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アフリカゾウ舎の冬対策
 └─ 2025/04/25
 多摩動物公園のアフリカゾウについて、こちらのニュース記事(泥──アフリカゾウ「砥夢」の暑さ対策日当たり問題とアフリカゾウ)で泥を使った暑さ対策や日当たり問題など、夏の飼育環境の改善について紹介してきました。今回は、これまであまりふれていなかった冬の飼育環境の改善についてご紹介します。

 多摩動物公園のアフリカゾウは一年を通して夕方から朝まで夜間放飼をしてきました(アフリカゾウ「砥夢」(トム)の夜間放飼を始めましたインドサイの夜間放飼)。

 夜間放飼は運動量の増加や行動パターンの増加といったプラスの効果が期待できます。しかし、扉を常に開放しているため、冬に暖房を稼働させていても室内の温度が上がらないという問題を抱えていました。そこで2023年の春にゾウ舎の室内から運動場への出入り口にゴム製シートで作ったカーテンを設置しました。


ゴム製シートで作ったカーテン

 これにより室内温度を暖かく保つことができるようになり、最低でも15℃を下回ることはなくなりました。


屋外からカーテンをくぐって室内に戻る


カーテンをくぐり、外へ出る

 このカーテンは厚手のゴムシートを使っており、ゾウがちぎる心配もありません。さらに着脱が可能で暖かい季節には取り外すことができます。


一部外したカーテン

 カーテンによって冬季の室内温度を維持することで、ゾウにとって快適な温度を保つことができるようになりました。快適になったと私たちが考えるひとつの指標として、冬になるとあきらかに短くなっていた横臥睡眠時間(横になって眠ること。落ち着いている状態のときに時間が延びると思われます)が延びたことが挙げられます。しかし、この時間は夏と比較するとまだまだ短く、冬対策はいまだ改善の余地がありました。

 そこで、2024年の冬シーズンは湿度に着目して対策を取ってみることにしました。湿度が上がると体感温度が上がるため、実際の室温よりも暖かく感じて睡眠時間が延びるのではないかと考えたためです。

 加湿だけならばすぐにできて簡単では?と思われる方もいるかと思います。しかし、ゾウ舎はとても広く、気密性も高くないので、私たちは本当に頭を悩ませました。まずは取り組みやすいことから始め、室内の壁や床を水で濡らしたり、暖房の近くに濡れたタオルを吊るしたり、ほかの動物の獣舎から業務用加湿器を借りたり、さまざまなことを試しました。

 しかし、どれも多少の効果はありましたが、室内の湿度を大きく変えることはできませんでした。そこで、以前夏に使用していたミスト装置をゾウの鼻が届かない室内通路へ設置し、ミストを拡散してみることにしました。


室内でミスト稼働

 これは非常に有効で、なにも対策をしていないと25%ほどしかなかった湿度を少しずつ上げることに成功し、最終的には室内湿度を40%ほどに保つことができるようになりました。しかし、湿度を上げたことによる効果が横臥睡眠時間の増加に直接つながるような結果は得られませんでした。それでも室内に留まる時間が増えたので、加湿の影響は少なからずあったのではないかと思われます。

 動物飼育は難しく、飼育係のくふうや努力が必ずしもうまく成果に結びつかないことも多々あります。しかし今後も試行錯誤を繰り返しながら、ゾウにとって少しでもよい環境を作れるように一歩ずつ努力を続けていきます。

〔多摩動物公園北園飼育展示係 森〕

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