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葉っぱを吸うチョウ
 └─2012/02/10

 チョウといえば花から花へ飛び交い、蜜を吸う姿を思い浮かべる方も多いと思います。しかし、多摩動物公園昆虫生態園の大温室では、最近葉っぱを吸うチョウが観察されました。

 2012年1月のある朝、カバタテハなど10匹以上のチョウが、1本のベンジャミンの木にとまっていました。その木に花は咲いていませんし、カバタテハが卵を産む木でもありません。よく見ると、チョウはストロー状の口を葉っぱの表面へとさかんに伸ばしています。その葉っぱは、何かの液がついてテカテカしており、触るとベタベタします。どうやらチョウはこれを吸っているようです。

 このベタベタはいったい何だろう? そう思い葉っぱの真上にある枝を見ると、カイガラムシという虫がいくつもついていました。このベタベタの正体は、カイガラムシが出した甘露(かんろ)という液が落ちたものではないかと思われました。

 甘露とは、カイガラムシが植物の汁を吸って消化吸収したあとの余分なもの、つまりおしっこのようなものです。甘露には糖分が多く含まれていて、それをチョウが吸っていたのです。私もこの甘露をなめてみたところ、ほのかな甘みが口の中に広がりました。やはりベタベタの正体は甘露に間違いなさそうです。

 チョウは種類によって、花の蜜以外にもさまざまなものを好みます。樹液や果物、ときには動物のフンや死骸、人の汗など、花とはかけ離れたようなものに集まることもあります。

 昆虫生態園で葉っぱを吸うチョウが見られる木は、ベンジャミンやハマイヌビワなど一部の木です。集まるチョウは、カバタテハやイシガケチョウなどのタテハチョウの仲間が多いようで、午前中によく見られます。昆虫生態園にお越しの際は、葉っぱの食卓で朝の甘露を飲むチョウを探してみてはいかがでしょうか。

写真上:カイガラムシと葉に落ちた甘露
写真中:ストロー状の口をのばすイシガケチョウ
写真下:ベンジャミンに集まるカバタテハ(矢印)

〔多摩動物公園昆虫園飼育展示係 田中陽介〕

(2012年02月10日)



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