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トキ、新しいペアの来園
 └─ 2024/02/16
 多摩動物公園では、環境省が進めるトキ保護増殖事業に協力するため、佐渡トキ保護センター(新潟県佐渡市)から2007年に2ペアを預かって飼育を開始しました。その後、ペアの追加や交代を経て非公開での飼育繁殖をおこない、現在までに91羽のひなを育て、佐渡トキ保護センター(以下「センター」)に送り出しています。

 2023年10月29日、その年に生まれた若鳥4羽を含む計7羽を佐渡市のセンターに送り出しました。そして翌30日、センターから新たな2ペア(計4羽)がやってきました。今年はこの2ペアと多摩動物公園で5年目を迎える1ペアの合計3ペアで繁殖に取り組む計画です。

 今回やって来たのは、各々繁殖経験があり10歳になる雌雄のペア(CRペア)と、まだ繁殖経験のない2歳のオスと3歳のメスのペア(CQペア)です。特に若いペアは初めての産卵、子育てを迎えます。トキの繁殖については、数を増やすことはもちろんですが、野生復帰に適した個体を育てるという大きな目的があります(「どうぶつと動物園」2023年秋号参照)。これは、人工孵化、人工育雛などの人の手を借りて成育した個体よりも、親鳥が育てた個体の方が野生での生存に有利であることがわかってきたからです。

CRペア
(各々繁殖経験がある10歳の雌雄のペア)
CQペア
(繁殖経験のない2歳のオスと3歳のメスのペア)

 さて、「繁殖に取り組む計画」と言いましたが、われわれ飼育担当者がトキの繁殖のために何ができると思いますか?

 一般に野生の生きものは人間に対して警戒心が強く、特に繁殖期の鳥はちょっとしたことで不安になり、巣を放棄してしまうこともあります。そのため、われわれも本格的な繁殖期が始まる2月下旬までに、トキが安心して抱卵や子育てができるように飼育環境を整える準備をします。

 今年(2024年)も1月終わりから、繁殖ケージの中の大掃除(汚れた土の入れ替えや草刈り)に始まり、巣の真下に卵やひなが落下しても命に関わる衝撃がないようにくふうしたウッドチップを詰めたフカフカのクッションを設置、巣を作りやすいような枠を止まり木に作るといった作業を一日がかりでおこないました。

ウッドチップを詰めたフカフカのクッション
止まり木の枠

 2023年に園内ではトキの自然繁殖に成功しましたが、新たなペアでも実現していくためには、鳥が飼育環境の中でさまざまな経験を積んでいくことが重要だと考えています。トキは早ければ3月初めごろから産卵、抱卵を始めます。この新しい2組のペアが巣を作るところから上手にできるのか心配もありますが、しっかりと見守り、緊急事態には少しの手伝いをすることも考えて、繁殖の成功につなげたいと思っています。


繁殖ケージの大掃除

〔多摩動物公園/総務部 野生生物保全センター保全係 木崎〕

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