力で移動しなくてもジンゴロウヤドカリに運んでもらえます。つまり、お互いにお得なことがある相利共生という関係にあります。

 また、ヤドカリは体が大きくなるとその宿貝も体に合わせて大きいものに引っ越すだけでなく、イソギンチャクも引っ越した貝殻に移動させることが知られていますが、ジンゴロウヤドカリの宿貝についているイソギンチャクのうち、ヒメキンカライソギンチャクなどのなかまは分泌液で宿貝を大きくする種もおり、成長して大きくなって引っ越さなくて済むこともあります。

 水族園で展示しているジンゴロウヤドカリの宿貝に、種は不明ですがイソギンチャクがくっついています。

 ジンゴロウヤドカリにえさを与える時は食べ残しが出ないよう専用の棒を使ってサクラエビを直接与えたり、食べきれる量のサクラエビやゴカイのミンチを水槽の底に撒いたりしています。そのため、イソギンチャクがえさにありつけなくて弱らないよう、イソギンチャクにも直接サクラエビを与えています。


給餌のようす

 深海の水槽は生物に配慮して照明を薄暗くしているため少し見つけにくいかもしれませんが、ジンゴロウヤドカリとイソギンチャクを探して共生しているようすをよく観察してみてください。

〔葛西臨海水族園飼育展示係 関啓汰〕

(2022年07月15日)



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