インカアジサシ、2025年の繁殖

投稿日:2026.04.05

更新日:2026.04.05

2025年、上野動物園にある「子ども動物園すてっぷ」で、3年ぶりにインカアジサシのひなが誕生しました。

インカアジサシは、南アメリカのエクアドルからチリにかけて太平洋沿岸の岩場に生息し、岩穴や岩と岩の隙間に巣を作ったり、ほかの鳥たちが使った巣を利用したりして繁殖をします。上野動物園のインカアジサシ展示場は、ゴツゴツとした擬岩で岩場をつくり、生息地を模したつくりになっています。ここに巣穴が8つあります。

生息地を再現した岩場
生息地を再現した岩場

インカアジサシの繁殖期は春から夏ごろで、1回の産卵で2個の卵を産みます。2025年は3つのペアが誕生し、4月上旬から5月初旬にかけて産卵しました。そのうち2ペアの巣で計4卵が孵化しました(2025年5月4日に2羽、5月12日と14日に1羽ずつ)。

孵化後1か月あたりまで、ひなの体はふわふわとした灰色の綿羽で覆われています。また、インカアジサシの特徴であるヒゲのような飾り羽はまだ生えておらず、嘴の色も成鳥のような鮮やかな赤ではなく黒色です。

2025年5月4日に孵化したひなと親鳥
2025年5月4日に孵化したひなと親鳥

インカアジサシは、抱卵から子育てまでをペアでおこないます。親鳥たちは、ひなを守る役とえさを運ぶ役に分かれ、ときに役割を交代しながら、ひなのためにえさ皿と巣を何往復もしてえさを運びます。

ひなたちは、孵化直後から親鳥たちと同じえさを食べます。上野動物園では、キビナゴ、オキアミ、トキ用の固形飼料をえさとして与えていますが、親鳥たちは、その中からおもにオキアミとキビナゴを巣へ運び、ひなに食べさせていました。ひなたちはえさを丸飲みするため、大きめのキビナゴは、ひなが飲み込みやすいように飼育係があらかじめ半分に切りました。

親鳥からえさをもらうひなたち
親鳥からえさをもらうひなたち

孵化後10日ほど経つと、ひなたちは巣からひょっこりと顔を覗かせ、巣の入り口付近で親鳥にえさをねだって鳴くようになりました。かなりの頻度で絶壁に立っているため、巣から落ちてしまわないかヒヤヒヤしながら見守る日々が続きました。

孵化後1か月が経過するころには、ふわふわとした綿羽が生え換わり始め、成鳥のようなしっかりとした羽に変化してきました。ときおり羽をばたつかせ、今にも飛び立ちそうなようすも見せるようになりました。

残念ながら孵化した4羽のうち2羽が死亡してしまいましたが、残った2羽はすくすくと成長し、孵化後1か月半でひなが初めて巣から離れている場所にいることを確認しました。そこで、この時点で巣立ちと判断しました。

巣立ちをしてから、自力で採食ができるようになったり、プールで水浴びしたりと、成鳥と同じような行動をとることが増えていきました。日に日に飛ぶのが上手になり、今では飼育係が投げたキビナゴを飛びながら空中キャッチすることもできるようになりました。

巣立ちした直後のひな(右下)
巣立ちした直後のひな(右下)

そして、10月下旬には、ひなたちにとって初めての健康診断を実施しました。 

インカアジサシ舎でくらす鳥たちは、1年に1回体重測定や採血などの健康診断をおこないます。ひなたちには健康チェックに加え、足環を装着し、個体識別番号の入ったマイクロチップを挿入しました。足環は飼育係が外見で見分けるための名札の役割を果たします。

足環を装着
足環を装着
足環を装着したひなの足
足環を装着したひなの足

孵化後11か月が経ち、立派な若鳥となった最近では、頬に黄色い皮膚が露出してきており、少しずつ外見も成鳥に近づいてきていることが感じられます。完全におとなの姿になるまでは、あともう一年です。

そして成鳥たちは、今年(2026年)は3月上旬から産卵を始めました。今年もひなたちが生まれることを願い、そっと見守っています。

少しずつおとなに近づいていく昨年生まれの若鳥たちと、新たな繁殖期に入った成鳥たちを観察しに、ぜひインカアジサシ舎へおこしください。

最近の若鳥たちの様子(手前の2羽)
最近の若鳥たちの様子(手前の2羽)

〔上野動物園 子供動物園係〕

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