サル山にいたニホンザルたちの今
2026年6月25日
サル山について
2024年11月、92年にわたり多くの方に親しまれてきたサル山での展示が終了しました。上野動物園のサル山は完成当初からその姿をほとんど変えておらず、日本の動物園にあるサル山展示の先駆けとなりました。
サル山の展示が終了して以降、2025年にはパネル展示、動画配信、ガイドツアー等のイベントを実施し、みなさまに惜しまれつつ解体作業がおこなわれました。
擬岩の上部は、長いあいだ上野動物園を見守ってきたサル山の歴史を未来へつなぐ象徴として、「さるやまキッチン」前に移設・展示しています。92年前からほとんど姿を変えなかったサル山の姿を間近でご覧ください。
ニホンザルの群れについて
サル山でくらしていたニホンザルたちの今のようすをご紹介します。この群れは、2010年に青森県の下北半島から上野動物園に来園しました。下北半島に生息しているサルは、ヒトをのぞいた霊長類のなかで世界でもっとも北に生息している「北限のサル」として世界から注目されており、国の天然記念物にも指定されています。
しかし、青森県では農作物被害の拡大や人的被害が問題となり、被害をもたらしている群れを対象に駆除がおこなわれました。そこで、上野動物園では駆除対象となった群れをサル山に迎え入れることになりました。搬入当初23頭いた群れは、現在35頭になり、非展示エリアの仮設動物舎にて飼育管理をしています。
ニホンザルの飼育
仮設動物舎はサル山を取り壊してから新施設を建設するまでのあいだ、一時的に飼育するためにつくられた施設です。ニホンザルは動物愛護管理法上の「特定動物」(人の生命、身体財産に危害を加えるおそれのある動物)にあたるため、一時的とはいえ飼育基準をクリアした丈夫な施設で管理しています。
動物園では青草、シラカシやネズミモチの枝葉、季節の野菜、サル用の固形飼料などを与えています。野生のニホンザルは、食べ物が少ない夏や冬に向けて、春と秋にたくさんのえさを食べます。そこで、それに合わせて春と秋にはヒマワリの種などカロリーが高いえさも与えています。
給餌をすると、サル山でくらしていたときと同様に、強い個体は地面にいることが多く、弱い個体は比較的高いところにいることが多いです。給餌は一日に4~5回おこないますが、1回目は野菜、2回目は青草、3回目は枝葉、のように回ごとに種類を変えて、それぞれまとまった量を与えています。毎回いろいろな種類のえさを少しずつ与えると、強い個体がその都度好きなえさを独占してしまうからです。
環境エンリッチメント
仮設動物舎は展示もしていない施設ではありますが、ニホンザルたちが数年間過ごす場所です。サル山より飼育面積も小さいため、アニマルウェルフェア(動物福祉)をどのように維持するかが課題となっています。そこで仮設動物舎では、サルたちの多様な行動を引き出し、健康に過ごしてもらうために、いろいろな工夫をしています。今回はその「環境エンリッチメント」の一部を紹介します。
まず、給餌においては、えさを取り出すのに工夫が必要な給餌器(以下フィーダー)を取り付けて採食時間を延ばしたり、園内で採れたタケノコやサクラの枝葉、殻付きのクルミなどを与えて刺激したりしています。また、ケージの天井の金網の上にえさを置いてみるだけでも、天井にぶら下がって器用にえさを取り込むようすが観察できます。
また、消防ホースを部屋の中に張り巡らせたり、ハンモックやプラスチック製のタルをぶら下げたりして行動できる範囲を増やすようにしています。おそるおそる消防ホースの上を移動したり、ハンモックにジャンプして飛び移ったりと、行動のレパートリーを増やすこともできました。
これらの環境エンリッチメントに取り組むにあたり、ふだん与えていないえさやフィーダー用の容器・消防ホースなどはサポーター資金を活用しています。みなさまの支えにより動物園の動物たちがより生き生きと生活することができています。
暑熱対策
下北のニホンザルは、先にも述べたように地球上でもっとも北に生息しているため、毛の密度が高く、寒さに強いです。一方で暑さにはあまり強くないので、仮設動物舎では暑熱対策をおこなっています。
まずは日よけです。ケージの上の約半面を寒冷紗で覆っています。ただ寒冷紗を張るだけだとサルに引き込まれてしまう可能性があるため、木枠で高さを出してサルが触れないようにしています。
続いてスプリンクラーです。これはサル山でも使用していたものを仮設舎でリユースしています。水にあたりに来る個体もいれば、嫌そうに逃げる個体もいますが、地面が濡れるだけでも少し涼しくなります。
また、昨年度はうまくいきませんでしたが、今年は施設係にも協力してもらい、グリーンカーテンを設置してみました。夏季にはツタが伸びて日陰が増えることを期待しています。
展示をしていない動物舎ではありますが、今後もサルたちが過ごしやすい環境づくりを目指していきます。新たなニホンザル施設とともに、ニホンザルの今後にもご注目ください。
〔上野動物園 東園飼育展示係〕

