葛西臨海水族園には飼育展示係や教育普及係など、さまざまな部署があります。
今年35周年を迎える記念企画の一つとして、各部署のリーダーたちが「理想の展示・水族館」や「今後の仕事でやりたいこと・夢」などをテーマに「水族園リーダーたちの夢」と題してして連載記事を掲載します。
第9回「水族園の『船頭』のお仕事──『夢の続き』をご一緒に!」
みなさん、水族園のお仕事というと何を思い浮かべますか?
生きものの世話をして生息地の環境を再現する飼育展示係。ガイドや解説、イベントを企画する教育普及係。世界中から生きものを集める調査係。来園者のみなさまをお迎えし、接遇をおこなう案内係。また水族園を支える施設や設備のメンテナンスをおこなう施設係など、さまざまな仕事があります。こうしたリーダーたちの夢が前回までのコラムで紹介されました。
さて、私が所属する「管理係」は、「水族園の経営」に関する業務を担う部署です。ある先輩職員から水族園をひとつの船にたとえたとき、私の役割は「船頭」と言われたのですが、今になってこの言葉の意味を理解できるようになってきました。予測不能なことの多い時代ですが、荒波にも負けずに、多岐にわたる水族園の業務を健全に運営して前に進めていくこと、これが私の仕事です。
水族園を運営していくうえで、大切なお金をうまく使えているか? 設備や備品に異常はないか? 安全にお客さまをお迎えできるか? 職員が心身ともに健康に働けているか? 水族園を支えてくれているすべてのみなさまとよい関係を築けているか? ほかの部署と協力しながらこれらを「健全に前に進める」ために管理係の業務をおこなっています。
管理係のうち、いくつか具体的な仕事を紹介したいと思います。
たとえば、お客さまの安全・安心の確保に関する仕事があります。南海トラフ地震に関する臨時情報が昨年初めて発令されたのは記憶に新しいところですが、首都直下型地震やこうした地震が発生したときに、お客さまをスムーズに安全な場所に避難誘導し、生きものの飼育をできる限り継続するために、日ごろからさまざまな訓練をおこなうとともに、体制を構築しています。

震災対策訓練での対策本部と心肺蘇生のようす。園内でさまざまな状況を想定して訓練をおこないます
また、水族園にはサポーター制度があります(
詳しくはこちら)。これは都立動物園・水族園を応援したいと思ってくださった個人や企業・団体のみなさまから、生きものの飼育環境をよりよいものにするための資金を募り、改善をおこなうものです。水族園ではこの資金を使い、近年の猛暑対策としてペンギンの展示場「ペンギンの生態」にミスト発生装置を設置させていただきました。
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「ペンギンの生態」 | サポーター資金で設置したミスト発生機 |
私のこれからの夢は、地元の方々や海や淡水、水辺でくらす生きものに興味をもっていただいた方にさらに開かれた水族園にしていくことです。葛西臨海水族園は都立の、公共の水族園です。ひとりでは叶えることの難しい「夢」が叶えられる場所でもあります。水族園の理念に共感してくれる方と一緒になって水族園をつくっていくことが、よりよい水族園の運営に欠かせないことだと思っています。
最後に、葛西臨海水族園は開園35周年を迎え、延べ6000万人を超える方にご来園いただきました。いまでは、当たり前のようにご覧いただける「マグロの群れ」も当初は世界中のどの水族館でも成しえたことのない、まさに夢物語でした。それが、先人たちのチャレンジ精神と飽くなき探求の結果、いまの展示が実現しています。「海と人との交流の場」として、私たちはブレずに生きものの魅力を「伝え」、その環境を「守る」取組みをこれからもおこなっていきたいと思っています。現在、「新水族園」に向けて、さまざまな検討がおこなわれています。多くの人が広く深く水族園に関わっていただける仕組みを考えて参りたいと思います。ぜひ「夢の続き」をご一緒に!

35周年記念ポスター「わたしたちは、止まらない」
〔葛西臨海水族園管理係長 岡清志〕
・連載:35周年企画「水族園リーダーたちの夢」
[1]水族園の展示に込める思い
[2]水族園の目指す道──ずっと身近でいてほしい
[3]水族園を背後で支える施設の維持管理の仕事に携わってみませんか
[4]楽しく学べる水族園
[5]海をつくりたい
[6]アクア・ポジティブ
[7]インクルーシブな水族園を目指して
[8]夢見るおじさん
[9]水族園の「船頭」のお仕事──「夢の続き」をご一緒に!
[10]ホスピタリティを大切に
[11]ショップ・レストランから伝えたい!! いきものの魅力・大切さ
[12(最終回)]事業課スタッフの想いと日々
(2025年01月24日)