葛西臨海水族園の世界の海エリアにある「南アフリカ」水槽では、色とりどりのイソギンチャクが展示されています。その中でも、比較的大きく黄色やオレンジ色の触手を持つのがフォールスプラムアネモネです。
このイソギンチャクは、体を縮めて巾着袋のようになっているときもありますが、触手を完全に伸ばした姿はヒマワリのようです。
花のようにきれいな姿ですが、じつはイソギンチャクのなかまは毒を持っています。毒は触手にある「刺胞」(しほう)と呼ばれるカプセルの中に入っていて、刺胞が餌となる獲物や攻撃してくる敵に触れると、中から毒針が発射されます。
この毒針に刺されるとどうなるのでしょうか。筆者はこれを、不本意ながら身をもって知りました。
先日、私は作業中に誤ってフォールスプラムアネモネに触れてしまいました。腕が一瞬当たっただけでしたが、みるみるうちにミミズ腫れになり、チクチクとした痛みに襲われました。このとき、じきにおさまるだろう、とたかをくくったのが大間違いでした。翌朝目覚めると、腕には水ぶくれができ、パンパンに腫れ、治るどころかさらに悪化していたのです。慌てて皮膚科へ行くと、お医者さんも驚くほどの有様でしたが、適切な処置をしてもらい、ことなきを得ました。
今回私が触ってしまったのは、海外産の毒が強い種類でした。生き物のプロであるべき飼育係員としては、あまり人に言いたくない、とても恥ずかしいエピソードですが、みなさんも毒をもつ生物には気をつけていただきたいと思います。
イソギンチャクのなかまは日本の海にもたくさんいます。もちろん、水族園のすぐ裏に広がる東京湾にもいます。毒の強弱にかかわらず、体質によって過敏に反応する場合もあるそうです。どのイソギンチャクであっても、私のように万が一刺されてしまった場合は、すぐに医療機関へ行ってください。
〔葛西臨海水族園飼育展示係 堀田桃子〕
(2010年11月27日)
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