細部:ピンポイントで観察しましょう

[その目が!! (1)] ♪どんなに上〜手に隠れても〜 -グースフィッシュ-
[その目が!! (2)] 見透かされそう -キンメダイ-
[そのおでこが!!] どっかりと構えるベラのボス -メガネモチノウオ-
[その鼻先が!!] 天敵はウミネコ? -スポッテッド ラットフィッシュ-
[そのヒゲが!!] 長いヒゲをびろびろ〜っ、と -ホウライヒメジ-

[その目が!! (1)]
♪どんなに上〜手に隠れても〜 -グースフィッシュ-

goosefish Lophius americanus
アンコウ目 アンコウ科
グースフィッシュ

 グース(カモ)の名は、その味がカモに似ていることからつけられたそうです。別名ではアングラー(釣り師)フィッシュとも呼ばれます。こちらの名は、ミドリフサアンコウなどと同様に、頭の上に釣り竿状のものと疑似餌を持ち、それを使ってエサをつかまえることから来たものです。うっかり疑似餌に気をとられようものなら、近づいた瞬間にひと呑みにされてしまいます。
 本来住んでいるところは水深30〜500mという深いところなのですが、水面まで上がってきて海鳥を食べたという記録もあるそうです。

 体は1.2mと比較的大きいですが、砂に潜っているため、水槽の中を見てもその大きさはわからないかも知れません。それでも、その目はまん丸く飛び出ている上に大きいので、結構目立ちます。
 写真では、左下の方に口があるのですが、わかるでしょうか……?

[その目が!! (2)]
見透かされそう -キンメダイ-

slender alfonsino Beryx splendens
キンメダイ目 キンメダイ科
キンメダイ

 その体は真っ赤で、目は大きく金色に光り、それが名前の由来となっています。泳ぐ力のほとんどを胸びれのあおりに頼った独特の泳ぎ方をし、胸びれを動かす筋肉は発達しています。
 水深200〜700m前後の深海に住むタイの仲間です。ただし、夜には浅いところへも上がってくるそうです。目がらんらんとして大きいのは、暗い深海や夜でも、ものをよく見るために発達したからだと思われます。

 他にも目の大きな魚はたくさんいます。例えば、キンメダイと同じ水槽に入っているムツ(オキムツ)。これもやはり200〜700mくらいの深海に住む魚です。ムツの場合、小さい頃は 沿岸で暮らし、体の大きさが30cmくらいになると、深海の方に住むようになります。成長と住みかの移動にともない、体の色も黄色っぽい色から青黒くなります。成魚は、大きいものとなると1.5mを超えるそうです。

 アカマツカサも目の大きな魚です。キンメダイの仲間ですが、葛西では『深海』とは別の水槽にいます。こちらは水深10m前後と、かなり浅いところにいるようです。夜行性で、昼はサンゴ礁やの崖穴などに潜んでいます。下あごの先が上あごよりも出ているのが特徴です。目のすぐまわりの上下が黒くなっているので、猫のような縦長の目に見えます。また、内耳と浮き袋の前端がつながっているという特徴も持っています。どうしてそのような構造になっているのか、はっきりわかってはいませんが、音が聞こえやすくなるのではないかと考えられています。
 いずれにしても、これらの種の大きな目はなんだかギラギラしていて、見ているとこちらの方が見透かされているような気分になってしまいます。

[そのおでこが!!]
どっかりと構えるベラのボス -メガネモチノウオ-

humphead wrasse Cheilinus undulatus
スズキ目 ベラ科
メガネモチノウオ

 どこかの電機会社のテレビの宣伝に出てからでしょうか、「ナポレオンフィッシュ」の名は多くの人に知られ、人気が高まったのだと記憶しています。人気といっても、ペンギンなどのように可愛いから人気、というのとはちょっと違う気がします。どちらかというと「怖いもの見たさ」に近い感覚なのではないかと、私は勝手に想像しているのですが……。

 約2mという、ベラ類最大の体も凄まじいですが、分厚いくちびる、突出したおでこも、一度見たら忘れられないインパクトがあります。また、他のベラにも見られるものがありますが、幾何学模様か、はたまた脳みその溝のような模様(こういう表現をすると余計気持ち悪く思われるかも知れませんが)とその色あいが、なんとも言葉を失ってしまいます。

「メガネモチ」という名は、若魚の眼の後ろに2本の黒い縦筋があり、それが眼鏡のように見えることから来ているようです。「ナポレオン」の方は、おでこの突出したその形が、ナポレオンのかぶっていたような軍隊帽に似ていることから来ています。
 おでこのこぶ、これは老成したメガネモチノウオだけに見られるもので、幼魚にはありません。また、体色も、成魚では青みがかった色ですが、幼魚は淡い褐色をしています。
 たくさんの魚がこまこまちらちらと泳ぐ大水槽の中で、メガネモチノウオの大きな顔がゆっくりとこちらに近づいてくると、かなり迫力があります。それはいかにもその水槽の中の「ボス」という風格です。
 香港や沖縄では、高級な食用魚だそうです。食べるにも勇気が要りそうですが……。

[その鼻先が!!]
天敵はウミネコ? -スポッテッド ラットフィッシュ-

spotted ratfish Hydrolagus colliei
ギンザメ目 ギンザメ科
スポッテッド ラットフィッシュ

 基本的には深海に住んでいるようですが、住んでいる範囲は表層から水深900mあまりまでと、かなり広いようです。
 その名の通り、黒っぽい背に白い斑点(スポット)を持っていて、その鼻先や歯はネズミ(ラット)のそれに似ています。ちょっと無理があるかも知れませんが、頭上に向かってのばした時の大きな胸びれが、なんとなく耳のように見えてくると、ますますネズミっぽいと言え……ないこともないと思うのですが、いかがでしょうか?

 大雑把に言って同じサメの仲間であるアカシュモクザメとは違って、ギンザメの仲間は卵生です。スポッテッドラットフィッシュの場合、長さ13cmほどの長細い殻に入った卵を産み、卵が孵化するには数カ月もかかるそうです。現在葛西にいるスポッテッドラットフィッシュの中には、葛西で産まれた卵から孵化したものがいます。
 ちょっと見ていると、不思議な動きをしています。宙返りを繰り返すように泳いでいるものがいるのです。これはどうしてなのでしょうか?

[そのヒゲが!!]
長いヒゲをびろびろ〜っ、と -ホウライヒメジ-

white-lined goatfish Parupenueus Ciliatus
スズキ目 ヒメジ科
ホウライヒメジ>

 浅い岩礁帯やサンゴ礁に住んでいて、いつも海底付近にいます。下ばかり見て何をしているのかと思っていると、不意にびろびろ〜っと、あごのところから黄色いヒゲが2本飛び出てきます。びろびろっとやってはヒゲをしまい、またびろびろっとやってはしまい、を繰り返してうろうろしています。まるでヘビの2枚舌のようです。初めてみた時はかなりびっくりしました。ヒメジの仲間は、このヒゲで底をあさってエサを探しているのです。
 魚にとってのヒゲは、人間とは違って大事なもののようです。ヒメジの他にもテングダイが、やはりあごの下にヒゲを持っています。写真はテングダイです。こちらはびろびろするものではなく、短く生えた不精ヒゲのようなものですが、これで底をあさってエサとなる小動物などを探すのです。

テングダイ

 ホウライヒメジは全体的に赤く、地方によってアカカタカシ(沖縄など)、メンドリ(関西)など、その鮮やかな色からとったと思われる呼び方が使われています。ホウライヒメジは体の前半分に白い縦すじ(泳いでいる時に横すじに見えるものが、魚にとっての縦すじです)があり、背中の後ろの上の方には白と黒の斑紋があります。よく似た種類にオキナヒメジというのがいて、その斑紋の大きさで区別ができると言われていますが、必ずしもはっきりと見分けられるわけではなく、学術的な分類や学名も、まだ混乱しているようです。


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