喜:笑顔のステキな生き物たち

いちばんの愛想よし!! -サザン グローブフィッシュ-
アルカイックスマイル? -イシガキフグ-
魚版"スマイルくん" -カエルウオ-
海中をはばたく笑顔 -トビエイ-

いちばんの愛想よし!! -サザン グローブフィッシュ-
Southern globefish Diodon nichthemerus
フグ目 ハリセンボン科
サザン グローブフィッシュ

 少なくともこの2年くらい、私があらゆる魚の中で1番好きな子は、なんと言ってもサザン グローブフィッシュです。
『大平洋2』のグレートバリアリーフをイメージした水槽に2匹います。裏の予備水槽には、子供も2匹います。うす紫から灰色がかった背中に、黄色のトゲ(棘;きょく)を持っています。お腹の方は、体も棘も白色をしています。身の危険を感じると、胃に水を吸い込んでふくらみ、体中の棘を立てます。
 そうは言っても、私自身は写真でしかふくれたところを見たことはありません。水槽の中ではいつも、のんきとも言える様子でぷよぷよと泳いでいます。

 だいたいいつも、水槽の奥の方などではなく、アクリル板の方にすりよったままうろうろしています。多くの魚は平べったい体をしていて、いつもどちらかの面だけが見えているという感じですが、サザン グローブフィッシュは全体的に丸っこい体をしており、しかも、顔の正面をアクリル板にすりつけるようにしながら泳いでいるので、2つの目をいっぺんに合わせることができます。なんとなく哺乳類の顔のようにも見える気がします。

サザン グローブフィッシュ2

 正面から見た時のくりくりとした目ももちろん可愛いのですが、私は何よりその口元にひとめぼれしてしまいました。半開きのタラコくちびるはかすかに笑っているように見え、さらにアクリル板に口を押し付けたままずりずりと移動すると、それはもういかにも「うふふふ」と笑っているかのように見えるのです。
 さらにさらに、胸びれの位置と振り方がいかにも手のようで、さらに可愛さアップ……。
 言い替えると、あの子たちは、いつ言っても、アクリル板の方を行き来して、見ている人間のすぐ目の前で、笑顔で「やっほー」と両手(胸びれ)を振っているのです。
 はっきり言って言葉じゃ表現し切れません。実際に行ってあの子たちを見たら、きっと多くの人がひとめぼれしてしまうに違いありません。ホントに可愛い!何時間見ていても飽きません。

 しかし、可愛いばかりではないようです。悪気はないのでしょうが、餌を食べようとして飼育係の人の指を噛んでしまうことがあるのですが、その歯は固くて、噛まれた指の爪が長いことヘコんでしまったということもあるそうです。
 それに、仲間どうしで激しい喧嘩をするなど、キツい一面も持っているようです。
 そう言われてみれば、水槽の中で他の魚がぶつかってきた時、心なしかむっとしているような……?

 似たような笑顔を持つ魚は、他にもいます。例えば同じハリセンボンの仲間のイシガキフグネズミフグもハリセンボンの仲間ですが、この子の場合、笑顔というよりは、ちょっと怖い顔……。

アルカイックスマイル? -イシガキフグ-
   Chilomycterus reticulatus
フグ目 ハリセンボン科
イシガキフグ

 サザン グローブフィッシュと同じくハリセンボンの仲間ですが、こちらは満面の笑みというほどではありません。目はちょっと伏目がちで、黒い帯上の横縞(魚が泳いでいる時に「縦」に見えるものを「横」縞と言います)模様がちょうど目の上を通っているため、泣き顔と言えば泣き顔かも知れません。しかし、口元を見るとやはり微妙に笑っている気がします。サザン グローブフィッシュほどではありませんが、この子も時々アクリル板にズルズルと顔を押し付けながら泳いでおり、そんな時は明らかに「笑顔」になっています。

イシガキフグ2

 体の大きさは、葛西にいるもので比べると、サザン グローブフィッシュとネズミフグの中間といったところでしょうか。自然界では、30cm前後のものが多く見られるようです。うまく行けば、伊豆半島などでシュノーケリングをしていると見られるかも知れません。
 体にはハリセンボンらしく棘(きょく)がありますが、立てることはできないそうです。

魚版"スマイルくん" -カエルウオ-
blenny Istiblennius enosimae
スズキ目 イソギンポ科
カエルウオ

 関東以南の日本各地にだけ見られる魚です。岩礁やタイドプールなどの浅いところに住んでいます。非常に似た生き物でタマカエルウオというのがいますが、カエルウオは水中、タマカエルウオは波をかぶる岩の上など、陸上にいます。
 タマカエルウオは岩についた藻などをこそげとって食べるために、口が下の方についていますが、カエルウオは藻の他に小型のエビやカニなども食べる雑食性で、口はタマカエルウオほど下の方にはついていません。
 水槽越しに正面からの顔が見られることがよくありますが、口の両端が若干上がり、スマイルくんのような表情になっています。その名の通り「カエル」を、マンガチックに描いたような顔と言えます。でも、頭の上にはぴんと2本立った触角のようなものがあり、よくよく顔を見ていたら、なんだか仮面ライダーにも似ている気がしてきました。

タマカエルウオ

 ちなみに2枚目の写真はタマカエルウオですが、こちらの方は、口が下についているので笑顔には見えませんでした。どちらかと言うと、下ばかり向いていて、眉を下げたような模様が見え、「泣き顔」のようです。
 写真によるのではないかと思うのですが、オスの頭の上にある突起が、ウルトラマンのように見えることがあります。

 仮面ライダーにウルトラマン...カエルウオだけでなく、こちらまで思わず笑ってしまいます。

海中をはばたく笑顔 -トビエイ-
eagle ray Myliobatis tobijei
エイ目 トビエイ科
トビエイ

 比較的夜行性ですが、もともとそれほど活発には動かないそうです。ハンカチを広げたような体の両端、すなわち胸びれを、まさに「はばたかせ」ながらゆっくり水中を旋回する様は、鳥が空を飛ぶ姿のスローモーションのような印象を抱かせます。ハンカチな体の後ろには、細く長い尻尾があります。実はそこに毒をを持つトゲがあり、ただ単に可愛いばかりではありません。
 背中側はこげ茶色ですが、腹側は白色です。頭部の腹側を見ると、白い体にH型の切り込みのようなものが見えますが、そこが口です。H型が、えくぼのできた笑顔のように見えます。あれだけ気持ちよさそうに飛んでいるのだから、笑顔になるのも当然だろう、という感じです。

 多くの魚は卵を産んで子供を増やしますが、トビエイは厳密な卵生ではなく、卵胎生と呼ばれる生殖方法をとっています。卵が母親の体の中で孵化し、母親の体外へは幼魚の状態で産まれてくるというものです。葛西ではアカシュモクザメと同じ水槽に入っていますが、サメもやはり卵生ではなく、こちらの場合は胎生となっています。
 名前にある「トビ」は、もちろん「飛び」から来ていると考えるのが素直なところですが、「トンビ」のような飛び方、もとい泳ぎ方をするところから来ているという説があるようです。


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