ヨーロッパフラミンゴ繁殖のキーアイテム

2026年7月31日

今年度(2026年度)も多摩動物公園で飼育するヨーロッパフラミンゴは繁殖期を迎え、6月からひなの孵化が始まりました。2026年7月31日現在、全部で15羽のひなが育成しています。

多摩動物公園では2019~2023年のあいだ、フラミンゴの繁殖が止まっていました。そこで2024年の繁殖期に擬卵を用いてフラミンゴの産卵行動を誘起させようとしたところ、その年は無事に産卵し、孵化させることができました。それ以降、毎年フラミンゴが産卵する時期には擬卵を用いています。今回は当園のフラミンゴ繁殖のキーアイテムとなっている「擬卵」に関してお話しします。

擬卵とは簡単にいうと「偽物の卵」です。当園で使用している擬卵は樹脂製で、本物のフラミンゴの卵に似せてつくられています。動物園での擬卵のおもな用途は繁殖管理です。

動物園という限られたスペースの中で動物の数を維持していくためには、種ごとの血縁関係を考慮して計画的に繁殖させる必要があります。そのため場合によっては繁殖を制限することもあります。

鳥の習性として、産んだ卵がなくなるとまた新たに卵を産み足します。そのため、卵の産み足しを防ぐため本物の卵を擬卵にすり替えます。そうすると鳥は新しい卵を産み足すことなく擬卵を温め続けます。

左:擬卵、右:本物のフラミンゴの卵
左:擬卵、右:本物のフラミンゴの卵

また、擬卵には鳥類の繁殖行動を促進させる用途もあります。鳥の巣に擬卵を置くと「巣に卵がある」という情報が刺激となって抱卵行動が誘発されます。

当園のフラミンゴの場合を大まかに解説すると、「①巣に擬卵を置く」→「②擬卵が刺激となって抱卵を始める」→「③抱卵しているペアを見て刺激を受けた別のペアが産卵する」。この過程を経てフラミンゴの繁殖が成功したと思われます。

これだけを見ると鳥類の繁殖が簡単なように感じるかもしれませんが、実際は動物の健康状態、栄養状態、飼育環境などさまざまな要素が複雑に絡んでいます。それらの要素から問題点を推察し、試行錯誤することによってはじめて飼育下での繁殖に結びつきます。

最初に擬卵を抱卵し始めたペア
最初に擬卵を抱卵し始めたペア
最初のペアに刺激を受けてほかのペアも営巣地に集まるようになる
最初のペアに刺激を受けてほかのペアも営巣地に集まるようになる

当然のことですが、本来フラミンゴは擬卵を使わなくても自身で巣をつくり、産卵する能力をもっています。一度は繁殖が止まってしまった当園のフラミンゴも擬卵を使えば正常な繁殖行動をとることがわかりましたので、あとはタイミングや何かのきっかけで、擬卵がなくても繁殖できるようになるかもしれません。

今後もこの原因を考えながら試行錯誤を重ね、フラミンゴ自身が自然に繁殖できるよう努力していきます。

〔多摩動物公園北園飼育展示係 三松〕

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