カバの口腔内ケアトレーニング

2026年6月30日

現在、上野動物園ではカバを1頭飼育しています。

カバは口腔内にトラブルを抱えやすい傾向があり、定期的なケアが必要とされています。上野動物園でも健康管理の一環として、「ハズバンダリートレーニング」を用いた口腔内ケアを実施しています。

ハズバンダリートレーニングとは、動物の健康的な飼育と、人間が安全に作業をおこなうことを目的として、動物に「飼育係の望む行動をしたらいいことが起きる」ということを繰り返し教えていき、結果的に飼育係の指示にしたがって動物が自発的に行動できるようにするための訓練です。

今回は、口腔内のケアをおこなうために、カバに口を開けてもらって歯を磨くというトレーニングについて詳しくご紹介します。

トレーニングのようす
トレーニングのようす

このトレーニングは、指示を出し褒美を与える担当と歯磨き担当に分かれる必要があるので、2人以上でおこないます。

まず、指示・褒美担当者が「ターゲット」と呼ばれる棒の先に目印のついた道具を使ってカバに指示を出し、歯磨きしやすい位置まで誘導します。

カバの誘導
カバの誘導
ターゲット
ターゲット

カバが望ましい行動を見せると、ご褒美にホースから口に向けて水を流します。

するとカバは自分から口を大きく開け、気持ちよさそうに水を受け続けます。その間に、歯磨き担当者はブラシを用いて歯磨きをおこなうことができます。

自発的に口を開けているカバ
自発的に口を開けているカバ

歯ブラシには、竹製のブラシを竹の棒に取り付けた天然素材のものを使用しています。

竹製のブラシ
竹製のブラシ

これは、万が一カバが口を閉じてブラシを食べてしまった場合でも、体への影響を抑えるためです。

ブラシで歯を磨く
ブラシで歯を磨く

また、ブラシを竹の棒に取り付けることで、カバと歯磨き担当者の手との距離をしっかりと離して、もし歯磨き中に口を閉じられても指が巻き込まれることなく、安全に対処できるようにしています。

下の写真は、採食直後の口の中と、歯磨き後の口の中のようすです。注目していただきたいのは、歯の隙間です。採食直後は、歯と歯肉の間に牧草が挟まっていましたが、歯磨き後にはきれいに取り除かれていることがわかります。

左:採食直後の口の中、右:歯磨き後の口の中
左:採食直後の口の中、右:歯磨き後の口の中

このように、トレーニングによって歯磨きをしっかりおこなうことができると、口の中を清潔に保つことができます。

さらに、口を大きく開けて見せてくれるため、口内炎などのトラブルが起きていないかを直接確認することもでき、健康管理にとても役立っています。

これからも、カバと飼育係の双方が安全に健康管理をおこなえるよう、くふうを重ねながらトレーニングを続けていきます。

〔上野動物園 西園飼育展示係〕

関連記事