顔?:やっぱり顔だけが全てじゃないよな

人気の秘密はそのしぐさ -フンボルトペンギン-
だーるまさーんが…… -ナーサリーフィッシュ-
究極の癒し系? -ミズクラゲ-
まとわりつく子犬のような魚 -ホンソメワケベラ-
"優雅な姿"か "ボロ"か -リーフィ シードラゴン-
派手な振袖に三つ指で歩く魚 -ホウボウ-

人気の秘密はそのしぐさ -フンボルトペンギン-
Humboldt penguin Spheniscus humboldti
ペンギン目 ペンギン科
フンボルトペンギン

 葛西水族園の1番人気はなんと言ってもペンギンです。それどころか、どこの水族館、動物園でも、ペンギンは常に人気の上位を確保しています。
 日本人はペンギンが大好きです。もちろん私も大好きです。それも、今までにいくつか行ったことのある動物園、水族館の中でも、私は特に葛西の子たちがお気に入りです。
 葛西には、フンボルトペンギンの他にイワトビペンギンフェアリーペンギンがいますが、1番のお気に入りはやはり、胸に斑点を持ち、ピンクのくちばしのフンボルトペンギンです。
 2枚目の写真がイワトビペンギンです。他の3枚はフンボルトペンギンです。

 ペンギンというと南極の寒いところに住んでいるというイメージが強いかも知れませんが、本当に南極に住んでいるのは全18種中数種です。葛西のペンギン展示が氷を模したものでなく、サル山のような岩肌になっているのは、そこにいるペンギンが住む所に近いようにした結果なのです。
 フンボルトペンギンは、自然の世界ではフンボルト海流の側ペルーやチリなどの南米に住んでいます。しかし今、絶滅の危機にさらされており、世界中で約13000羽しか残っていないと言われています。葛西には約130羽がいて、日本全国では約1300羽がいます。つまり、全世界の個体数の実に10%が日本に(全て飼育下)いるということになります。絶滅から救うため、東京都ではズーストックという計画があり、フンボルトペンギンは保護種の1つに指定されています。

イワトビペンギン

 葛西のフンボルトペンギンの魅力は、その元気のよさにあります。今(2001年12月現在)は残念ながらプールが工事中ですが、そうでなければ、プールの中が見られるようになっているので、ぜひそこを見てみてください。アクリル板越しに指か何かを見せてちらちら動かすと、ペンギンたちはそこに注目します。ひゅっと潜ってすごい速さで泳いでいたのに、きゅっと止まってそこを振り返るのです。指を動かすとそれに合わせて顔を動かします。その姿はさながら「泳げる猫」といった感じです。

 また、水面に浮いている時もただ浮いているだけではありません。よく見ると、片方の羽を体にぴったりつけて、もう片方の羽を水面下で動かし、横泳ぎ状態になっている子がいます。あれは何をしているんでしょう?

フンボルトペンギン2

 さらにさらに、面白いエピソードを1つ。工事中のペンギン舎を観ていた時のことです。プールはすっかり水を抜いて、フェンスが張られ、ペンギンたちはその向こうの岩場にいて、フェンス越しにプールの方をうかがっていました。
 と、フェンスに抜け穴があったらしく、2匹のフンボルトペンギンがプールの方に抜け出してきたのです。飼育係の方がそれをみつけて、つかまえにかかりました。ペンギンたちは大慌てです。狭い岩場をうろうろし、プールの方を覗き込みますが、普段なら水のはってあるプールは、水がないとその高さが2mほどもあり、ペンギンたちも躊躇しているようでした。

 しばらくそんなことを繰り返した後、とうとう、というか、うっかり足を滑らせて、というのか、1匹が飛び下りました!べちゃっという音がして、顎までぶつけたようで、観ていた人たちが「怪我をしたんじゃないか」とざわめいたその矢先、ペンギンはひょこっと立ち上がって、浅瀬になる方へべちべちと走っていったのです。
 その速さがまた……よちよち歩きの普段からは想像もつかない速さ。ばたばたばたーっと走っていき……しかし、足はいつものおぼつかない短足のままなので、足がもつれたのか、転ぶシーンも見られました。それでもどうにかこうにか端まで逃げていって、フェンスのところまで来ました。フェンスの向こうでは、仲間たちが心配そうに(単なるやじ馬?)、見ています。

フンボルトペンギン3

 飼育係の方が近づくにつれ、ペンギンの焦りはこちらから見てもはっきりわかるほど高まっていきました。フェンスにくちばしを突っ込み、必死に羽をばたばたさせ、足も地面を蹴りまくって、なんとか逃げようとします。必死のあまり、地面を蹴った足が宙に浮いて、体がひっくり返ってしまうほど……。
 見ていた人たちも大笑いです。まるでディズニーだかワーナーだかのマンガを見ているようでした。

 最終的には飼育係の方につかまり、仲間たちのいるフェンスの向こう側に戻されました。戻されてみるとあっさりおとなしくなり、そうまでしてどこへ逃げたかったのか、さっぱりわからないくらいです。
 もう1匹の方はもっとあっさりつかまり、こちらもフェンスの向こうへ戻されました。
 2mを飛び下りた方の子は、怪我をしていないといいのですが……いやぁ、それにしてもホント、見ていて飽きない子たちです。

だーるまさーんが…… -ナーサリーフィッシュ-
nursery fish Kurtus gulliveri
スズキ目 クルトゥス科
ナーサリーフィッシュ

 別名コモリウオとも言われるこの魚は、オスが頭のフックのような部分に、メスが産んだ卵のかたまりをひっかけてふ化するまで子守りをします。
 汽水域といって、海と川の混じる茶色く濁ったところ、例えば河口などに住んでいて、目の前に来たエビや小魚を食べるのですが、実は分類、生態など、はっきりわかっていないことが多いそうです。

 体の色は半透明で、尻尾に向かってきゅっと絞まった形をしています。腹びれが腹全体に渡っているところが特徴的ですが、それ以上に特徴的なのは、その動きです。水中にホバリングした状態で、ほとんど動きません。水槽の中のナーサリーフィッシュがみんな見事に止まっていて、「だるまさんが転んだ」なんて言いたくなってしまう感じです。水の濁ったところに住んでいるので、動きまわるには便が悪いため、自分は動かずに目の前に来たエサを食べるのではないかということです。

究極の癒し系? -ミズクラゲ-
moon jellyfish Aurelia airita
ミズクラゲ(旗口クラゲ)目 ミズクラゲ科
ミズクラゲ

 海水浴に行った時などによく見る、半透明の生き物。ビニール袋が捨てられているのかと思いきや、それはクラゲです。最近では「癒し系」のペットとして、水槽で飼っている方もいるようです。
 傘のまん中に4つの赤い点がぼんやりと輝き、ふよふよと水中を漂う姿は見ていてほんわかしてきます。英語の名前にある通り、満月のようでもあり、ゼリーのようでもあり、不思議な生き物です。
 傘のまん中に見える4つの赤い点は、生殖腺です。成熟したオスでは紫色、メスでは褐色になります。ここからヨツメクラゲという別名が出てきました。

 クラゲというと、海で刺された苦い思い出のある方もいらっしゃるかと思いますが、ミズクラゲは平気です。毒を持っていることは持っているのですが、とても弱くて、刺されても平気なのです。
 水中をたゆたう姿は綺麗なのですが、砂浜に打ち上げられている姿はちょっとカワイソウ……。

まとわりつく子犬のような魚 -ホンソメワケベラ-
bluestreak cleaner wrasse Labroides dimidiatus
スズキ目 ベラ科
ホンソメワケベラ?

 ウツボやハタなど、ちょっと大きな魚のまわりとちょこちょこと泳ぎまわる魚がいます。時々大きな魚の体をつついています。その様子はまるで、飼い主にまとわりつく子犬のようです。
 ホンソメワケベラは、クリーナーフィッシュ(掃除屋)として知られています。魚の体の表面、エラや口の中などについている寄生虫や、魚のエサの食べカスを食べているのです。
 大きい魚に限らず、あまり大きさの変わらないイシモチのクリーニングもします。ウツボの口の中へも入っていきます。見ている方は、ホンソメワケベラが食べられてしまうのではないかとヒヤヒヤするものですが、ウツボは大人しく口を開けて掃除をしてもらっています。ギブ アンド テイクというやつですね。

 大人はオスメスとも黄色い体に濃い青の太い縦筋(頭から尻尾にかけて)が1本通っているという模様ですが、幼魚はそれを反転したような模様で、黒い体に青白い縦筋が入っています。2枚目の写真のまん中に写っているのが、幼魚です。

それともニセクロスジギンポ?

 ちなみに、ホンソメワケベラによく似た魚でニセクロスジギンポという生き物がいます。他の魚はこの生き物も掃除屋だと思っておとなしく体をつつかせているのですが、油断大敵、実はニセクロスジギンポの方は掃除などしません。掃除屋を装って近づいておいて、魚の体を食いちぎっていってしまうのです。恐ろしい子もいたものです……でも、向こうにしてみれば、それを食べないと生きていけないのですから、生物の世界は厳しいですねぇ。
 この2種は、成魚のみならず、幼魚の姿もそっくりです。見分けるポイントは口で、ニセクロスジギンポの口は下に開くのだそうです。が、そんな細かい点、よっぽどアップで見ても簡単にはわかりません……。写真はおそらくギンポの方だと思うのですが、ちょっと自信がありません。

"優雅な姿"か "ボロ"か -リーフィ シードラゴン-
leafy seadragon Phycodurus eques
トゲウオ目 ヨウジウオ科
リーフィ シードラゴン

 その名の通り、リーフ(leaf: 葉っぱ)のようなシードラゴン(海の龍)です。海藻のある浅い海に住んでいます。海藻を模した体は、敵から身を守るだけでなく、小魚やエビ、カニなどの甲殻類といったエサを捕まえるのにも都合がいいそうです。確かに、一見海藻の切れ端にしか見えません。そういう意味では"ボロ"というか、ゴミと間違えられても仕方ないような気がしますが、違った見方をすれば、振袖を着ているような、"優雅な姿"とも言えると思います。

 葛西には現在4匹のリーフィ シードラゴンがいますが、飼育係の方は、ヒレの形などで個体の識別ができるそうです。さすがですね。あなたは4匹を見分けることができるでしょうか?

派手な振袖に三つ指で歩く魚 -ホウボウ-
bluefin searobin Chelidonichthys spinosus
カサゴ目 ホウボウ科
ホウボウ

 砂地にいることが多い、40cmくらいの魚です。いろいろと魚らしくない面を持っています。
 まずはその顔。頭の上端の左右に目がついていて、左右片方ずつしか目を合わせることのできない、典型的な魚とはちょっと違う形です。口も下の方についていて、そうですね、どちらかというとトカゲやイモリなどに似た顔と言えるでしょうか。
 それから"指"。胸びれの一部が変化したものが指のようになっていて、それを動かして砂の上をサササッと進むのです。
 最後に胸びれ。"振袖"のような長い胸びれを地面に平行に広げると、上面は青い縁取りに緑の地、その上に青い斑点という、赤系の色をした体につけるにはかなり違和感のある模様をしています。胸びれを閉じていると他の魚と混じってしまい、どれがどれだかわからなくなりそうな感じもしますが、胸びれを広げたら、即「あそこにホウボウがいる!!」とわかるでしょう。
 さらに面白い特徴として、その名の由来になっていると言われる"鳴き声"があります。うきぶくろを使って「ぼーぼー」と鳴くそうです。とことん奇妙な生き物ですね。

 子供の頃は水中を漂う浮遊生活を送ります。そのうち着底してすごすようになります。稚魚のうちは全身真っ黒ですが、成長にしたがって、前述のような派手な模様になります。成長と同時にだんだん海底の深いところで生活するようになり、成魚は水深100〜200mくらいのところに最も多く住んでいるそうです。


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