飼料室は「飼料」と「情報」の台所

2026年10月23日

「飼料」とは、動物たちが食べるえさのことです。食べることは私たち人間を含め楽しみの1つであり、とても大切なこと。動物の飼料について興味のある方は多いのではないでしょうか。そこで今回は、そんな動物園の飼料についてご紹介します。

上野動物園には、飼料室という場所があります。そこには専任の職員がいて、すべての動物の飼料の発注・納品・管理などをおこなっています。そして飼育係は、この飼料室からそれぞれ担当動物の飼料を持っていきます。

動物には、動物が本来野生で食べているものを給餌することが理想ですが、ほとんどの場合、野生と同じものを入手することは難しいため、私たち飼料室の職員は、飼育担当者や獣医師と検討しながら代用食を用意することになります。

代用食を選ぶ際に大切なことは、大きく分けて次の3つです。

1.市場などで年間を通じて安定して入手できること
2.比較的安価に入手できること
3.動物に必要な栄養価があること

これらをふまえて、季節性も考慮しながら飼料選びをしています。

いろいろな食性の動物に対応するため、私たちがふだん食べている肉、魚、野菜なども含め、さまざまな種類の飼料を用意しています。とくにゴリラはもっとも品目が多く、20種類以上の野菜を日替わりで与えるので、それに対応できる種類数の野菜を飼料室で発注・管理します。

馬肉
馬肉
アジ
アジ
野菜
野菜
ゴリラ用の野菜類
ゴリラ用の野菜類

飼料の多くは生のまま動物たちに給餌しますが、飼料室では煮イモや煮ニンジン、ゆで卵も用意します。加熱することで、消化しやすく、栄養の吸収が良くなったり、甘味が増して動物がよく食べるようになったりします。高齢の動物用に柔らかくし与えるなど、さまざまな用途があります。

ゆで卵
ゆで卵

飼料は曜日ごとに納品がありますが、天候などで遅れることもあります。そのため業者と密に連絡を取り、もし遅延が発生した場合は、その飼料を必要とする動物の飼育係へ速やかに伝えて対応します。

また、飼料室の仕事は季節によって大変さが異なります。夏は、野菜は冷蔵しても傷みやすいため、在庫管理はとくに注意が必要です。使用する数量を調整しながら発注しなくてはいけません。一方、冬は冷凍庫内の在庫整理が体に堪えます。庫内は約−20℃のため、防寒具が必須です。

冷凍庫の扉
冷凍庫の扉
冷凍庫の中
冷凍庫の中

飼料室では、動物園を応援してくださるサポーターの方々からいただいた資金で飼料を購入することもあります。

たとえば、ニホンザルにはエンドウ豆や殻付きクルミなどを、ゴリラにはショウガの茎などを購入したほか、その他の果実食の動物にもイチジクやグァバなどの果物を購入しています。市場で流通の少ないものは、必要に応じて飼料室で調達先を探しています。

ショウガの茎
ショウガの茎
グァバ
グァバ

また動物園では、農業被害などにより駆除され、適切に処理・管理されたシカの肉を用いて、「屠体(とたい)給餌」をおこなうことがあります。

屠体給餌とは、毛皮や骨、内臓などがついた自然に近い状態の野生動物の肉を、動物園で飼育する肉食動物たちにえさとして与えることです。屠体給餌をおこなうことで、動物園の動物たちの野生本来の行動を引き出したり、退屈な時間を減らしたりすることができます。それと同時に、駆除された野生動物をえさとして再利用することは、命を無駄にしない取り組みにもつながります。

ほかにも、市場で余剰となるレタスの外葉を購入したり、購入した野菜の袋を、衛生管理をおこなったうえで飼料を小分けにするときに使ったりと、身近な点でも環境に配慮しています。

レタスの外葉
レタスの外葉

飼料室で仕事をしていると、直接動物に給餌したり、動物が食べているようすを見たりする機会は限られます。しかし、飼育担当者との連携を通して、動物たちの情報を共有しています。飼料の使用量や種類を変更した際の動物の反応などの情報を受け取り、それに応じてまた飼料の量を調整するなど、とてもやりがいのある仕事です。

ご来園の際は、ぜひ動物たちがどんなものを食べているかにも注目してみてください。動物たちが食べている飼料の裏にもさまざまな飼育業務があることに興味をもっていただけるとうれしいです。

〔上野動物園 調整係〕

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