多摩動物公園の昆虫生態園大温室では、1年を通して20種類前後のチョウを展示できるように飼育しています。季節によって展示種が変わることがあり、これはその時期によって大温室内の状態が変化することも関係します。
冬の寒い時期には、温度を20℃に保てるように暖房をしますが、そのほかの季節は冷房設備がないため、窓の開閉や換気扇で外気をいれて温度調節をしています。晴れた夏の日だと温度が40℃近くになることもあり、暖かい方が活動的なチョウにとっても厳しい環境になります。ただ、そんなときは、チョウは木陰や風通しのよい涼しい場所に移動してじっとしているようです。
ここで、来園者によく聞かれることについて書いてみたいと思います。
「前回(もしくは午前中)来たときは、すごくいっぱいチョウが飛んでいたのに、なぜ今はいないのですか?」「夕方にはチョウはどこかに収容するのですか?」
だいたいこの質問を受けるのは、曇りや雨などの天気が悪い日、もしくは夕方の暗くなりつつある時間帯です。話をよく聞いてみると、以前来たときは天気がよい日だったとか、チョウの活動が活発な朝の時間帯だったということがほとんどです。
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天気がよい日の昆虫生態園 | 天気が悪い日の昆虫生態園 |
大温室には、人工的な照明がついておらず、明るさは自然光に左右されます。みなさんも、野外では、気温の低い時期や夕方暗くなってからチョウを見ることはないと思います。同じように大温室内でも暗いときや温度が下がるときは、チョウは木の枝葉につかまってじっとしています。暗いうえにじっとしていると、チョウがいなくなったと感じると思いますが、少し注意して枝葉やつるを見ると休憩しているチョウを見つけることができるでしょう。
木の枝につかまってじっとしているシロオビアゲハ
以上のような理由から「チョウの舞い飛ぶ楽園体験(!)」をするには、天気のよい(晴れて明るい)午前中がよいということになります。昆虫生態園のある場所は動物園の出入口付近なので、天気のよい日はできれば入園して早い時間帯に足を運んでもらうことをおすすめします。
最後にお願いがあります。温度が低めの冬場は、大温室のコンクリートの通路上で、体を温めるためにじっとしているチョウがいます。足元に注意して、チョウがいたら踏まないように、そっとよけてあげてください。私たち飼育係は、踏まれて死んでしまったチョウを見るととても悲しくなります。幼虫がたべる植物(食草)から栽培し、卵から育てたチョウです。成虫になってから2週間~1ヵ月程度の短い命、優しく見守ってあげてください。
〔多摩動物公園昆虫園飼育展示係 高原〕
(2023年03月17日)