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昆虫撮影のススメ
 └─2018/03/23

 多摩動物公園の昆虫園大温室は、一年中花が咲きチョウが舞い飛ぶ楽園です。ここでは昆虫たちに触らず、やさしく見守っていただくようお願いしています。チョウも人をあまり怖がらないため、間近で観察することができます。観察そのものも楽しいのですが、カメラで撮影すると、肉眼で見えづらい細部もさらに楽しめます。そこで昆虫生態園ならではの被写体をご案内しましょう。

写真1:オオゴマダラ。前脚がたたまれている
写真2:ナミアゲハのプロポーズ。
求愛するオスとつれないメス

◎チョウの口吻
 通路の近くにチョウのえさとなる蜜皿が置いてあります。ここに集まるチョウはとくに警戒心が薄く、観察しやすいスポットです。ストローのような口吻を伸ばしたり丸めたりして蜜を吸うようすを撮影してみましょう。頭部にたくさん生えている毛や、たたまれたオオゴマダラの前脚などを見ることができます(写真1)。

写真3:異種間の求愛。
左がタテハモドキ、右がツマグロヒョウモン
写真4:交尾中のオオゴマダラ

◎チョウの繁殖行動
 大温室内ではほぼ毎日、雌雄のチョウをたくさん放しているので、繁殖行動も見られます。花の蜜を熱心に吸っているメスにアピールするものの、まったく無視されるかわいそうなオス(写真2)や、違う種類のチョウにプロポーズしているうっかりもののオス(写真3)、雌雄2匹でハートを逆さまにしたよう交尾態勢をとりながら、草陰でめでたくカップルになっているオオゴマダラ(写真4)など、さまざまな繁殖行動を撮影することができます。

写真5:タイワンキチョウの集団給水
写真6:特殊なレンズでまわりの風景を移し込む。手前はツマベニチョウ、奥の樹木はホウオウボク

◎集団給水
 かつて外国のチョウの集団吸水の写真を見て、いつかこの目で見てみたいものだとあこがれたものですが、大温室の中なら集団吸水も撮影できます。とくに冬季はタイワンキチョウが数多く羽化し、水辺で集団吸水をしています(写真5)。個体数が多いと撮影したときの充実感もひとしおです。

◎周りの風景を入れ込む
 高性能なドアスコープをデジカメの前面に装着し、まわりの風景を写し込むのも、昆虫撮影のテクニックの一つです。その昆虫がどんな環境にいたか伝えることができるからです。晴れた日に、大温室の蜜皿に訪れたツマベニチョウを撮影してみました(写真6)。奥に写っているのは大温室のシンボルツリー、ホウオウボクです。

 撮影に望遠レンズなどが必要な動物とは違って、チョウたちはふつうのデジカメで撮影することができるので、生き物の撮影入門として最適です。マクロモードを活用するとなおよいでしょう。決定的一瞬を求めて、あなたもぜひ大温室で一日を過ごしてみてください。暑い季節は水分補給をお忘れなく。また、通路が狭いので、道をふさがないようご配慮ください。

〔多摩動物公園昆虫塩飼育展示係 片田菜美〕

(2018年03月23日)


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