コサンケイの羽の秘密

2026年10月19日

上野動物園では、2羽のコサンケイを展示しています。みなさんは、コサンケイと聞いて、どのような鳥を思い浮かべますか?

コサンケイは、ベトナムのみに生息するキジのなかまです。オスとメスでは羽の色が異なります。メスは茶色い羽で体のほとんどが覆われていて、尾羽にだけ青く光沢のある羽があります。

コサンケイのメス。茶色い羽で体のほとんどが覆われていて、尾羽にだけ青く光沢のある羽がある
コサンケイのメス

一方、オスは全身に光沢のある青い羽をもち、光の当たり方によって色が変わって見えます。さらに、頭には白い冠羽があり、警戒しているときや繁殖期のメスへのアピールするときに逆立ちます。

コサンケイのオス。全身に光沢のある青い羽をもち、光の当たり方によって色が変わって見える
コサンケイのオス

この光沢のある羽は「構造色」というしくみによって美しく発色しています。

私たちがふだん目にする「もの」や「生きもの」の色の多くは、「色素」によってつくられています。リンゴが赤く見えるのは、リンゴの皮の表面に赤い光を反射し、それ以外の色の光を吸収する色素があるためです。一方、構造色は「色素」によらず発色するしくみです。とても細かく複雑な表面の構造によって光が反射し、特定の波長の光が強く反射されることで、色が見えます。

構造色をもつ生きものは、コサンケイだけではありません。クジャクやカワセミなどいろいろな鳥の羽、さらにタマムシなど昆虫の翅などにもたくさん見られます。身近な動物では、カラスやハトの羽にも構造色の仕組みがあります。

上野動物園のコサンケイも、ぱっと見たときには青色に見えますが、見る角度を変えると深い紫色に見えることがあります。ご来園の際には、ぜひいろいろな角度からコサンケイの羽を観察してみてください。

日陰にいるとき
日陰にいるとき
日向にいるとき
日向にいるとき

ここまでコサンケイの羽の不思議について紹介しましたが、もう一つ、みなさんに知っていただきたいことがあります。コサンケイは2000年以降、野生での生存が確認されておらず、絶滅が危惧されています。

ベトナム戦争のときに、枯葉剤が大量に散布されたことによって森林が枯れ、コサンケイのすむ場所が減ってしまいました。さらに、戦争の終結後も、土地開発や密猟などによって生息数が減少しました。

現在、日本や世界で飼育されているコサンケイは、1924年から1930年にかけてベトナムで捕獲された28羽の子孫です。飼育下で繁殖が進められ、現在では世界中で1,000羽以上が飼育されています。そして世界各地で繁殖したコサンケイをベトナムの繁殖センターに移し、将来の野生復帰を目指す取り組みが進められています。日本でも、コサンケイを飼育している園館が連携し、繁殖に取り組んでいます。

しかし、一度失われた生息地を元に戻すには、長い時間がかかります。戦争は、人の命だけでなく、そこに生きる動物や、その生息環境までも奪ってしまいます。

私たちにできることは、まずコサンケイの現状を知ること。そして、それを多くの人に伝えていくことです。コサンケイの美しい羽を見たときには、その羽の色の不思議だけでなく、その向こうにあるコサンケイの生態や現状にも、ぜひ目を向けてみてください。

〔上野動物園 東園飼育展示係〕

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