葛西臨海水族園には飼育展示係や教育普及係など、さまざまな部署があります。
今年35周年を迎える記念企画の一つとして、各部署のリーダーたちが「理想の展示・水族館」や「今後の仕事でやりたいこと・夢」などをテーマに「水族園リーダーたちの夢」と題してして連載記事を掲載します。
第3回「水族園を背後で支える施設の維持管理の仕事に携わってみませんか」
みなさんは、水族館で展示しているいろいろな生きものたちが、どのような環境で生活しているか、考えたことはありますか?
私が所属する施設係では、水族園で飼育・展示している多くの生きものの命を維持するうえで不可欠な、水槽の水を循環・浄化する機器類をはじめ、お客さまの快適な利用に必要なエスカレーターや冷暖房機器類、そして、屋外の園路や樹木、花壇にいたるまで、じつにさまざまな施設を管理しています。

マグロ水槽用循環ポンプと配管類
具体的には、日ごろから施設に異常がないか点検をおこない、不具合があればすぐに補修や部品交換をおこなうなど必要な対応をおこなっています。これらは、生きものたちの生命を維持し、お客さまの安全、安心な利用を確保するため、常に迅速な対応が求められるため緊張感があります。
私は、電気の分野が専門ですが、就職したときは、浄水場や給水所の運転、設備の維持管理や工事の設計・監督などをおこなってきました。また最近では、河川の水門、ポンプ場の維持管理や工事、さらには水害などに対する情報発信やDXに関する業務にも関与してきました。就職当時は、水族園に勤務するとは想像もつきませんでしたが、「水」に関わる仕事を続けてきただけに、これも何かの縁だと感じています。
そんな私が、水族園に来て施設を見たときは、特徴的な建物の中に多種多様な配管や老朽化した機器類が所狭しと設置されており、それらを維持管理するのは、やりがいを感じるとともに、ある意味、途方もない作業に思えたのも事実です。
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ろ過装置と複雑な配管 | ずらっと並んだろ過装置 |
水族園は、お客さまにレクリエーションの場を提供する役割もありますが、地球環境の保全や、生物の多様性保全、環境教育や調査研究などの役割が期待されています。最近は、省エネや動物福祉の視点も見据えた管理が求められるようになりました。
そのため、日ごろの機器類の運転やメンテナンスなどをおこなう際、生きものに可能な限り負担をかけないようにするには、どうすればよいかを考えるようにしています。
生きもの、お客さま、働く職員そして地球にも優しい水族園をめざしていくことは、課題も多くおおいに悩むこともありますが、技術者として冥利に尽きるところでもあります。
最後になりますが、水族園には、多種多様な施設がそろっており、施設の維持管理の経験を積むにはもってこいのフィールドです。
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館内動力の供給源である電気設備 | 水を浄化させるオゾン処理設備 |
「どうやって水族園の生きものたちを飼っているのだろう?」そう思ったあなた。ぜひ、水族園で施設管理の仕事にも携わってみませんか?
〔葛西臨海水族園施設係長 田辺孝博〕
・連載:35周年企画「水族園リーダーたちの夢」
[1]水族園の展示に込める思い
[2]水族園の目指す道──ずっと身近でいてほしい
[3]水族園を背後で支える施設の維持管理の仕事に携わってみませんか
[4]楽しく学べる水族園
[5]海をつくりたい
[6]アクア・ポジティブ
[7]インクルーシブな水族園を目指して
[8]夢見るおじさん
[9]水族園の「船頭」のお仕事──「夢の続き」をご一緒に!
[10]ホスピタリティを大切に
[11]ショップ・レストランから伝えたい!! いきものの魅力・大切さ
(2024年06月28日)