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インドサイの夜間放飼
 └─2021/01/29
 インドサイのメス「ゴポン」が金沢動物園から多摩動物公園に来園し、早いものでもう1か月が経ちました(来園ニュース)。他の個体との関係もよく、環境にも慣れ、運動場で横になったり、プールで角を振りながら水浴びしたり、とてもリラックスしています。

 時間が少し戻りますが、ゴポンが来園する前の昨夏(2020年夏)、インドサイの夜間放飼を初めて行ないましたのでお伝えします(「放飼」は運動場などに出すことを言います)。

 夜間の放飼を検討したのは運動量不足とケガの防止です。多摩のインドサイは通常、運動場に出すのは1日5~6時間ほどなので、ほとんどの時間を室内で過ごすことになり、運動量も少なくなります。また、夕方や明け方に活発に動くことが多く、柵や扉に体あたりをしてケガをすることもありました。

 「夜間放飼」はその名のとおり、夜も動物を室内に戻すことなく、広い運動場で過ごさせることです。運動量を増やしたり、行動パターンを増やして異常行動を抑制したりする目的があります。多摩動物公園ではアジアゾウやアフリカゾウなどでも実施しており、海外の動物園でもおこなわれている環境エンリッチメントの手法のひとつです。


泥遊びをするナラヤニ

 ただし、強制的に外に出すのではなく、室内との扉を開けたままにし、室内と放飼場のいずれかの好きな場所を選べるようにしました。サイ舎の放飼場は広さもあり、大きなプールもあるのですが、平坦で起伏が少ないため、前準備として重機のショベルを使い、山を作ったり、穴を掘って水を入れて泥場を作成したり、運動場にバリエーションをもたせました。

 当初は飼育している3頭全頭について実施する予定でしたが、オスの「ター」の夜間放飼には施設改修が必要となり、今年度は間に合わないため、オスの「ビクラム」とメスの「ナラヤニ」の2頭が対象となりました。

夜間放飼初日のナラヤニ
夜中に採食するビクラム(暗視カメラ映像)

 8月には準備が整い、最初はビクラムとナラヤニを交互に出し、ビデオカメラを設置して行動を記録し観察しました。2頭とも初日はやや興奮したり、そわそわしたようすもありましたが、数日すると落ち着いて外でえさを食べるようになり、プールにも入り、日中と変わらない行動を見せるようになりました。

 ただし2頭には違いもありました。外で乾草を食べてそのまま横になって寝るビクラムに対し、ナラヤニはえさを食べたりプールに入ったりすることはありますが、寝るときは室内に入って寝ていました。ビクラムも排便は室内でしたいようで、自室をその時だけ使うトイレのように利用していました。10月上旬には気温も下がってきたため、2頭の夜間放飼は約2か月で終了としました。

 インドサイの夜間放飼にはとくに問題も見られず、運動量や行動も増えるのでよい方法と思います。コンクリートでできた動物舎は夏になると冷房を入れているのですが、夜、外に出ることができれば涼むこともできますしプールにも入れます。また、冷房を使わないので電気代の節約にもなり、室内が過度に乾燥することもなく、メリットが多く感じられました。今年の経験を活かし、来年度も新メンバーのゴポンを含めた4頭のために、いろいろな取り組みを検討を進めます。

〔多摩動物公園南園飼育展示係 齋藤〕

(2021年01月29日)


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