現在、上野動物園の両生爬虫類館では、2010年3月16日から12月26日まで、特設展「両生爬虫類鑑 あし」を開催中。個々の展示紹介の第7回は「はりつく」。
前回の「のぼる」に続いて、今回は樹上性のカエルとヤモリの「あし」をご紹介しましょう。特設展では、イエアメガエルとトッケイヤモリを展示しています。
さて、イエアメガエルとトッケイヤモリは、どちらも指先に特殊な構造をもち、垂直面にはりついて、歩くことができます。しかしその方法は、異なることが知られています。
イエアメガエルなど樹上性のカエルの指先には、円盤状の部分があります(吸盤と呼ばれることが多いようですが、機能を考えると吸盤とは呼びにくいのです)。カエルはこの部分を垂直面に密着させ、ぬれた皮膚の毛細管現象を利用してはりつきます。ぬれた紙や布がガラスにピタリとくっつくのと同じしくみです。垂直な面でじっとしているときは、指先だけでなく腹部全体も使ってはりついている場合が多いようです。
一方、トッケイヤモリなど樹上性のヤモリの指先の裏側には、指下薄板(しかはくばん)と呼ばれる板が並んだような構造があります。指下薄板には無数の細かい毛がはえていて、この毛と、はりつくものの間に働く「ファンデルワールス力(りょく)」により、つるつるした面も歩くことができます。
ファンデルワールス力というのはですね……分子など、非常に小さいものの間にはたらく弱い引力の一種です。ちょっとむずかしいですね。私もまだまだ勉強中です。どうです? みなさんもご一緒に。
写真上から:
イエアメガエル
イエアメガエルの前肢裏にある円盤状の部分
トッケイヤモリ
ヤモリの指先裏の指下薄板(100倍)
同じく指下薄板(5,000倍)
*指下薄板の写真は都立産業技術研究センターのご協力によるものです。
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第1回「はねる」
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第2回「およぐ」
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第3回「ほる」
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第4回「とぶ」
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第5回「かんじる」
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第6回「のぼる」
〔上野動物園は虫類館飼育展示係 木村隆司〕
(2010年05月14日)