ニシローランドゴリラ「ハオコ」の群れのトレーニングについて

2026年7月24日

ゴリラのオスは、30歳を超えると心疾患のリスクが高まるといわれています。そこで、オスの「ハオコ」(今年で33歳)には、健康管理のため採血トレーニングを継続して実施してきました。

ゴリラは人と同様に肘の内側付近から血管にふれることができるため、その部位から採血をおこないます。その際、肘の内側が出るように加工した鉄製の筒から腕を出し、先端を握った状態を維持してもらいます。ゴリラがこちらの意図どおりの動作をしたら、ご褒美(その動作を覚え、自発的にその動作をおこなうように仕向けるための刺激)として、ふだんのえさには入れていない果物を与えながらトレーニングを進めます。

ハオコの場合、上記のような採血器具から腕を出すことは安定してできていましたが、獣医師が針を当てて刺し進めようとすると腕を引いてしまい、採血ができない状態が続いていました。そのため数年前から局所麻酔のクリームを採血箇所に塗り、針を刺すときの刺激を可能な限り少なくするように変更しました。

麻酔クリームを塗るようにしてからも針を刺し進めようとすると腕を引いてしまうことが続いていましたが、今年(2026年)の3月ごろからハオコの集中力が格段に向上し、針を刺しても腕を動かさずに耐えることができるようになってきました。

そして4月には、針を刺しても腕を引かずトレーニングへの意欲が高い状態を維持していたため、実際に採血をおこないました。はじめはごく少量しか採ることができませんでしたが、針を刺す時間の延長を図り、その後は少しずつ採血量を増やすことができるようになりました。

最近の採血では検査に必要な量の血液を採ることができ、健康状態には問題ないことが確認できました。今後もさらに採血時間を延長し、定期的に安定して採血を実施できるようにしていきます。

ハオコの採血
ハオコの採血

採血まで時間がかかったトレーニングでしたが、ハオコ自身と、担当獣医師や飼育係などこれまで携わってきた人々の積み重ねだと感じています。ひとまず健康状態に異常がなかったことと、ハオコの成長について、このようにお伝えできたことをうれしく思います。

そのほかのゴリラについてですが、群れのなかのもう1頭のオスであるハオコの子の「リキ」(今年で9歳)に関しても、採血に向けてトレーニングを開始しました。これまでは室内でも誰かの近くにいることが多かったのですが、年齢があがり少しずつ1頭でいる時間が増えてきたことで、定期的にトレーニングを実施できるようになりました。

以前は格子に手などをかけさせ職員がふれることは短時間しかできませんでしたが、目印となる棒を使用し、その棒にふれる時間を延ばすトレーニングをしたことで、格子に体をつけさせ職員がふれることができるようになりました。そして次の段階として、採血に使用する器具への慣らしを開始しました。

以前からハオコのトレーニングを見ていたためか、採血器具への慣らしはすぐに完了し、採血のため、器具の縁を握らせるところまですぐに進むことができました。しかしリキの場合は、その次の針への慣らしが難しく、まずは痛みのないキャップ付きの針で警戒感を解こうとしても、職員が針を持って近づくと腕を引いてしまうことが続きました。

そこでえさを連続して与えることで、針を近づけると警戒しているようすではありますが、針が肘にふれるのを許容することも増えてきました。まだ針を長時間あてることは難しいですが、少しずつ時間を延長し、さらに慣れていってくれることを期待しています。リキはハオコと比較して落ち着きがなく、トレーニングへの意欲にもムラがあり、実施自体が難しいことも多いですが、ようすを見ながら少しずつできることを増やしていけるように取り組んでいます。

採血トレーニング中のリキ
採血トレーニング中のリキ

心疾患のリスクはオスのほうが高いため、採血のためのトレーニングはオスを中心に進めていますが、そのほかのトレーニングはメスたちにも実施しています。その内容は、触診ができるようにするために、耳、手、足、肩、背中、腹、胸などの体の一部を格子につけてもらい、職員が格子越しにふれるようにすることや、口を開けて口の中の状態を確認することなどです。

リキと「スモモ」(メス)はほぼすべての項目ができるようになり、「コモモ」(メス)も少しずつできる範囲を広げています。

手にふれるトレーニング中のスモモ
手にふれるトレーニング中のスモモ
背中にふれるトレーニング中のリキ
背中にふれるトレーニング中のリキ

今後もそれぞれのゴリラたちの状態を見ながら、できることを増やしていこうと考えています。

〔上野動物園東園飼育展示係〕