『ファーブル昆虫記』を読んだことはありますか? ファーブル先生がいろいろな昆虫をじっくり観察して、行動の意味を探っていくとてもおもしろい作品です。
生きものの行動を観察することは、生きものを知る原点で、とても楽しいことなので大変おすすめです。しかし、実際にやろうとすると、野外ではなかなか難しいことでもあります。そんなときにおすすめなのが、多摩動物公園の昆虫生態園です!
昆虫生態園はガラスでできた巨大な温室で、多種多様な草花を植えてあり、一年を通してさまざまな花が咲き、たくさんのチョウが飛んでいます。観察には、暑すぎない秋から春にかけて、さらに晴れた日の午前中が大変おすすめです。いろいろなチョウの行動を観察できますので、ここでご紹介したいと思います。
生態園の大温室に入ると、チョウが乱れ飛んでいるようすが目に飛び込んできます。この時点でもうワクワクすること間違いなしなのですが、ここから少し進んだところにある開けた場所が第一の観覧ポイントです。チョウが卵を産む植物を鉢植えで置いてあり、産卵するようすを間近に観察することができます。
オオゴマダラというチョウは体が大きいので観察におすすめです。飛んできたオオゴマダラがどのように卵を産むか、見てみましょう。卵の色や形は? どこに産んでいるでしょうか?
さて、その先の花の咲いた小道が第二のポイントです。道のわきにはハチミツを薄めたチョウのえさ皿が置いてあります。ここではチョウがストローのような口を伸ばして蜜を吸うすがたや、近くの花で蜜を飲んでいるすがたを見ることもできます。時間をかけて観察すれば、チョウのお腹が大きくなっていくようすがわかるかもしれません。
そんなチョウを見ていると、後ろから同じ種類のチョウが飛んできて、蜜を吸っているチョウの周りをひらひら舞っているようすを見ることもあるでしょう。これはチョウのプロポーズ。多くのメスはすでに交尾ずみなのでオスを無視したり、交尾拒否の姿勢(翅を開いておしりを上げる)になることが多いです。メスが逃げ出して、それを追いかけたオスと追いかけっこが始まることもあります。
トンネルを抜けた先が最後の観察ポイントです。地面を見てみましょう。濡れた地面に集まり集団で水を飲んでいるようすや、地面に止まったオスが近づいてきたほかの個体を追い払うようす、もしくはただのんびりと日向ぼっこをしているすがたも観察できます。種類や雌雄によって、いる場所が違うこともあります。
ここまでは晴れた日の午前中を想定した行動観察のおすすめを説明してきましたが、夕方の生態園はどうなっているでしょう。あんなにたくさん飛んでいたチョウは見あたらなくなっています。探してみると葉の裏や木の枝の先に止まって休んでいます。
一日の中での行動の変化も観察するとおもしろいかもしれません。ぜひ一度、昆虫生態園でゆっくりじっくり、チョウの観察をしてみてください。とってもおもしろいですよ!
〔多摩動物公園昆虫園飼育展示係 片田〕
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