催し物
特設展「両生爬虫類鑑 あし」紹介──9
「あしが退化した爬虫類」
 └─2010/05/29

 上野動物園の両生爬虫類館では、2010年3月16日から12月26日まで、特設展「両生爬虫類鑑 あし」を開催中。展示を紹介する連載の最終回は「あしが退化した両生類」です。

  今回の特設展では、「あし」の退化した爬虫類として3種を展示しています。

 写真を見ると、「3匹ともヘビだ!」と思われるかもしれません。たしかに3匹ともあしが見あたらず、細長いヘビのような体をしています。しかし、この3匹はまったく別の生き物なのです。

 ヨーロッパヘビトカゲの体はヘビほど柔らかくなく、とぐろを巻くことができません。また、よく見るとヘビと違って耳の穴やまぶたがあります。そして、日本のトカゲ類と同様、危険が迫ると尾を切って逃げる(自切する)のです。

 ダンダラミミズトカゲは、地中生活に適応して「あし」をなくした爬虫類です。「あし」がなくて、どうやって土を掘るのだろう?と思われるかもしれません。このなかまは、他のトカゲやヘビとくらべて頭骨と頸の筋肉が非常に頑強です。その頑強な頭をシャベルのように使って、地中を掘り進むのです。また、地中で生活するので目や耳も不要になり、退化しています。自切もしますが、他のトカゲと違って再生することはありません。(注:現在ダンダラミミズトカゲは体調不良のため展示を中止しています。2010年6月上旬に展示再開の予定です。)

 ボールニシキヘビは、ヘビの中でも原始的なグループに属し、蹴爪のような後ろあしが残っています。一説には、ヘビのなかまは、地中に適応したトカゲのなかまから進化したとも言われています。目の焦点の合わせ方も、ヒトを含む脊椎動物と異なりますが、これは地中でくらすようになって視力を失った後、もう一度視力を獲得したためといわれています。

 爬虫類の中でも、「あし」を失くす方向に進化した生き物はヘビだけでないのです。しかも、「あし」のないトカゲのなかまは一種類だけでなく、それぞれ独自に「あし」を退化させてきたのです。

第1回「はねる」
第2回「およぐ」
第3回「ほる」
第4回「とぶ」
第5回「かんじる」
第6回「のぼる」
第7回「はりつく」
第8回「あしが退化した両生類」

〔上野動物園は虫類館飼育展示係 大渕希郷〕

(2010年05月29日)



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