中学生対象イベント「うえのZOOスクール」開催報告
投稿日:2026.04.13
更新日:2026.04.13
2026年3月1日に中学生対象うえのZOOスクール「動物の給餌器をつくってみよう──検証!野生に近い行動を引き出せるか?」を開催しました。今回は「環境エンリッチメント」をテーマとして、動物たちに野生と同様の行動をしてもらうための給餌器を中学生たちが自ら考案・製作し、その効果を行動観察によって評価しました。
※環境エンリッチメント:飼育下でも野生と同じような行動を引き出したり、動物が選択できる環境を整備したりすることで、動物の心身の健康を保つための手段
中学生たちは、まず初めに環境エンリッチメントや行動観察の手法について教室とキリンの展示場で学んだあと、今回給餌器を製作する対象動物のいる小獣館に移動し、ヨザル班、キンカジュー班、コビトマングース班に分かれて観察をおこないました。ここでは、ふつうの餌皿から食べるようすを観察し、行動のレパートリーやその割合を科学的な手法で記録しました。
その後、記録した結果を事前に調べてきた野生でのくらしやえさの食べ方と比較して、動物園での問題点を洗い出しました。そして、動物園でどんな行動を引き出したいかをグループで話し合い、計画書を作成したうえで給餌器の製作に取りかかりました。
中学生たちは、柔軟な発想力で用意されている材料を組み合わせながら、野生での行動を引き出す給餌器を完成させていきました。
まずは、ヨザル班。ヨザルは、ニホンザルなどの一般的なサル(真猿)のなかでは珍しく夜行性です。野生では不安定な木の枝の上で、じょうずに体のバランスをとりながら果実をとるので、そんな行動を引き出すための給餌器を製作しました。
ヨザルは暗いなかでもにおいでえさを探せるため、給餌器の中身を見えないようにくふうしました。その結果、給餌器をさわったり、においを嗅いだりするなどの行動が増え、えさを食べるのにかける時間を延ばすことができました。
続いてキンカジュー。キンカジューはアライグマのなかまで、南米の熱帯雨林の樹上でくらし、果実を主食とします。
彼らは、後ろ足や長いしっぽだけで枝にぶら下がることができます。この行動を引き出すことを目的に、ゆらゆらと動くヤジロベエのような設計にしました。
すると、見事にしっぽだけでぶら下がる、後ろ足で枝をつかんで逆さになる、カップを器用な前足で持ち上げるといった行動が見られただけでなく、移動する頻度が増えるなどの目的を達成することができました。
最後はコビトマングース。野生では、群れで移動しながら、土の中にいる昆虫などのえさを前足で掘り出して食べます。
今回は、この前足で土を掘るという行動を引き出すことを目的としました。ダンボールでできた筒に大きさの異なる穴を開けて、その中にえさといっしょに牧草や床材などを詰めた給餌器を、大小さまざまなサイズで製作しました。
その結果、前足で中身を掘り出す行動が増えただけでなく、えさを取り出すのに時間がかかる給餌器を複数作ったことでえさの取り合いが減るなど、群れの中でどの個体も平等にえさが食べられるようになりました。
観察が終わったあとは教室に戻り、グループで協力してまとめに取り組みました。ふつうの餌皿のときと製作した給餌器を使ったときの動物の行動を比較して給餌器の効果を評価し、結果をポスターにして発表をしました。
1日がかりのとてもハードなスケジュールでしたが、参加した中学生たちは自分たちで製作した給餌器が動物にどう使われるのか、興味津々にじっくり動物を観察していました。そして、実際にくふうした仕掛けに合わせて動物が動いた瞬間には、達成感や充実感が表情に表れ、思うようにいかなかった場面でも観察から得た気づきをもとに改善点を考える姿が見られました。
アンケートでも、「給餌器1つで動物の行動に変化を加えられることに驚きました」「人と動物の安全を考えて作る難しさを知りました」といった声が多く、課題を解決するおもしろさと同時に、、動物を相手にくふうする難しさ、そして観察によって新たな発見が得られる喜びを実感できたように思います。
今回、中学生たちが作成した発表ポスターを2026年4月14日(火)~5月31日(日)のあいだ、小獣館1階に掲出します。この記事を読んでくださっているみなさまも、次に動物園へお越しの際は、こちらのポスターをご覧いただくとともに、園内各所にあるさまざまな飼育のくふうにもぜひ目を向けてみてください。
〔上野動物園教育普及課 教育普及係〕

