葛西臨海水族園には飼育展示係や教育普及係など、さまざまな部署があります。
今年35周年を迎える記念企画の一つとして、各部署のリーダーたちが「理想の展示・水族館」や「今後の仕事でやりたいこと・夢」などをテーマに「水族園リーダーたちの夢」と題してして連載記事を掲載します。
第10回「ホスピタリティを大切に」
みなさんの水族園の楽しみは何でしょうか。マグロの回遊水槽や世界の海の水槽、ペンギンや海鳥の展示などいろいろと思い浮かぶかもしれません。その中に
レストランでの食事や
ギフトショップのお買いものは入っていますでしょうか。これら1番目に浮かべる方は少ないと思いますが、「ああー、確かに楽しみのひとつかも」と思っていただけたら安心します。そう、私の所属は販売係です。園内のフードショップとギフトショップを担当しています。
さて、販売係の仕事は、フードショップであれば安全安心においしいものをつくり、多様な方々が楽しく快適にすごせる場所を提供することです。水族園といえばマグロが人気ですが、メニューでも一番人気は「マグロカツカレー」です。大判なマグロカツとスパイシーでコク深いカレーソースの組み合わせが好評をいただいています。

一番人気の「マグロカツカレー」
食育というほど大げさなものではありませんが、魚のことを学び大切な命を食し、食を通して生きものを感じていただければと思っています。そのほか、島しょ地域の食材を使用した地産地消や環境負荷の少ない食材の使用を推進するなど、エコ活動への取組みも積極的におこなっています。展示を思い出しながら食事を楽しんでいただける場所となるように笑顔での接客を心がけています。

島しょメニュー「八丈島 海の幸プレート」
また、ギフトショップでは、ぬいぐるみやお菓子、雑貨など「海」に関係した幅広い商品を取りあつかっています。水槽を泳ぐ生きものはなかなかさわることができませんが、ぬいぐるみやフィギュアなどは手に取ることができます。実際の感触というわけにはいきませんが、生きものの特徴を伝えるうえでふれる、近くで見られるというのは興味をもつための大きなポイントだと考えています。
たとえば「クロマグロのぬいぐるみ」ですが、体の後ろのほうをよく見ると、上下に小さな黄色い鰭(ひれ)、小離鰭(しょうりき)がならび、尾鰭(おびれ)の付け根には尾柄隆起(びへいりゅうき)があります。この鰭や突起を見て、これは何だろう?と思ってもらえればこちらのものです。気軽に商品を手に取ってもらうために「見ため」は重要ですが、そこから一歩、海の生きものに近づくための「本物」を表現することを大切にしています。

こだわりの「クロマグロのぬいぐるみ」S、M、2Lサイズ
販売係として仕事をしていますが、じつは小学校の卒業文集で将来の夢はプロ野球選手か水族館の飼育員と書いていました。大の海好きです。大学は海洋生物を専攻しましたが、卒業後は海とは関係のない仕事に就きました。転職をして東京動物園協会で働くことになり、15年ほど経って昨年に初めて葛西臨海水族園に配属されました。飼育係ではありませんが、小学生のときに夢見ていた水族園で働くことになるとは、不思議な縁を感じています。
水族園で働く海好きの一人として、夢は商品を通じて多くの方に海に興味をもってもらうことです。そのために販売係としてできることは何か。それは「おもてなし」なのだろうと考えています。サービスではなくホスピタリティです。たとえ環境に配慮したメニューや商品を開発しても、機械的に提供したのでは心に響かずにその場だけで忘れられてしまいます。開発にいたるストーリーを自分の言葉で伝えることが私の「おもてなし」であり、それが誰かの行動につながれば、本当に意味があるメニューや商品になるのだと思っています。
これからも楽しみながら海のことを知ってもらえるようなお店づくりをめざします。水族園にお越しの際はぜひお店にお立ち寄りください。
〔葛西臨海水族園販売係長 小島一輝〕
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(2025年02月28日)