多摩動物公園「昆虫生態園」の大温室には常時十数種類のチョウが飛びかっています。そして、この温室の一角には、チョウに産卵してもらうための植物が置いてあります。
日本で一番大きなチョウであるオオゴマダラはホウライカガミという植物に産卵し、幼虫はこれを食べて育ちます。ここではふだん、お腹の大きなメスが数匹産卵しているだけですが、ときどき常連客を上回る数のチョウの成虫が、葉っぱにとりついていることがあります。リュウキュウアサギマダラです。
鈴なりのリュウキュウアサギマダラと1匹のオオゴマダラ(中央やや下)
多いときには「鈴なり」という表現がぴったりなほど、たくさんぶら下がっています。本来、リュウキュウアサギマダラはツルモウリンカという植物に産卵します。よく見ると産卵ではなく、口吻を伸ばして葉の表面から何かを吸っているようです。とまっているのはオスだけのようなので、性フェロモンに関係する物質を取り込んでいるのかもしれませんが、詳しいことは調査中です。
ひらひらと舞うチョウを見るのも素敵ですが、鈴なりのチョウを観察するのもまた別の楽しみ方です(温室内の環境等によって、葉にいないこともあります)。
ホウオウボクの花
また、昆虫生態園の大温室の中央には巨大なホウオウボクがそびえたっています。例年この時期には赤い花が咲き誇るのですが、今年は前回の剪定の影響か、あまり咲きませんでした。残念ながら花は先日咲き終わりましたが、ぜひ来年にご期待ください。
〔多摩動物公園昆虫園飼育展示係 野村友宏〕
(2015年10月02日)